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[2011年第36週]頑張るiPhone、タブレットが登場したXi、700M/900M参入希望が明らかに

2011.09.12

Updated by Naohisa Iwamoto on September 12, 2011, 14:00 pm JST

台風12号の猛烈な被害を目の当たりにしながら明けた2011年第36週。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災なさった方に心よりお見舞い申し上げます。

端末もアプリもいまだiPhone強し

そんな中、海外では「iPhone 5」の予約受付が始まるといったニュースが飛び込んできている。国内では正式な発表はまだないが、週末のソフトバンクショップではiPhone 4の写真とともに「在庫終了」と記載した看板を立てかけている光景も見かけた。iPhone 5発売へのカウントダウンは、表立つことはないまでも着々と進んでいるようだ。

201109121400-1.jpgとは言え、iPhone 4は強い。電気通信事業者協会(TCA)が発表した8月末の携帯電話・PHSの契約数を見ると、純増首位は17カ月連続のソフトバンクモバイルだった。iPhone 4はモデル末期で、「乗り換え費用を負担する」といった施策を講じているとはいえ、多勢のAndroid端末に対して1機種で立ち向かうiPhoneの魅力の強さが感じられる(関連記事:Xiが9万超の純増で累計を約30万契約まで延ばす、2011年8月末の携帯電話契約数)。

スマートフォンのアプリに関する最新の調査結果を見ても、iPhoneは強い。MM総研のマートフォンのアプリ市場と製品やキャリアーの満足度に関する調査では、スマートフォンやの有料アプリ市場は2010年度で67億8000万円と推定されている。その内訳を見ると、84.5%に当たる57億3000万円が「iOS」向けと他を圧倒した。アプリも含めたエコシステムという面では、まだまだ国内でiPhoneはAndroidの比ではないという結果だ。一方で、これだけ騒がれているスマートフォンで、有料アプリのマーケットが約70億円しかないということに驚きを隠しえない。スマートフォンやが飛躍している2011年、市場規模も急拡大していないとアプリビジネスの先行きが案じられることになりそうだ。

MM総研の調査では、スマートフォンの満足度トップはXperia arc。総合的に評価が高く、iPhoneを押さえてのトップに立った。iPhoneも決して安泰ではない世の中になりつつある(関連記事:スマホ有料アプリ市場はiOSが8割超、満足度はXperia arc--MM総研)。

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LTE、本格的に離陸へ

NTTドコモは2011年9月8日、LTEサービスの「Xi」に対応したタブレット端末を2機種発表した。「GALAXY Tab 10.1 LTE」(サムスン電子製)と「ARROWS Tab LTE」(富士通製)で、いずれもAndroid 3.2を搭載する。GALAXY Tab 10.1 LTE(SC-01D)は、10.1インチの大画面ディスプレイを搭載しながら、8.6mmと極薄のボディーを実現した。ARROWS Tab LTE(F-01D)はIPX5/IPX7相当の防水機能を備えることが最大の特徴の10.1インチタブレットで、お風呂やキッチンでも安心して使える。

201109121400-2.jpgXiは2010年12月にサービスを開始し、NTTドコモはこれまでにデータ通信専用端末を提供してきた。2011年度後半からはタブレット、スマートフォンなどの端末も提供するとしてきたが、その第1弾が今回のタブレット端末2機種となる。「高速、大容量、低遅延のXiの魅力を存分に引き出せる端末で、年間20万台を目標に販売していきたい」(NTTドコモの山田隆持社長)という(関連記事:NTTドコモ、Xi対応のタブレット「GALAXY Tab 10.1 LTE」「ARROWS Tab LTE」を発表)。

同時にNTTドコモは、Xiに新料金プランを追加するとともに、提供条件を変更すると発表した。2012年4月末までのキャンペーン期間ならば、月額4410円で2年契約の定額型を利用できる。また、提供条件も変更になった。これまで、月間5GB以上の利用があると、2GBごとに2625円が追加される設定だった。このしきい値を7GBに引き上げ、さらに標準では月間7GBを超える利用があったユーザーに対しては通信速度を128kbpsに制限するように改めた。

201109121400-3.jpgこの修正には大きな意味がある。これまで青天井だったXi(=LTE)の料金が、速度は低く制限されるとはいえ「定額」で利用できるようになったのだ。LTEを始めとした高速大容量な無線通信方式では、どのような料金体系が事業者にもユーザーにも共通のメリットがあるのか、まだ模索している段階だ。実際にこのXiの料金体系が適用されるのは2012年10月以降であり評価はそれから始まるが、この料金パターンがユーザーに受け入れられるのか注目したい(関連記事:Xi料金改訂、定額上限は5GBから7GBに、7GB超は従量制か128kbps制限から選択)。

