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オープンデータシンポジウムに見る国内外のオープンデータの現状(上) 2015年度末に向けた取り組みと進捗

2013.12.16

Updated by Yuko Nonoshita on December 16, 2013, 14:44 pm UTC

オープンデータを取り巻く状況は、今年に入って国家レベルのIT戦略の重要テーマの1つになるなど急速な動きを見せている。12月9日に東京大学伊藤謝恩ホールで開催されたオープンデータシンポジウムでは、「世界最先端オープンデータ社会の実現に向けて 世界の潮流から学ぶべきこと」と題し、国内外で推進に向けた取り組みがどのようにはじまろうとしているかが報告された。

本シンポジウムを総務省と共催するオープンデータ流通推進コンソーシアムは、産官学共同によるオープンデータの流通環境の実現に向けた基盤整備を推進すること目的に2012年夏に設立された。シンポジウムの開催は今回が2回目で、オープンデータとはどのようなものかを紹介することが主であった前回と変わり、ルールづくりやガイドラインの整備、データフォーマットの調整、アプリ開発支援など、より具体的な内容になっていた。

その理由としては、2013年6月14日に閣議決定された「世界最先端 IT 国家創造宣言」においてオープンデータの推進が重要テーマの一つとなったことがあげられる。さらに、6月19日に英国で開催されたG8サミットで合意された「オープンデータ憲章」では、政府が保有するデータの原則公開などの5原則が盛り込まれ、日本を含む各国は今年10月までに2015年末までの行動計画を公開するよう求められた。日本政府は、2015年度末までに他の先進国と同水準の公開内容を実現するという目標を掲げており、本プログラムでは、内閣官房IT総合戦略室、経済産業省情報プロジェクト室、総務省情報流通振興課が、それぞれの今後の取り組みを紹介した。

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宣言に合わせた各省の動きが早くもはじまっている

国家創造宣言ではオープンデータを、新しい産業やサービスに向けた経済面での活用、健康や防災、環境など生活面での活用、公共サービスなどのワンストップサービスへの展開という、3つの柱を目標にするとしている。国の統計や地図、予算情報などのキー・データセットと、経済や教育、犯罪と司法、交通インフラといったハイバリュー・データセットの公開を行い、2014年度中には現在試験運用中の専用ポータルサイトを本格的に稼働させる予定だ。

Open DATA METI構想を掲げる経済産業省では、まずは保有データの提供でニーズや課題を把握し、モデルケースを元に順次構築を進めるサイクルを提示している。利用促進のためにデータは、オープンライセンスに基づいた機械での判読が可能なオープンフォーマットで公開していくが、共通語彙の基盤の整備も合わせて重要になる。たとえば、分野が異なると同じ言葉でも意味が変わる場合があり、それらをシステムが的確に判断できるような明確な仕組みづくりが必要だとしている。

また、日本を始めとした漢字を使う国では文字情報基盤の整備も合わせて必要である。具体的には、国際標準に準拠させる形で実装されているにIPAmj明朝フォントをベースに、行政の実務で必要な約6万字のデータをオープンで無償公開する。データには戸籍統一文字や住民基本台帳ネットワークシステム統一文字なども含まれており、既存の行政データにも対応可能となる。

▼共通語彙の基盤の整備では、同じ言葉でも意味の違いがあることに注目して調整が行われている
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データ作成のためのガイドラインやマニュアルの作成が進む

コンソーシアムが設置する3つの委員会からの活動報告も行われた。推進に必要な技術標準に取り組む技術委員会では、データ作成に関する技術ガイドやデータ規格を調整する外部仕様書、政府や自治体職員のためのガイドラインといった具体的な資料の作成を進めている。現在、オープンデータ化のためのデータ作成に関する技術ガイド、CVS形式データ規格、外部仕様書という3つの技術文書を作成しており、海外へ向けたアウトプットの調査も行っていく。

今後は、技術ガイドの内容をCVS以外にも網羅できるよう変更し、平行して政府や自治体職員のためのガイドラインも作成する。セマンティックウェブの技術を使った仕様書のブラシュアップなど、変化に合わせたアップグレードを行うが、利用する組織の種類は学校や企業など幅広く、技術水準も多様なため、ライセンスモデルの解釈や応用も異なることから、どう対応していくかはますます大きな課題になっていくだろうと考えられている。認知度は高まったが、実際に運用するにはもっと後押しが必要であり、公共におけるガバナンスの改善や民間におけるイノベーションの促進が鍵になるとしている。

データガバナンス委員会では、ケーススタディとして情報通信白書を4月からオープンデータ化し、課題の洗い出しを行っているところである。成果を元に、二次利用促進のための利用規約の作成や、公共データに関する第三者の権利を処理する契約書案の作成など、著作権に関する問題にも取り組み、現時点では、著作権はあるが一般的なライセンスで二次利用を促進する方法を目指している。ライセンスは世界標準になりつつあるクリエイティブコモンズの CC-BY を参照し、来年はマニュアルの作成を進めることを目標としている。

利活用・普及委員会では主にオープンデータに関する参加型イベントの開催や講演、アプリ開発のためのアイデアソン・ハッカソンを開催している。来年1月には今年度に実施中の7つの実証実験によってオープンデータ化された公共データを活用した、一般公募によるオープンデータ・アプリコンテストも開催される。合わせて、自治体分科会を開催し、福井県鯖江市や千葉市で始まっているオープンデータを使ったアプリ開発などを先行事例とし、課題の洗い出しや支援を行っていくということだ。

▼コンソーシアムでは年明け早々にオープンデータを使ったアプリケーション開発のコンテストを実施する
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【関連情報】
オープンデータシンポジウム 世界最先端オープンデータ社会の実現に向けて 世界の潮流から学ぶべきこと
オープンデータ・アプリコンテスト

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。