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(2)Handset -なぜ日本は「スマートフォン市場」に乗り遅れたのか

2011.02.28

Updated by Michi Kaifu on February 28, 2011, 18:30 pm JST

2月16日(現地時間)に行われた、日米欧のコンサルタントによる「MWC2011 ラップアップ」の模様を翻訳付きでお届けする。全体のIndexはこちら
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▼「Handset」最初から再生

差別化が難しい市場とアジア流ビジネスモデルの台頭

──先ほど端末を作っているハードウェアベンダーが今後直面する難しさに触れていましたが、今後、彼らがやろうとしていることのトレンドや、どのような戦略をとるのが良いかという事に触れてもらえますか?

Derek:うーん。沈黙が正解かもしれませんね。とても難しい質問だし、たぶんまだ解決策が出ていない。

まだ、解決策と思われる「アイデア」が出てきたぐらいですね。例えば、ユーザーインタフェースのカスタマイズとか。でも、ユーザーにはカスタマイズされている事を望んでいる人もいるが、人によってはそれを本来のコースからの逸脱だと思う人もいるだろうし、開発者には分裂と思う人もいるでしょう。だから、差別化という点では、(カスタマイズには)優位性もあるが不都合な事も多いです。

Olivier:私が思うのは、アップルによってユーザーが求めるユーザーエクスペリエンスの基準がセットされたということです。多くのベンダー、例えばGalaxyなどの端末は、アップルがやっている事をコピーしてアップルに似たユーザーエクスペリエンスを提供しようとしています。

ですから、(それらの端末の)ユーザーエクスペリエンスも似通っていて、ただそれぞれ市場に対して提供するソリューションの主軸の違い、たとえばソーシャルメディアに優れているものや、自動車との連動性に優れているなどの違いを出そうとしています。ただし、現在は誰が勝者となるかを予測するのは非常に難しいと思います。差別化できるマージンが非常に少ないわけです。

また(従来との)大きな違いは現在、業界全体を牽引しているのがアジア企業、HTCやSamsungなどという点だと思います。今年のバルセロナでもSamsungがノキアに取って代わりました。なので、アジア流のビジネスモデルが現在、主流になってきていると思います。

たとえば韓国のSK Telecomは自動車向けのタブレットを来年市場に投入する予定ですしChina Telecomも自動車向けのソリューションを投入する予定です。なので、ユーザーマーケットに対して違った角度からソリューションを提供しようとしているわけです。

Derek:多くのベンダーはさまざまな種類の端末を提供しようとしています。電話機本体の競争も激化していますが、現在はタブレットの市場もあるし自動車関連の市場もあるわけです、押し寄せる波が大きくなることで売れる端末が増えてAndroid市場全体が大きくなることで市場に参加するベンダーの売り上げが延びる可能性もあるかもしれません。確かにそれは大きなアドバンテージになる可能性があります。

でも、ベンダーにとっては現状で差別化するのはとても難しいとおもいます、例えばノキアのように自社でスマートフォン向けのOSの開発に失敗しました。今回の講演でも言っていたことは、彼らはAndroidを検討したが、株主が求めている他のベンダーとの差別化要因が少なすぎるという理由で、Androidを受け入れる事ができなかったわけです。なので、彼ら(ノキア)はマイクロソフトとの巨大な提携をすること、少しでも他のベンダーとの違いを出そうとしています。

(今の市場に)いえるのは、ソニーエリクソンやHTCなどがリーダーとなっている市場では、それまで牽引役だった企業、例えばエリクソンなどがよりコモディティ化した市場の価格帯に下がってきて、HTCは同じ価格帯に上がってきていると思います。これまで誰も知らない他社のため開発していたホワイトブランドだったHTCは、市場に認められるブランドになってきたわけです。

現在の市場には、負けている者もいますが、明らかに勝っている者もいます。先ほど中国の話がありましたがコストが安くクオリティが高いものを提供できればAndroidは企業にとってはとても良い競争要因になれると思います。ただ、ヨーロッパ企業や日本企業にとっては非常に厳しい環境かもしれません。

Olivier Bourhis氏PTOLEMUS Consulting Group
位置情報サービスにフォーカスしたコンサルティングを提供。
Derek Kerton氏Kerton Group
テレコム企業へのコンサルティングを提供。「シリコン バレー・テレコム・カウンシル(SVTC)」主催。
聞き手:海部美知氏(Enotech Consulting/WirelessWire News特派員)
Interview at Mobile World Congress with Olivier Bourhis, Managing Partner at PTOLEMUS Consulting Group in France which specializes in Strategies for Mobile Companies and Derek Kerton, Principal Analyst at The Kerton Group, a wireless consulting and analysis firm based in the Silicon Valley.

