▼Wall Street Journal デジタル・プライバシー特集
米ウォールストリートジャーナル(Wall Street Journal(WSJ))が「彼らが知っていること(What They Know)」という特集サイトでインターネットのプライバシー問題を扱っており、大手ウェブサイトの個人情報収集について疑義を訴えているが、同特集内で、共和党と民主党の議員2名が、15サイトに対して質問状を送ったことが紹介されている。
2議員はともに「米国下院エネルギーおよび商業対策委員会」のメンバーで、ネットのプライバシー問題に懸念を持っているとのこと。質問状を送られたのは、Yahoo!、MySpace、AOL、MSN、MSNBC、Live.comなど15サイトで、Comcastやベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)のサイトも含まれている。質問内容は、各サイトのプライバシー保護の実態、訪問者のPCにインストールされるトラッキング技術の詳細、トラッキングに利用されている技術に関する情報、収集されているデータなどのほか、各サイトが訪問者の健康状態や財務状況に応じたターゲティングを実施しているかどうかについて。
WSJの調べでは、全米トップ50サイト(トラフィックの40%を占める)をテストしたところ、実に3,180ものトラッキング用ツールが試験用PCにインストールされ、その行動が追跡されたという。インストールされるツールは1サイト当たり平均64ツールで、うち44ツールはサイトそのものではなく第三者(トラッキングサービス提供会社)からインストールされたという。1つもツールをインストールしなかったサイトはWikipedia.orgただ1つだったとのことだ。
古くはサーバーのアクセスログの解析から始まり、ブラウザのクッキーを利用したり、ページにビーコンを埋め込んだりと、商用インターネット黎明期からウェブサイトは広告価値を高めるためにユーザの属性と行動を結びつけることに腐心している。そのためには、ユーザのウェブ閲覧や購買、その他の行動を追跡(トラッキング)する必要がある。会員登録したサイトでログインしてから動き回れば、ほぼ全ての行動が丸裸で、個人情報と結びつけて記録され、解析されてしまうのだ。
トラッキングのみならず、Facebookの度重なるプライバシー問題や、日本でも話題になったプロバイダーによるディープ・パケット・インスペクション(DPI)など、ここ数カ月インターネットのプライバシーについての議論がワシントンでヒートアップしているようで、他にも公聴会が開かれたり法案が出されたりしている。
7月に提案され、ネット業界から大きな反発を買っている法案は、イリノイ州のBobby Rush議員(民主党)のもので、サイト運営企業が消費者の情報を調査会社やトラッキングサービス提供会社など第三者に開示するには、消費者の事前の合意を必要とするというものだ。法案にはプライバシー法を破った会社を個人が訴えたり、FTC(連邦取引委員会)や州の検事総長による強制執行も認められる内容が含まれており、パーソナルデータの蓄積自体にも制限がかかる可能性があるため、業界は強く反発しているとのこと。
【参照情報】
・Wall Street Journal デジタル・プライバシー特集
・Lawmakers Seek Answers on Online Tracking(WSJ.com)
・Lawmakers Question Data Collection at Major Sites(PCWorld)
・Sites Feed Personal Details To New Tracking Industry(WSJ.com)
・「ネット全履歴もとに広告」総務省容認 課題は流出対策(asahi.com)
・Online privacy debates heat up in Washington(O'Reillly Rader)
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