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欧州司法裁、EUの国際ローミング料金上限設定を支持 - 4大キャリアの意義申し立てを却下

2010.06.10

Updated by WirelessWire News編集部 on June 10, 2010, 15:52 pm JST

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(cc) Image by Anders Sandberg

欧州司法裁判所(European Court of Justice)が現地時間6月8日に、モバイルキャリア各社の料金設定に関する欧州連合(EU)の規制を支持し、英ボーダフォン(Vodafone)、独Tモバイル(T-Mobile)、仏オレンジ(Orange)、スペインのテレフォニカ(Telefonica)の4社による異議申し立てを退けた。これにより、国際ローミング料金が下がることになる。

EUは2007年にモバイルキャリアに対して、国際ローミング料金の上限設定を課していた。この規制導入前には、たとえばオーストリアに旅行するドイツ人には1分1.7ユーロ(1ユーロ=110円とすると187円)、またキプロスから電話するベルギー人には1分2.5ユーロ(同275円)の通話料がそれぞれ課金されていた。これに対し、EUの規制の内容は、EU内のどこへ旅行しても、発信は最大で1分0.49ユーロ(53.9円)、着信は最大0.24ユーロ(26.4円)を上限とするというもの。さらにEUは、2011年には料金をもう一段引き下げて、発信1分0.35ユーロ(38.5円)、着信1分0.11ユーロ(12,1円)にする意向を示している。1.7ユーロが0.35ユーロでは80%近い値下げである。しかもこの規制はEU加盟27カ国のほか、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインにも適用される。

EU側はモバイルキャリアに対して、通話料のみならず、ショートメッセージサービス(SMS)やモバイル・インターネットのデータ通信についても国際ローミング料金の低減を命じており、さらに利用者が請求書を見てショックを受けることがないように、国際ローミングでは予め決めた金額に達した時点でデータのダウンロードを停止するなどの措置を講ずることも求めている。つまり、モバイルキャリア側からすれば反発して当然の内容が盛り込まれた規制の内容だが、いっぽうで「欧州連合は1つの市場」という原則を掲げるEU側からすれば、域内の移動によって利用者が不利益をこうむる事態は容認しがたいものだった。

今回の司法裁判所の判断で、モバイルキャリア各社には、国際ローミングによる料金収入の回復の見込みはなくなったが、さらにこれから各国で始まる4G周波数のオークションでの出費という課題も待ち構えている。欧州の大手勢もしばらくは厳しい戦いを強いられている状況が続きそうだ。

【参照情報】
Court upholds EU caps on mobile call charges abroad (total telecom)
Roaming charges to fall as phone giants lose case (Metro.co.uk)
EU Court Rules in Favor of Roaming Caps (Wall Street Journal)

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