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RIMの業績発表と市場分析の限界(アナリストの嘆き) - Asymco

2011.09.18

Updated by on September 18, 2011, 18:18 pm JST

米国時間9月15日にリサーチ・イン・モーション(Research In Motion:RIM)の四半期決算発表があって、6-8月期の製品出荷台数について「Blackberry」スマートフォンが1060万台、タブレット端末の「PlayBook」が20万台だったことが明らかにされた。同社経営幹部の説明では、Blackberryの販売台数は1370万台と出荷台数よりかなり多かったようだが、それにくらべて前四半期に50万台を出荷していたPlayBookはかなり少なくなった印象だ。こちらの販売台数は、今四半期にはもう少し多くなるだろうが、おそらく増加分のほとんどはアジアの新しい流通チャネルを通じて販売されるもので、北米や欧州での増加はないだろう。

このBlackberryやPlaybookの出荷台数はとても少ない。ただし、それがどのくらい少ないかは、何と比較するかによって異なってくる。そこで、下のグラフにまとめたハードウェアメーカー別の出荷台数について検討してみよう。

201109181800.png
[端末メーカー別スマートフォン出荷台数の推移 / 縦軸の単位は百万台]

RIMの出荷台数は、アップル(Apple)やサムスン(Samsung)の4-6月期のそれにくらべて半分に満たない(訳者注:アップルのiPhone販売台数は2034万台、サムスンの推定出荷台数は1920万台前後)。またRIMの数字はHTCのそれにも届かない。そのため出荷台数ランキングではRIMは全体で5位に下がる可能性が高い。

また自社の過去実績との比較では、前年同期からは11%減少、前四半期からは18%の減少となる。なお同社ではここ2四半期続けて出荷台数が減っている。

いっぽう、市場シェアについては今後6週間のうちに出揃う各社の(7-9月期)データを待たなくてはならないが、市場全体が過去4四半期に平均77%のペースで拡大してきているため、このトレンドが続けばRIMの相対的なシェアはおそらく一桁台に下がるだろう。

そして、今回の発表のなかで一番ショックが大きかったのが利益率の低下。営業利益は21%から13%まで下がったようだ。RIMは最近実施した従業員のレイオフに関わる経費を特別費用として計上したが、これを除いた場合でも、営業利益率は16%にすぎない。そして、この点がもっとも心配になるところである。こうした大幅な利益率の低下は、すなわち出荷台数の減少に固定費の削減が追いついていない(もしくは、固定費の削減幅を上回るペースで出荷台数が減っている)ということを意味する。RIMには依然として、営業、管理、エンジニアリング関連の人員を雇い続ける必要があるが、こうした固定費が営業経費全体のなかに占める割合は相対的に大きくなっている(それに対して、コンポーネントの購入コストは製品の販売台数と連動する)。

金融業界のアナリストらはこの(固定費の割合増加の)影響についてよく理解しており、そのためにRIMの株価は決算発表後、大幅に下落した。

ここで一歩後ろにさがり、より大きな流れを見てみると、RIMの出荷台数については過去にはっきりとした転換点があったことがわかる。それまで右肩上がりが続いてきた出荷台数が2011年第1四半期(Q1/2011)をピークに減少に転じているのがわかるだろう。ただし、ここで興味を惹くのは、どうしてこのタイミングで減少に転じたかというその理由のほうだ。出荷台数減少の理由ははっきりしていて、競合他社のせいとすぐに説明できる。いっぽう「競合相手が現れた時点で、RIMの業績に影響が表れなかったのはなぜか」というその理由はよくわからない。初代iPhoneが出たのは何年も前(訳者注:2007年7月)のことで、Androidスマートフォンが登場してからでさえすでに何年か経っている。また、これらの競合相手の登場で、RIMと同様に影響を受けたはずのノキア(Nokia)では、RIMよりも前の時点ではっきりと影響が出始めていたこともわかっている。

この「タイミングについての読みの難しさ」とでもいうべきものが、アナリスト稼業につきものの難しさ、嘆きの原因である。つまり「将来どんなことが起こるか」についてはっきりとした正確な予想を示すことはできても、それが「いつ起こるか」には答えが出せない。明らかな原因とその結果の間にある「弾力性」(elasticity)によって、将来の予想という行為は正確さに欠ける科学もしくはまったく科学とは呼べない代物になってしまう。たとえば「ノキアの転換点は、Symbianが公の場で処刑されたことをきっかけに起こった」と後から振り返ってそう言うことはできる。だが、この予想には「そうした転換は防ぎ得たもの」との前提が含まれることになるが、実際には防ぎようがなかったことをわれわれは知っている。では、「RIMの出荷台数が増加から減少に転じた、その正確な原因はなにか?」「なぜこの転換点が、今年の春にやってきたのはなぜか?」「iPhoneやAndroidスマートフォンの販売台数が大幅に増加した2009年や2010年に、RIMの出荷台数減少が始まらなかったのはなぜか?」といっ点はどうか・・・。競合他社が台頭してきてからも、しばらくの間は、RIMは競合からの圧力とは無縁の存在と見えていた。「RIMの経営がもうすぐやばくなる」などという予想を口にすると誰でもバカに見えたものだった。ところが、ここに来てそうした予想が現実のものとなった。スティーブ・ジョブズ氏なら、「ほらね!」(boom!)と言っていたところだろう。

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脚注

RIMのデータから同社の経営実態を見抜く作業は、このところ期を追うごとに難しくなっている。公表されるデータにどうでもいい細かい事柄が混じるいっぽうで重要な情報が省略されることが増えている。今回の経営陣による発表でも、次のような点が不明のままだった。

  • 端末の平均販売価格。この点の実情を突き止めるにはたいへんな作業が必要だ。これに関してはマット・リッチマン(Matt Richman)が素晴らしい仕事の成果を公開しているが、それでもなおBlackberryの単価を手がかりにPlayBookの平均販売価格を知るにはいくらかの推理が求められる。
  • RIMの経営陣は、Blackberryについてはユーザーへの販売台数(sell-out)を詳しく説明したのに対し、PlayBookについては流通への出荷台数(sell-in)しか示していない。これはあきらかな目くらましだ。
  • 決算発表の場で焦点をあてるデータが期ごとに異なり、そのデータを使って語られるストーリーが毎回違うことから、データのなかにパターン(=トレンド)を読み取ることが不可能になっている。

こうしたやり方は、その企業に対する信頼感の喪失につながる。われわれは、RIMで実際にどんなことが起こっているかを知るのに、ますます推理を働かせなくてはならないという問題に直面している。たとえば私は、平均販売価格については、ハードウェアの売り上げを分析する際に、付帯サービスからの売上をそのなかに含めることが好ましいと考えているが、これはそのほう(ハードウェア本体+サービスをあわせた金額)がユーザーが実際に支払っている金額をよりよく表しており、またハードウェアの一部としてサービスを提供できるベンダーのほうが、扱う製品から明らかにより多くの価値を得ているとの考えがあるからだ。そして、この価値はそのベンダーが持つアドバンテージと考えられる。ノキアやアップルも製品売上のなかに付帯サービスからの収入を含んでおり(ただしアプリの売上額は除く)、そのおかげでこれらの会社については事業の実態を簡単に比較できる。

RIMのめぐらした煙幕があまりに濃いため、私は今四半期からBlackberryの実売価格を推定するのを諦め、代わりに営業収入の合計額を全販売台数で割った数字(Operating Income/Units sold)を平均販売単価として使うことにした。

(執筆:Horace Dediu / 抄訳:三国大洋)

【原文】
RIM and the lamentation of the analyst

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