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▼「Handset」3:20から再生

日本企業がスマートフォンに乗り遅れた理由

──そうですね、日本企業の多くがこの(スマートフォン)市場で大きな活躍ができていないということは、日本でも話題になっています。私は数年前にスマートフォンが端末だけではなくプラットフォームとして、市場のコンシューマー向け電化製品のプラットフォームに拡張して行く中、先ほど言ったような、車と、音楽製品、カメラといった分野で、日本企業の参入に期待していました。でも(日本企業は)そうしていません。これらの市場もコモディティ化されると思います。

Derek:なぜ、参入しなかったか、理由がわかるような気がします。

Olivier:日本企業に何が起きているのか。例えば東芝の例を見てみると、彼らが製造するデバイス、タブレットやスマートフォンなど(の製品)は、世界一だと私は思います。彼らが失敗しているのは、市場に対する自分たちの製品のマーケティングの部分ではないでしょうか。

製品は市場にあり、実際に日本国内では使われているのに、誰もその事を知らず、また、そのような製品が輸出されていなかったり、うまくプロモーションされていないわけです。「良い製品を出す事に注力するが市場に対しての認知を促す努力をしない」これは多くの日本企業に言えると思います。日本の業界にとってはとても残念な事だと思います。

Derek:Olivierの意見はとてもよいと思います。日本企業が本来手に入れる事ができる商機を失っている事情を説明するには、フランステレコムが提供していたMinitelが良い例だと思います。

Minitelはフランステレコムが提供していた家庭向けのターミナルでした。映画のチケットや天気予報などを提供するインターネット時代以前の独自のウェブのようなサービスでした。この端末はより高度なインターネットが提供していたサービスの必要性を下げていたのです。それらのサービスの多くは既にMinitelで提供されていたので、フランスでは世界の他国よりもインターネットの普及が遅れました。

これは日本においても同じだったともいます、日本は世界に比べてあまりにも進歩した独自インフラがあり、iPhoneのようなものの必要性が少なかったのです。時刻表を見たいなどとおもっても、既にフィーチャーフォンで提供されていたわけです。だから日本はフィーチャーフォンに注力して、スマートフォンというトレンドを受け入れなかったのです。

これが、結果として、日本が世界で起こっているモバイルテレコミュニケーションやモバイル情報トレンドから遅れてしまった要因だと思います。ソフトバンクによるiPhoneの提供がはじまったり、開発者達がスマートフォンというプラットフォームに気づいたりしていますが、今回の日本でのイノベーションは出遅れていると思います。

今まで日本は世界より進化していましたが、フランスがインターネットという波に乗り遅れたのと同じように、日本はスマートフォンに乗り遅れています。日本企業の多くは国内の既存携帯端末環境に注力するあまりに、Androidをどのように、ラジカセや携帯、地下鉄のサイネージやタッチスクリーン情報端末などに搭載すれば良いかを、考えていないと思います。

Olivier Bourhis氏PTOLEMUS Consulting Group
位置情報サービスにフォーカスしたコンサルティングを提供。
Derek Kerton氏Kerton Group
テレコム企業へのコンサルティングを提供。「シリコン バレー・テレコム・カウンシル(SVTC)」主催。
聞き手:海部美知氏(Enotech Consulting/WirelessWire News特派員)
Interview at Mobile World Congress with Olivier Bourhis, Managing Partner at PTOLEMUS Consulting Group in France which specializes in Strategies for Mobile Companies and Derek Kerton, Principal Analyst at The Kerton Group, a wireless consulting and analysis firm based in the Silicon Valley.

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▼「Handset」6:35から再生

端末は、携帯電話だけじゃない

Derek:CESではAndroidがいろんな端末に搭載されていました、フランスの企業が出展していたカーステレオシステムParrotはAndroidをOSとしてグーグルマップを表示したりできる上に、あとから車に取り付ける事ができるようになっていました。

これを、フランスの企業が提供していますが、昔はこのような製品は日本が提供していました。日本はもっとイノベーションする必要があると思います。

Olivier:ドコモは、今年はブースを出しています。彼らも世界からさまざまなインスピレーションを求めていると思います。重要なのは、持っている知識や技術の違いではなく、市場をよりオープンにすることで生まれる市場が持つ活力が、より創造性の高いソリューションを生む点だと思います。

Derek:アメリカのシリコンバレーの開発者はどうすればiPhone向け製品の開発ができるだろうかと考えます。アフリカの開発者はどうすればSMS向けの開発をできるだろうと考えます。日本の開発者は既存携帯環境向けの開発を考えます。これはそれぞれ間違った方向だと思います。

シリコンバレーの開発者は日本の既存端末のこともアフリカのSMS向けのソリューションのことも考えなければいけないわけです、そうして初めてグローバルな商機が生まれます。自分の周りにある環境を考えるだけではなく、日本企業ももっとグローバルにスマートフォンやSMSのソリューションを考える必要があると思います。

──私も同意見です。最近日本で使われているキーワードにガラパゴスというのがあります、あまりにも市場が世界から隔離されている上に独自の進化をしていることを表しています。シャープはさらに「Galapagos」というebookリーダーを発売しました。

Derek:コモド大トカゲじゃなくて、キモノ大トカゲだね。

──そうですね。

Olivier Bourhis氏PTOLEMUS Consulting Group
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Derek Kerton氏Kerton Group
テレコム企業へのコンサルティングを提供。「シリコン バレー・テレコム・カウンシル(SVTC)」主催。
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Interview at Mobile World Congress with Olivier Bourhis, Managing Partner at PTOLEMUS Consulting Group in France which specializes in Strategies for Mobile Companies and Derek Kerton, Principal Analyst at The Kerton Group, a wireless consulting and analysis firm based in the Silicon Valley.

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海部美知(かいふ・みち)

ENOTECH Consulting代表。NTT米国法人、および米国通信事業者にて事業開発担当の後、経営コンサルタントとして独立。著書に『パラダイス鎖国』がある。現在、シリコン・バレー在住。
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