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マイクロソフト、企業向けクラウドでデスクトップ版Officeも月額課金で提供へ

2010.11.08

Updated by WirelessWire News編集部 on November 8, 2010, 16:00 pm JST

Microsoft Office 365
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米マイクロソフトは、これまで「Microsoft Business Productivity Online Suite」(BPOS)という名称で展開してきた企業向けのSaaSを刷新し、「Microsoft Office 365」として提供することを発表。専用のWebサイトを用意し、ベータプログラムの公開を開始しました。

Office 365の最大の特徴は、デスクトップ版Office、Web版Officeが、クラウドと一体で月額課金により提供されるところ。Google Appsに明確に対抗するサービスといえます。

Office 365に含まれる機能と価格

Office 365に含まれるのは、以下の製品およびサービス群です。注目すべきは、デスクトップ版Officeが月額課金で提供されるようになることでしょう。日本円では月額2540円でデスクトップ版Officeが利用できるようになります。

  • Office Professional Plus
    デスクトップ版のMicrosoft Office、Web版のOffice Web Apps
  • Exchange Online
    クラウドで提供されるExchange Server。メールサーバなどの機能を備える
  • SharePoint Online
    クラウドで提供されるSharePoint Server。ドキュメント共有、グループウェア的な機能を備える
  • Lync OnLine
    クラウドで提供されるコミュニケーションサーバ。VoIPによる電話回線とインターネットとの接続や、インスタントメッセージング、ビデオ会議などを備える

Office 365には、企業規模による2つのエディションが提供されます。主な特徴を以下に記しました。また、このほかに教育機関向けのOffice 365 for educationがあります。

Office 365 for small business

  • 25人以下(最大50人)程度を想定
  • Web版のOffice Web Appsのみで、デスクトップ版Officeは含まず
  • 1人あたり25GBのメールボックス
  • Lync Onlineは、インスタントメッセージングと電子会議機能
  • 1人あたり月額 6ドル/600円

Office 365 for enterprises

  • Office 365のほぼ全機能を提供
  • デスクトップ版Officeなしで、1人あたり月額 10ドル/1000円
  • デスクトップ版Officeありで、1人あたり月額 24ドル/2540円

上記の情報は、Office 365のサイトで公開されているPricing and Plans - Office 365 Fact Sheet [docx形式]に基づいています(マイクロソフト日本法人の発表資料には日本円の価格は含まれておらず、変更される可能性があるかもしれません)。

それぞれのエディションに対するベータ版の申し込みが始まっており、正式公開は2011年初旬の予定です。

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次の課題はカスタマイズ

Office 365の発表で、マイクロソフトがSaaSにおいてGoogle Appsと対抗することがより鮮明になりました。

これまでマイクロソフトがSaaSとして提供してきたBPOSには、Exchange Onlineによるメール機能は含まれていましたが、Google Appsが提供してきたワードプロセッサや表計算の機能はありませんでした。

しかしOffice 365はWeb版のOffice Web Appsを統合して機能面で対抗できるようになり、価格もGoogle Appsが年50ドル/6000円に対し、Office 365 for small businessが月額6ドル/600円で、年額換算すると72ドル/7200円と同価格帯になりました(従来のBPOSスイートは月額約1000円から)。

マイクロソフトのSaaSにおける次の課題はカスタマイズでしょう。ライバルのグーグルはGoogle Apps APIの提供やGoogle Apps Scriptによるサーバベースのスクリプティングによるカスタマイズの機能を少しずつ強化しています。セールスフォース・ドットコムでもSalesforce CRMにカスタマイズ機能を備えているだけでなく、Force.comによるPaaSとの強力な連携も可能です。こうした面ではマイクロソフトのSaaSはまだライバルに遅れをとっています。

Google Apps API

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しかし圧倒的なシェアを持つデスクトップ版のOffice、オンプレミス版のExchange SeverやSharePoint Serverと、SaaSで提供されるサービスの互換性が同社の最大の武器です。当面、マイクロソフトはこうした従来との互換性を全面に押し出してSaaS市場で戦っていくことになるでしょう。

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開発者向けクラウド「Windows Azure」も新機能発表

Windows Azure Platform
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さらにマイクロソフトは開発者向けのクラウド「Windows Azure」でも機能強化を発表しました。発表は10月28日(日本時間29日)にシアトルの同社本社で行われたイベント「PDC10」にてです。

Windows Azureでは予想通りに新機能の「VM Role」が発表。これは、Windows Azureクラウドの上でWindows Serverの仮想マシンを動かす機能。つまり、いままで手元で動作していたWindows ServerのイメージをほぼそのままWindows Azureへ持って行くことができます。オンプレミスからクラウドへの移行が容易になると同時に、クラウドでのアプリケーション運用により高い柔軟性をもたらすことでしょう。

予想外だったのは、同時に「Server Application Virtualization」も新機能として発表されたことです。これはアプリケーションを仮想化してクラウドへ持って行く機能。いままでWindows Serverに実装されていた機能をWindows Azureで実現したことになります。

VM RoleがWindows ServerのOSごと仮想化するのに対し、Server Application Vritualizationはアプリケーションだけを仮想化してクラウドへ持って行けるため、より小さいイメージで手軽にアプリケーションをクラウドへ移行させることができます。

これらの新機能は年末頃に登場予定とのこと。

さらにWindows Azureに対応した開発フレームワークであるAppFabricの新機能として、Windows Live ID、Goole ID、Yahoo! ID、FacebookなどがWindows Azureの認証として使えるようになるとのこと。これで、さまざまな外部アプリケーションやソーシャルアプリケーションとの連係なども開発しやすくなることでしょう。

文・新野淳一(ブログ「Publickey」 Blogger in Chief)

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