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「iPodのようなサーモスタット」- 話題の新製品「Nest」とは(編集担当メモ)

2011.10.26

Updated by WirelessWire News編集部 on October 26, 2011, 11:42 am JST

かつて故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏率いるアップル(Apple)は、パソコン(Mac)、携帯音楽プレーヤー(iPod)、携帯電話端末(iPhone)の各分野にユーザーフレンドリーな製品を持ち込み、それぞれの世界の様相を一変させた。そしていま、これらと同様の大きな変化をホームオートメーションの世界に持ち込もうとしている米ベンチャー企業ネスト・ラボ(Nest Labs)に米国のメディアから大きな注目が集まっている。

Nest | The Learning Thermostat
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米国時間25日には、ネスト・ラボがこれまで極秘に開発を続けていた製品をついに発表したとして、New York TimesやReuters、それにTechCrunchなどがこの話題を大きく採り上げている。なかでも、著名なIT系ライターのスティーブン・レビィー(Steven Levy)氏がWiredに寄稿した記事は、事前のインタビューなど周到な準備を経てまとめられたものと思われ、非常に詳しい(ボリュームもたっぷりの)記事となっている。今回はこのWired記事を中心に、複数の媒体記事からピックアップした気になる点をいくつか紹介してみたい。

まず、ネスト・ラボの共同創業者で現在CEOを務めるトニー・ファデル(Tony Fadell)氏は、2001年から2009年までアップルに在籍し、iPodの開発チーム責任者として知られた人物。このファデル氏が、「旧態依然としたサーモスタット(温度調節装置)を、直接消費者にアピールできるようなものに変えられたら・・・」との着想を得て2010年5月に、元同僚のマット・ロジャース(Matt Rogers)氏 (iPod、iPhone、iTunesなどのソフトウェア開発リーダー)氏と同社を立ち上げたという。

ネスト・ラボが発表した製品「Nest Learning Thermostat」は、ダイヤルのような形の本体表面に温度などを表示するカラーディスプレイだけがついたシンプルなもの。だが、このなかには人工知能(AI)を応用したアルゴリズムが組み込まれ、ユーザーの行動パターンを学習して、部屋の空調(温度設定など)を自動的に制御するほか、Wi-Fi経由でスマートフォンやタブレット、PCからもこれらの設定をコントロールできるようになっているという。さらに同製品のセンサーから集められたデータを利用して、ユーザーがエネルギー消費量を把握するためのウェブサイトも提供されるという。

この「Nest Learning Thermostat」は249ドルと、ハネウェル(Honeywell)や3Mなどから出ている従来型のサーモスタットに比べて最大で5倍も高価だが、それでも光熱費を30%程度節約できることから、ユーザーは「1〜2年で費用を回収できる」とファデル氏は説明している。

ファデル氏はサーモスタットの市場規模については、米国だけでも毎年約1000万台が一般住宅向けに販売されており、この数は「冷蔵庫、食器洗浄機、乾燥機よりも多く、自転車とほぼ同程度」と説明。ちなみに同氏は、ビジネスプランの策定にあたり、商業施設も含めた累計の設置台数を約2億5000万台とはじき出したという。

同氏がそもそもサーモスタットを手がけようと思ったきっかけは、自分たちのために省エネルギー型住宅を建てようとしていた時のことだったという。建築好き同氏はディテールにもこだわり、地熱を利用した空調設備まで設置することにしたが、いざサーモスタットを選ぶという段になって、旧態依然としたデザインや機能しかない製品しか見つからず愕然としたという。同氏はNew York Timesに対して、「既存のサーモスタットはどれも醜く、エネルギーを無駄遣いするもので、この分野では何十年もほんものの技術革新といえるものがなかった」と説明している。

同氏は、大半のケースでは選択が施工業者などの手に委ねられてきたサーモスタットの位置付けを、自分のよく知るコンシューマ・エレクトロニクス製品に変えることができれば、家庭でのエネルギーの節約に役立つほか、地球温暖化対策にもつながると考えたという。

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ネスト・ラボにはすでに有力な支援者や強力な人材が集まっている。

同社の出資者リストには、老舗VCのクライナー・パーキンス(Kleiner Perkins)やグーグルのベンチャーファンド(Google Ventures)、さらにアル・ゴア元副大統領が支援するファンド(Generation Investment Management)などが名を連ねており、調達額は明らかにされていないがWired記事では推定5000万ドル程度がすでに集まっているとしている。

クライナー・パーキンスのランディ・コミサー(Randy Komisar)氏は、「インターネットはこれまで、人と人とをつなぎ合わせるものとして発展してきた。だが、次のステップはデバイス同士の接続になるというのがわれわれの考えで、Nestは家庭内にあるさまざまな機器のネット接続を促すものとなり得る製品」とコメントしている。

いっぽう、核となるメンバーについても、共同創業者の2人のほかに、アップルでiPhone開発のプログラムマネージャーを務めたシゲ・ホンジョウ(Shige Honjo)氏、ゼネラル・マジック(General Magic)でファデル氏の同僚だったデビッド・スロー(David Sloo)氏、そして、AI部分を担当したヨキ・マツオカ(Yoky Matsuoka)氏という女性研究者などが結集。なお、マツオカ氏はMIT出身のコンピュータサイエンス研究者でワシントン大学教授を務め、2007年には神経科学とロボット工学の研究でマッカーサー財団(MacArthur Foundation)からフェローに選ばれた経歴の持ち主。また、グーグルが極秘で先端分野の研究を進めているとされる「グーグルX」(Google X)のプロジェクトにも携わっていたという。

なお前述のWired記事には、マツオカ氏が「Nest」のアルゴリズムに変更・修正を加えていく際に、ガソリンや電気の消費量をリアルタイムでドライバーにフィードバックするトヨタ・プリウスのダッシュボード(ならびにインタラクション)を参考にしたとも記されている。

ネスト・ラボでは今回発表した製品を同社ウェブサイトのほか、大手量販店のベストバイ(Best Buy)経由でも販売していくという。同製品の設置については基本的にDIY(そのためのインストラクション動画が用意される)だが、1個につき119ドル(2個めからは25ドル)で業者に委託することもできるという。

「ダイソン(Dyson)が掃除機を洒落た(sexy)なものに変えたように、われわれはサーモスタットのようなデバイスを、人が欲しがる家電製品にしたい」と語るファデル氏。今月はじめにはBusinessweekが、「かつてiOSの開発競争で争ったこともある同OS責任者のスコット・フォーストル(Scott Forstall)氏との不仲が原因で、アップルを離れることになった」とも報じられていた。Nestが公約通りの成功をもたらすことになれば、この退社という禍(わざわい)が福へと転じることになるだろう。

【参照情報】
Nest Labs

Ex-Apple Leaders Push the Humble Thermostat Into the Digital Age - NYTimes
iPod godfather builds new Nest in Silicon Valley - Reuters
Brave New Thermostat: How the iPod's Creator Is Making Home Heating Sexy - Wired
iPod Godfather Tony Fadell Finally Reveals His New Product: A Thermostat. No, Really. - TechCrunch

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