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拡大するデータトラフィックへの対応ロードマップを3キャリアが発表

2011.06.14

Updated by Yuko Nonoshita on June 14, 2011, 12:00 pm JST

6月8日から10日まで幕張メッセで開催されていたInterop Tokyo 2011 の会場では、ネット技術関連の様々なテーマによるエデュケーショナルコンファレンスが開催された。ここでは、モバイル&ワイヤレスをテーマにしたセッションの中から、10日に行われた「Heavy Weight Cellular Providers」を紹介する。

スマートフォンの普及によって増大するトラフィックに対し品質をどう維持していくのか。今後の対応も含めてドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアからスピーカーが参加し、それぞれの戦略を語った。司会進行役は東京大学大学院情報理工学系研究科の江崎浩教授が務めた。

▼司会進行役の東京大学大学院情報理工学系研究科江崎浩教授
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最初にNTTドコモネットワーク部担当部長の前原昭宏氏が発表を行った。Xperiaの販売で急速にトラフィックが伸び、09年は年率1.7倍、去年は2倍で、今年以降も普及期が続く間は同じ状況が続くだろうと予想。成熟期に入るまで倍々ペースが続くのはiモードも同じだったようだ。FOMAも設備増強を続けているが、シグナリング処理重視から同時接続数の確保というように注力する点は異なっている。サービスとしてはLTEの重点展開を行い、昨年12月スタートとしたXI(クロッシィ)ブランドのエクスプレスカード型接続機器を4月に発売。今年夏にモバイルWi-Fiルータ型を販売、他にも秋にタブレット、冬にはスマートフォンを発表する予定だ。

▼NTTドコモネットワーク部担当部長の前原昭宏氏
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▼ドコモのLTEブランドXiの今後の展開計画
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LTEはHSDPAの約3倍の周波数効率を持っており、トラフィックの高いエリアから順次導入していく。FOMAとデュアルに利用できるが、2011年中に全国の県庁所在地に展開し、約5千局で人口カバー率約20%、さらに2014年には3万5千局へ増やし、カバー率70%を目指す。平行して繁華街ではWi-Fiや、2011年3月に包括免許化したフェムトセルでのフォローも行う。ただし、それでも限界がある場合は、公平利用のためにやむなくトラフィックコントロールの導入も行うという。現実に、全体の5%のさらに一部のユーザーがトラフィックの半分以上を使っていて、直近3日間の利用が300万パケット以上の場合、混雑時だけアクセスを落とすなどする。前原氏は「トラフィック対策には特効薬はない」ともコメントしており、今後もいろいろな方法を組み合わせて対応していくとしている。

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▼KDDI株式会社モバイルネットワーク開発本部課長の新名豪氏
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次にKDDI株式会社モバイルネットワーク開発本部課長の新名豪氏が発表。トラフィックの利用状況はドコモに近いとしつつ、フューチャーフォンとスマートフォンでは利用するコンテンツが異なり、ストリーミングであれば9%対49%というような極端な違いについて、物理的なキャパシティをあげるデータオフロード(Wi-Fi、WiMAX)を活用するとしている。トラフィックと収益のギャップを埋めるには定額制の廃止といったような利用者にとってネガティブに見えるものも検討していくとしている。もちろん、単純な値上げではなくトラフィック節減のための新技術開発も行うが、その場合でも体感的な接続スピードを上げることを重視している。

具体的な新技術としては、2003年から取り組んでいるCDMA2000のEV-DO技術を進化させた、EV-DOマルチキャリアRev.Aを導入し、業界最速を実現。昨年秋冬で対応発表するなど力を入れているが、他にも3G+WIMAXのデュアルタイプ機種の提供も行う。LTEは800MHzで新たに割当てられた帯域幅を利用する予定で2012年12月のスタートを予定。そこへ向けて、CATBはFTTH、ADSLの有線とも合わせたマルチアクセス戦略の展開を予定している。

▼auが計画しているマルチアクセス戦略図
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▼ソフトバンクモバイル株式会社プロダクト・サービス本部PS推進統括部商品戦略部部長の桑原正光氏
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ソフトバンクモバイル株式会社プロダクト・サービス本部PS推進統括部商品戦略部部長の桑原正光氏は、端末多様化とクラウド連携、ネットワーク増強の3点について話をした。ネットワーク接続へのハブ端末をデジタルアルバムなどにも拡げ、利用者の生活スタイルに合わせた商品企画を行うとしている。それに対しクラウド対応は必須で、データに最適な端末で利用するようになり、状況によっては柔軟な利用価格を打ち出しすことも検討しているとコメントした。

▼ソフトバンクが進めるネットワーク増強策
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2.5GHz帯の活用は、ソフトバンクではなく、ウィルコムの資産を受け継いだワイヤレスシーテープランニングという別会社が行っているので説明しにくいとしつつも、高度化XGPに対応するMVNOを検討中で、それに対する認可も受けたところだとういう。LTEはすでに発売しているULTRA SPEEDブランドの対応機種を拡大。他にも、接続環境の提供方法の改善も検討し、たとえば、Wi-Fiエリア内に入ったら勝手に接続を切り替えるのではなく、使い方に合わせた最適なネットワークを自動的に選択するスマートな接続技術の開発を目指している。

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江崎教授は3キャリアの発表の要点をまとめた上で、注目されている700/900MHzの免許申請は、同じ申請でも、どれぐらいの品質として欲しいかの要求は3社バラバラで、会社を一つ作って公平性を保つようにしなければ実現しないのではないかと疑問を投げ掛けた。特に問題になるのは仕様だけでなく周波数もガラパゴス化しないようにすることで、10年後の夢に向けてそれぞれがポリシーをどう整備するかが大切だとコメント。話は次のウェブ標準技術となるHTML5への取り組み方にも及んだが、トラフィック対策よりコンテンツとして期待しており、ソフトバンクは特にアプリビジネスからのシフトし、クラウド連携に近い対応も行っていきたいという話をしたところで、コンファレンスは時間切れとなり終了した。

▼江崎教授による3キャリアそれぞれの発表をまとめたメモ
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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。