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中国編(5)存在感を増す山寨携帯メーカー 後編

2010.11.25

Updated by on November 25, 2010, 17:00 pm JST

山寨(さんざい)メーカーが中国及び海外の携帯電話市場で近年急激にその存在感や勢いを増していることは前回伝えたとおりである。

今回はではなぜ存在感や勢いが近年急激に増しているのか、ということと、中国国内のユーザーは山寨携帯をどのように受け止めているのか?を中心にお伝えしたい。

"山寨の父"率いるMediatek

中国のモバイル系を中心としたニュースで"山寨の父(中国語表記:山寨之父)"という言葉をよく目にする。この山寨という言葉は"山寨携帯"の意味だが、これは、いわば山寨携帯発展の産みの親とも言えるべき聯発科(英文表記:Mediatek、略称:MTK)のCEO蔡明介氏を指す敬称である。

▼"山寨の父"聯発科CEO蔡明介氏
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蔡明介氏が率いる聯発科社は1997年5月に台湾で設立された。同社は携帯電話のICチップを中心に光ディスク、DVD、デジタルテレビなどデジタル機器や無線機器などのICチップも提供している。世界各国の大手メーカーが同社のチップを採用しており、そのOEM提供先は中国大陸、インド、シンガポール、韓国、日本などのアジアだけにとどまらず、米国や英国、デンマークなど欧米各国にも広がっている。

同社の存在感は携帯電話市場で急激に伸びており、2010年には前年比2億台増の6億台の同社チップを搭載した携帯電話が出荷された。先の手広い海外展開に符号するように6億台の出荷見込みのうち、3分の2にあたる4億台が海外市場向けであることも注目に値する。

また、こと今回のテーマである山寨携帯電話に焦点を絞ると、最盛期には全体出荷数量の9割のシェアを収めるほどの圧倒的な存在であった。"であった"と過去形になっているのは、直近の調査データでは、圧倒的だったシェアが7割程度まで落ち込んでいるためである。

これは中国市場で台頭しつつある3G携帯やスマートフォン向け製品の遅れなどの戦略的な部分もあるが、展訊(英文名:Spreadtrum)社や晨星(英文名:Mstar)社、瑞芯微(英文名:Rockchip)など、ライバルの台頭も一因と考えられる。

同社は最近、CFO兼スポークスマンを務めていた喩銘鐸氏が辞任するなど良くないニュースが続いているが、今後どういった巻き返し、攻勢を図ってくるのかには要注目である。

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勢力を伸ばすRockchip

先程ライバルの台頭、という原因のところで名前を挙げた瑞芯微(英文名:Rockchip)社は山寨携帯電話やタブレットにおいて最近、非常に勢力を拡大しているメーカーである。

同社は2001年11月に福建省に設立され、携帯電話やMIDなどにICチップを提供してきた他、最近は中国市場でも人気を博しつつある電子ブックなどにも数多く搭載され始めている。

同社が提供するチップは"RKシリーズ"と呼ばれている。、最近はGoogle社が提供するモバイルOS"Android"に非常に注力をしており、"RK28xxシリーズ"と呼ばれる製品が山寨携帯メーカー、山寨タブレットメーカーに数多く採用されている。

▼Rockchip RK28xxシリーズの広告。Androidに注力していることが強調されている。
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現在、Androidは山寨携帯電話メーカーだけでなく、ローエンドで市場を切り開いていきたいと考えている国内外のブランドメーカーにも非常に数多く採用されている。"RK28xx"及びその他シリーズ、瑞芯微(英文名:Rockchip)の名は山寨携帯市場だけでなく、携帯電話市場全体として耳にする機会が増えると共に、その勢力を増していくものと考える。

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山寨携帯の中国国内での人気は...?

前編、後編にわたり提供者側の観点から見た山寨携帯電話の傾向を書いてきたが、では中国国内のユーザーは山寨携帯をどのように見ているのだろうか?

ここに興味深い調査データがある。インターネット調査会社ZDCが「山寨携帯についてどう思うか?」ということを調査したアンケート結果だ。

▼山寨携帯電話についてどう思うか?
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インターネット調査会社ZDCが調査したアンケートを元に中尾が編集

このデータによれば、"良くない"と思っている、"買うつもりはない"と思っている割合が非常に多いことがわかる。

前回触れたとおり、今や山寨携帯とは必ずしも模倣製品だけを指すわけではなく、ノンブランドな独自製品を含めた総称である。にもかかわらず「よくないと思う」という回答が4分の3を超える高い比率となっているのは、「模倣製品」というイメージがつきまとっての結果かもしれない。前回記事のアンケートにあった山寨携帯市場の海外での伸びに対し、中国国内市場は縮小していくであろうという予測にも合致する部分もあり非常に興味深い。

このように、山寨携帯は海外市場では(前回の記事で紹介したような)インドなどでの輸入規制、中国国内市場では根強く残る「模倣イメージ」と闘いつつ、先に紹介したICチップベンダーの恩恵を受けて低価格化されたブランド製品との戦いも控えているのである。

今後の山寨携帯メーカーの生き残りには、低価格路線にプラスアルファとなる新たな戦略が求められていくのであろう。

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