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にわかに現実味を帯びてきた「アップルのテレビ市場本格参入」説(編集担当メモ)

2011.10.25

Updated by WirelessWire News編集部 on October 25, 2011, 12:44 pm JST

以前から一部のアナリストなどが主張していた「アップル(Apple)がテレビ市場への本格参入を検討している」という説が、ここに来てにわかに現実味を帯びてきているようだ。

アップルでは2006年秋から「Apple TV」というテレビモニターに接続して使う端末を販売してきている。ただし、この製品はいまだに同社のなかで「ホビー」という位置付けにとどまっている。この理由については、故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏が生前、米国などの市場でCATV用のセットトップボックス(STB)がサービスにバンドルされる形で提供されていることなどをあげ、まだ「儲かる仕組みが見つけ出せない」ためなどと説明していたことがあった。

しかし、たとえばアップル・ウォッチャーとして知られるパイパー・ジャフレイ(Piper Jaffray)アナリストのジーン・マンスター(Gene Munster)氏は、アップルがテレビ市場への参入を目論んでいるとの自説を2009年以来主張し続けて来ている。

また、8月下旬にジョブズ氏のCEO退任が発表された直後には、Wall Street Journal(WSJ)が、ジョブズ氏の肝臓移植手術をスクープした岩谷ゆかり(Yukari Iwatani Kane)氏らによる署名記事のなかで、ティム・クック(Tim Cook)氏率いる新体制の課題や見通しに触れながら、同社が新たな形の動画配信サービスの開発に取り組んでいると伝えたこともあった。

さて。今回の「騒動」の発端は、米国時間24日に発売されたスティーブ・ジョブズ氏公認伝記本で、そのなかに生前のジョブズ氏が著者のウォルター・アイザクソン(Walter Isaacson)氏に対して、「コンピューターや携帯音楽プレーヤー、携帯電話の分野でやったのと同じことを、テレビの分野でもやってみたいと強く望んでいた」と語っていたという記述があり、さらに「徹底的に使いやすい『統合型のテレビ』を創りたい」「(コンテンツが)『iCloud』を介してさまざまな端末で同期されるものになる。ユーザーはDVDやケーブルテレビ(の番組)を観るのに、複雑なリモコン操作で煩わされる必要がなくなる」「(そうした製品が実現するための)秘密の鍵をついに見つけた」("I finally cracked it.")というジョブズ氏の発言も記されている。

この記述にさっそく飛びついたのが、Washington Postなど一部のメディアで、この書籍を事前に入手した同紙では22日に「Jobs's final plan: an 'integrated' Apple TV」という記事を掲載。さらに週明けには、ティコンデロガ・セキュリティーズ(Ticonderoga Securities)アナリストのブライアン・ホワイト(Brian White)氏や、前述のジーン・マンスター氏などのアナリストが顧客向けのリサーチノートのなかで、アジアの受託メーカーではすでにアップル製テレビのプロトタイプ製作が進んでいる可能性がある、と述べているという。

さらに、Bloombergは25日付の記事で、iTunesやiPodの開発に携わった実績を持つジェフ・ロビンズ(Jeff Robbin)というエンジニアが責任者となって、アップルのテレビ開発プロジェクトを進めていると報じた。この記事によれば、ロビンズ氏はもともと、iTuneソフトウェアのベースとなった「SoundJam」の開発者で、TIME誌から取材依頼があった際には、ジョブズ氏が他社による引き抜きをおそれて「名前(姓字)を出さない」という条件を付けたほどの人物という。またジョブズ氏を説得して、Window版のiTuneソフトウェアをリリースさせたことも、ロビンズ氏の功績として挙げられている。

なお、このBloomberg記事ではジーン・マンスター氏の見方にも触れているが、それによる開発中とされる製品のリリース時期は2012年後半から2013年になる見通しという。また同氏のレポートをより詳しく採り上げたFortuneでは、アップルが「iPhone 4S」に搭載したパーソナルアシスタント機能「Siri」をこのテレビに盛り込む可能性があるとのマンスター氏の予想のほか、次のような具体的な事柄も記している。

  • アップルが1月11日にアジアで行ったミーティング(の結果)にもとづいて、液晶ディスプレイの製造施設(工場建設)への投資を進めようとしている。この工場から供給されるディスプレイのサイズは3.5インチ〜50インチのものになる可能性がある。
  • 9月11日にパイパー・ジャフレイが聴き取りを行ったあるアジアの部品サプライヤー関係者は、アップル製テレビのプロトタイプ製作が進められていることを唆した。
  • アップルがテレビ(のUIなど)に関連する複数の特許をすでに取得している

【参照情報】
Apple TV Effort Said to Be Led By ITunes Creator - Bloomberg
Piper Jaffray: Apple is already building prototype TV sets - Fortune
Steve Jobs Believed that Apple Finally Cracked the Smart-TV Mystery - Patently Apple
Apple television with iOS, Siri & FaceTime seen as $100B opportunity - Apple Insider
Jobs's final plan: an 'integrated' Apple TV -
Successor Faces Tough Job at Apple - WSJ
アップル、クラウドベースの映画配信サービスを準備(LATimes報道)

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