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国内3キャリアの戦略に見る、スマートフォンとクラウドを利用したビジネスのあり方

2011.06.13

Updated by Yuko Nonoshita on June 13, 2011, 19:00 pm JST

6月8日から10日まで幕張メッセで開催されているInterop Tokyo 2011 の会場では、ネット技術関連の様々なテーマによるエデュケーショナルコンファレンスが開催された。ここでは、モバイル&ワイヤレスをテーマにしたセッションの中から、10日に行われた「モバイルビジネスクラウドと企業活動 〜 スマートフォン革命 〜」を紹介する。

スマートフォンの普及に合わせて加速化するモバイルビジネスクラウド戦略について、ドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアからスピーカーが参加し、それぞれの展開を比較できる貴重な機会となった。前半は各キャリアによるモバイルクラウド戦略の紹介がプレゼン形式で行われた。いずれも、スマートフォンとリモートアクセスの需要は拡大しており、それに伴うクラウドサービスの整備が必要としているが、個々の戦略は微妙に異なっている。

▼NTTドコモ法人ビジネス戦略部部長小関純氏
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NTTドコモの法人ビジネス戦略部部長の小関純氏は、まずタブレットやスマートフォンを含むモバイル戦略として、業界共通型と特化型の両方向に向けて具体的なソリューションを提供するとし、クラウド戦略では認証や課金基盤に力を入れ、より多くのベンダーが参加してもらえるようにするという。具体的にはOSがバージョンアップした際に、システムの試験がまとめて行えるキットの提供や、導入後のアフターフォローを強化し、顧客が感じているAndroidへのセキュリティ不安についても、遠隔管理サービスを月額315円で提供する予定だ。

また、スマートフォンとクラウド連携の活用例として、防衛医大と開発している避難所のサーベライランシステムを紹介。避難所の医療従事者からギャラクシータブを使って医療情報をFOMA網を経由してサーベイし、病気の予防対策などに活用している。建築現場で電子マニュアルや現場報告システムに活用されている例も紹介し、そうしたニーズに合わせた商品開発も進めていくとしている。

▼ドコモではモバイル端末向けソリューションを業界共通型と業界特化型に分け、それぞれに適切なシステムやサービスを提供するとしている
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▼KDDI株式会社ソリューション事業本部ソリューション推進本部本部長有泉健氏
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KDDI株式会社ソリューション事業本部ソリューション推進本部本部長の有泉健氏は、au全体としてAndroid開発にシフトしていることをアピール。そこでセキュリティ対策として本年6月に端末紛失の際のデータ消去を含むビジネス便利パックを、さらに8月にはGoogleスピンアウトのベンチャー3LM社と協力して新しい管理サービスを試験運用する予定だ。

▼auはGoogleスピンアウトのセキュリティベンチャーと共同開発した新しい管理サービスの試験運用を8月に始めると発表した
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クラウド戦略としては、プライベートとパブリック対応のハイブリッド構築を可能とし、外出先から利用する仮想デスクトップもSAAS的に提供しようとしている。合わせて音声用のPBXを提供し、ワンストップのサポートが行える体制を整える方向で進めている。さらにこれらのソリューションについては、国内だけでなくアジアを始めとした海外でも、日本の品質をそのままに提供することを目標としている。

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▼ソフトバンクテレコム株式会社執行役員営業副統括兼営業開発本部本部長石岡幸則氏
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ソフトバンクテレコム株式会社執行役員で営業副統括兼営業開発本部本部長の石岡幸則氏は、PC時代に個々の端末に分散していた資産を、スマートフォンでは共有できる環境が必要とし、社内だけでなく社外ともビジネスコラボレーションをどこでもスムーズ且つスピーディにできるサービスをすでに用意していると紹介。意外にもGoogleのメールやスケジュールサービスを利用したもので、「Softbank with Google Apps」という企業向けアプリケーションのオールインパッケージで提供している。

iPhoneとiPadについては「ビジネス・コンシェル デバイスマネジメント」という複数台の端末をリモートで一括管理・制御するサービスもスタートしている。料金については帯域単位に加えて1ID単位も用意し、細かいニーズやコストに柔軟に応えられるようにするようだ。また、災害の影響によるBCPの見直しを想定し、在宅勤務、オフィス、データセンター/クラウドの3つに対する支援ソリューションの構築を進めているという。

▼ソフトバンクからは従来の戦略に加えて災害や節電対策を想定したBCP支援ソリューションが紹介された
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▼慶應義塾大学環境情報学部中村修教授は「スマートフォンの普及によるプラットフォームのオープン化やバックエンドにクラウドサービスが当たり前になり、サービスやビジネスのあり方がどう変わるかに興味がある」と語る
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後半は、自らWiMAX技術などに関わっている慶應義塾大学環境情報学部の中村修教授を司会進行役に、パネルディスカッション形式で進められた。教授が3社共通の課題であるセキュリティについて、さらに詳しく説明を求められたところ、auの有泉氏は「デバイスとネットワークの両側で考える必要があり、紛失などは技術で対応できるが、ネットワークは利用状況を管理するのが目的なので、クライアントと相談しながら対応を進めなければならない」とコメント。ソフトバンクの石岡氏は「端末認証からはじまってあらゆるセキュリティ機能を要求される場合もあるが、最終的には人の行動と情報管理が必須」としている。ドコモの尾関氏は「セキュリティ問題を紛失と業務外利用に絞り込み、認証を問題に分けている」と説明。iモードで築いた技術を元にしたセキュアなコンテンツプロバイダ認証『ネクストハイ』という新規プロジェクトを近く公開予定だと発表した。

続いて中村教授は、ライフスタイルやワークスタイルの変化に対する戦略について追加の補足を求め、ドコモはテザリングサービスの提供やクラウド連携の拡大の可能性を示唆。ソフトバンクはIDの利用の強化を今後拡がるIPv6への対応も見据えて行う予定だという。auからは車の車内ディスプレイにスマートフォン経由でデータが見られるようにするという具体的な取り組みが紹介された。

最後のまとめで中村教授は「やはり一番大きいのはAndroidのセキュリティ不安の払拭で、技術よりポリシーと一緒に考えないと無用なコストがかかるだけで終わる」と指摘。「日本は海外に比べてそこが弱点であり、技術と平行して対策を行う必要があるだろう」というコメントでパネルディスカッションを締めくくった。

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。