こうした施策によりLTEは本格始動期に入ったといえるが、前述したTCAの統計を見るとすでにデータ通信サービスの1つの柱になりつつあるようだ。Xiは、8月に9万を超える純増を記録し、累計契約数を約30万契約まで引き上げた。データ通信端末が中心のイー・アクセスが7万5000、ブロードバンドワイヤレスアクセス(BWA)のUQコミュニケーションズが6万200の純増であり、Xiはデータ通信端末だけでそれらを超える純増数を得た。

タブレット端末の市場投入、今後予定されているスマートフォンの発表と、Xiには追い風が吹き続く。エリアの拡大という問題はあるものの、3Gへのフォールバックが可能であり通信できなくなるわけではない。伸び続けるXiの動向からしばらくは目が離せない(関連記事:Xiが9万超の純増で累計を約30万契約まで延ばす、2011年8月末の携帯電話契約数)。

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新規周波数帯への参入希望は各社LTE

201109121400-4.jpgNTTドコモに限らず、周波数利用効率が高いLTEへの期待は大きい。総務省が公表した700M/900MHz帯の移動通信システムについての参入希望調査の結果でも、参入を希望するすべての事業者がLTEを名指しで挙げている。希望を提出したのはイー・アクセス、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの4社。導入を希望する技術と時期は、各社ともLTEを想定しているが、周波数帯や導入時期の希望はまちまち。新しい周波数帯を何がなんでも手に入れたい事業者間の確執も透けて見える(関連記事:700M/900MHz帯に携帯4社が名乗り、総務省が参入希望を公表)。

話しは変わって、現行の3Gにおけるスピードテストの結果も発表になっている。MMD研究所によるスマートフォンの3G回線の速度実測調査の結果がそれで、首都圏でも地方主要都市でも、ともにau(KDDI)が最もスピードが速いという結果が得られたという。auは調査したほとんどの地点で上り/下りともに3社の端末の最高値を記録した。最大7.2MbpsのNTTドコモやソフトバンクモバイルの端末と、最大9.1Mbpsのauの端末という違いもあり一概には優劣は付けられないが、現時点でこういった結果が出たことは記憶にとどめておきたい(関連記事:3Gは首都圏でも地方主要都市でもauが最速、MMD研究所が調査)。

事業者の動向としては、ソフトバンクモバイルが旧ボーダフォンの端末5機種を利用しているユーザーに当該の端末を無償で交換するという発表をしている。2011年11月以降に予定している音声ネットワークの最適化に伴うものという。対象となるのは「Vodafone 902SH」「同 802SH」(シャープ製)、「同 802N」「同 703N」(NEC製)、「同 802SE」(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製)の5機種である(関連記事:ソフトバンク、旧ボーダフォン端末の一部で交換措置)。

子ども向け施策、Androidのバックアップなど

201109121400-5.jpgNTTドコモは、小学生低学年までの子どもを対象とした「キッズケータイ HW-02C」の発売に合わせて、基本料金が最長7カ月無料になるキャンペーンを提供する。「キッズ割」の名称で2011年9月28日〜2012年1月31日の期間限定で受け付ける。キッズケータイの発売に合わせたキャンペーンだが、FOMA全機種が対象となるので心配は無用(関連記事:NTTドコモ、7カ月基本料無料になるキッズ向けキャンペーン)。

時を前後して、KDDIは青少年が安全にスマートフォンを利用できることを目指したアプリ「安心アプリ制限」の提供を開始した。コンテンツのフィルタリングとは異なり、アプリの利用などスマートフォン自体の機能を保護者が制限できるようにする(関連記事:KDDI、子どものスマートフォン利用に向けた「安心アプリ制限」を提供)。

最後に、キングソフトの面白いソフトを紹介する。Android端末に保存したファイルやデータをパソコンでバックアップできるソフト「KINGSOFT Data Manager」である。Android端末をサーバーに見立てて、Wi-Fi(無線LAN)を経由してパソコンにデータをバックアップできる。価格は1980円。キングソフトが提供するオンラインストレージ「KDrive」と連携させてオンラインストレージ側にバックアップすれば、パソコンの故障などにも影響されない。アプリで手軽に使えるので、いざというときの安心のために1ついかがだろうか(関連記事:キングソフト、Android端末のデータをWi-Fi経由でPCにバックアップするソフト)。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。