モバイルコンテンツのマネタイズは、まずロケーション・ベース・サービス(LBS)が注目され、次にゲームアプリが主流になった。その後はアップルやグーグルの参入で、広告市場も活性化している。そんななか、日本のベンチャーの間でも海外指向が高まっている。
2007年にiPhoneが発売され、米国中がビックリし、その後モバイル系ビジネスのベンチャー企業が増えた。モバイルとCGMを組み合わせたサービスや、カレンダーやメモ帳などの普遍的なサービスを開発するベンチャーがたくさん生まれた。そうしたベンチャー企業を取材するたびに、「これは(似たものが)日本にもある。日本のベンチャーもアメリカに進出すれば、投資資金を得られるのに」と思っていた。
2009年1月にラスベガスの行われたカンファレンスでは、iPhoneユーザーはインターネット利用が多いこと、友人とソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使うことが指摘され、今後のビジネスの方向性は、情報のシェアにあると言われていた。
そのとき、ロケーション・ベース・サービス(LBS)という言葉を初めて聞いた。ナビゲーションやお店情報などをユーザーの位置によって配信するサービスが盛り上がると予想されていた。LooptやPelagoがLBSの代表的なベンチャーとして注目されていた。
ところが、それから3ヶ月後に渡米すると、LBSではなくて、有料ゲームやアプリがモバイルのマネタイズモデルとして盛り上がっていた。ZyngaやGluMobile、ng:mocoがセッションの檀上にいた。その後、Zyngaは、会員2億人のソーシャル・ゲームを運営する企業になる。
そして、2009年11月にグーグルがAdMobを買収したり、アップルがQuattro Wirelessを買収すると、今度は広告ビジネスが活発になってきた。アメリカのモバイル広告市場は、グーグルが2010年末までに59%のシェアを取る(IDC調べ)と予想されていて、Millennial Mediaや、2010年12月1日にCCIと提携したJumptapなどの独立系のシェアは低下している。
しかし、米国以外でみると、2007年に創業したインドのinMobiが、アジアで1億人、アフリカで4600万人、全世界で1億8500万人にリーチできるアドネットワークを運営している。これからさらに成長するアジア、アフリカ市場のシェアが大きいのが強みだ。モバイル上のサービスやビジネスは、iPhoneやアンドロイド、フェースブックのおかげで、国境がない。
日本にもスマートフォン向けアドネットワークを構築するノボットやアドランティスといったベンチャー企業がいて、最初から海外市場を目指している。ゲームアプリなど彼らの広告クライアントも海外市場に販路を広げているからだ。2010年10月のad:tech東京で、グリーの田中社長が、「スマートフォンのビジネスは、強制的にグローバル競争となる」と語っていた。
モバイルサービスというと、ハイパーローカルな切り口もあるが、いっぽうでこうしたグローバル志向なマインドが生まれていて面白い。
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登録はこちら情報通信総合研究所主任研究員。1991年早稲田大学卒業、WOWOW入社。2001年ケータイWOWOW設立、代表取締役就任。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学でMBA、2005年高知工科大学で博士号を取得。文系・理系に通じ、さらには国内外のメディア事情、コンテンツ産業に精通。著書に『ネットテレビの衝撃―20XX年のテレビビジネス』(東洋経済新報社)『明日のテレビ チャンネルが消える日』(朝日新書)がある。