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グーグルのモトローラ買収 - Android端末メーカー各社にとっての「損と得」

2011.08.17

Updated by WirelessWire News編集部 on August 17, 2011, 12:51 pm JST

Motorola Mobility
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米国で15日に発表されたグーグル(Google)によるモトローラ(Motorola Mobility)の買収に関して、OSの提供元であるグーグルがハードウェアの市場に参入することを、これまでパートナー関係を築いてきたAndroid陣営のメーカー各社がどう受け止めているか、あるいは各社にとっての「損得」はどうなのか、などについて、英米の主要な経済ニュースサイトが大きく取り扱っている。ここでは、代表的な3媒体--Wall Street Journal(WSJ.com)、Bloomberg、Financial Times(FT.com)から、関連する事柄を拾っていく。

なお、3媒体とも対象としているのは、いわゆるスマートフォンのグローバル8大メーカーのうち、アップル(Apple)、ノキア(Nokia)、リサーチ・イン・モーション(RIM)を除く5社で、これに中国のファーウェイ(Huawei Technology)とZTE、これにタブレット市場のプレーヤーであるエイサー(Acer)、レノボ(Lenovo)、アスース(Asus)、さらにはモトローラのアウトソース先であるフォクスコン(Foxconn)に言及している例などもある。

まず各媒体が共通して指摘しているのは、「Androidのエコシステムをほぼこれまで通りの形で維持していく」というグーグルのラリー・ペイジ(Larry Page)CEOの公約を、同陣営(Open Handset Appliance=OHA参加各社)が前向きに受け止めている、という点。いずれの媒体も、前日に出された関係各社幹部のコメント("Facts about Google's acquisition of Motorola")を引用もしくは下敷きにする形で「それぞれの反応」として採り上げているが、これらの前向きな反応については「グーグルがモトローラから取得した無線通信関連などの特許を、端末メーカー各社にクロスライセンスしてくれれば、各社としてもアップルやマイクロソフトに対する特許分野での戦いで大いに役に立つ」というプラスの可能性が、「(少なくともいまのところは)市場での力が比較的の弱いモトローラからの潜在的脅威」というマイナスの可能性を上回る、という見方が土台になっている。

この見方を裏付けるものとして、FT.comでは16日の株式市場の反応を紹介。それによると、グーグルによる発表後、サムスンの株価は6.1%、またHTCの株価も3.1%上昇したという。

モトローラは、お膝元の北米スマートフォンメーカー市場でこそなんとかふた桁(11%=ニールセン調べ、2011年第2四半期)をシェアを保っているだが、グローバル市場では第8位(シェア2.4%、ガートナー調べ/Bloomberg記事より) にとどまっており、そのことが今回の買収話では却ってプラスに働く、といえるかもしれない。

いっぽう、グーグルが傘下に入ったモトローラを「特別待遇」するのではないか、という疑念については、Bloombergが("Google Threatens Samsung-Led Handset Makers"と題する記事中で)「Android陣営はいまのところ、表向きこそ幸せな大家族を装っているが、現実はまったく異なるものになろう。万が一モトローラが『最恵国待遇』を得ることになれば、それに実態があろうとなかろうと、同社が有利な立場にたつ」というロドマン&レンショウ(Rodman & Renshaw)アナリストのアショク・クマー(Ashok Kumar)氏のコメントを引用。

また同記事では、「これまでパートナーの関係にあったグーグルが競争相手になることは、Android陣営のメーカー各社にとっては、悪夢のシナリオだ」とするガートナーのアナリスト、マイケル・グーテンバーグ(Michael Gartenberg)氏の見方を紹介し、「この買収でモトローラを優遇しようという考えがグーグルでは働く」(同氏)と記している。

対照的に、FT.comでは「一部の市場では、われわれは引き続きモトローラと競合関係にしていくことになるが、ただし同社がわれわれよりも強力でより大きな競争相手になったことはない」というLGのコメントを引用、さらに野村證券アナリストのアーロン・ジェン(Aaron Jeng)氏の「たとえグーグルがモトローラをひいきしたとしても、かならずしもモトローラの製品が市場で成功するとは限らない」との見方を紹介。同氏はその例として、モトローラが今年投入した「XOOM」の売れ行きが「きわめてひどい」ことを挙げている。グーグルは、タブレット向けに最適化したAndroid OS ver. 3.0(「Honeycomb」)を、他社に先駈けてモトローラに提供していた。

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さらに、メーカーごとの相対的な立場に応じて、グーグル傘下に入ったモトローラの潜在的脅威が違ってくるとの指摘もあり、たとえばWSJ.comでは「Android陣営の筆頭メーカーとなったサムスンとの間で、グーグルが長期的に緊密な提携関係を維持していくことになるいっぽうで、LGとモトローラとの競争は激しさを増すだろう」というS.H.リー(S.H. Lee)氏(Mirae Asset Securitiesのアナリスト)の見方を紹介。いっぽう、Bloombergでは、ガートナーのグーテンバーグ氏の意見として、「HTCにとっては今後数年間は厳しい時期が続くだろう。市場の成長が鈍化するなかでのシェア争いとなるからだ」と記している。

また、こうした流れを受けて、マイクロソフトの「Windows Phone OS」やHPの「WebOS」を代替選択肢として検討もしくはその比重を高めるメーカーの動きも活発化するという指摘も各媒体に共通してみられる。ただし、FT.comでは「Windows OS搭載端末をつくる余裕のあるメーカーはどこもすでに製品開発を進めており、グーグルによるモトローラの買収が各社でのWindows Mobileの導入にプラスに作用する可能性は低い」というバーンスタイン(Bernstein)アナリスト、ピエール・フェラーグ(Pierre Ferragu)氏の見方も紹介している。

なお、「グーグルがモトローラ全社を買収し、その特許を手に入れた上で、ハードウェア事業を切り離す」という可能性に関しては、FT.comがすでに世界市場で積極的な動きをはじめている中国のファーウェイならびにZTEの名前を挙げて、「グーグルがハードウェア事業売却を決定したばあい、いづれかが関心を示す可能性がある」という業界関係者のコメントを引用。また、ZTEの出した「そうした買収の計画は短期的にはないものの、長期的にはその可能性を排除することはない」とのコメントも紹介されている。また、WSJ.comでは、グーグルと中国政府との間で過去に生じた摩擦に触れ、モトローラが同社にとって数少ない有望市場である中国向けに、わざわざBaiduなど他社のサービスを組み込んだスマートフォンを販売しているといった例にも触れている。

【参照情報】
Google Deal Shakes Up Asia's Mobile Landscape - WSJ.com
Google Threatens Samsung-Led Handset Makers - Bloomberg
Google's Motorola deal a boon for Asia - FT.com
Facts about Google's acquisition of Motorola - Google
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