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漏洩同軸ケーブル

2011.12.22

Updated by Naohisa Iwamoto on December 22, 2011, 00:00 am JST

同軸ケーブルは、信号をケーブルの外に漏らさず、逆に外界のノイズから信号を守りながら伝送する特性を持っている。この特性を生かして、有線で電気信号を伝えるさまざまな用途に用いられている。身近なところでは、テレビのアンテナと受像機を結ぶケーブルが同軸ケーブルである。

「漏洩同軸ケーブル(Leaky Coaxial Cable、LCX)」は文字通り信号が同軸ケーブルから漏洩するように作られたケーブルだ。信号の電力は漏れて減衰し、外部からの信号も飛び込んできてしまう。これでは確実に信号を端から端へと伝送する目的には適さない。しかし、漏洩同軸ケーブルを使うと、漏れた信号をケーブルの周囲に電波として輻射することができる。すなわち、アンテナになる。信号線でありながら、アンテナの役割も果たすというわけだ。

同軸ケーブルは、導線の内部導体の周りに円筒形の絶縁体を配し、さらに外部導体と被覆で巻いた同心円型の構造を採る。漏洩同軸ケーブルは、このうち外部導体に細長い穴(スロット)を周期的に設けたものである。このスロットから内部を通る電波の一部が漏れ、外部に輻射する。

輻射した電波は漏洩同軸ケーブルの周囲に電界を発生させ、外部の機器との通信が可能になる。発生する電界はケーブルの周囲に限られるため、道路やトンネル、鉄道線路、地下道といった細長い場所に通信エリアを作るような場合に向いている。

こうした特性を生かし、列車無線などの閉じたシステムで使われている。一般利用者が使える例としては、東海旅客鉄道(JR東海)の東海道新幹線が線路に沿った漏洩同軸ケーブルと新幹線車両のアンテナとの間でデータをやり取りし、無線LANサービスを提供している。このほかに、トンネル内での携帯電話サービスの提供など多方面での利用が広がっている。

2012年には、東京の地下鉄で携帯電話サービスが使えるようになる見通しだ。東京メトロと東京都交通局が運営する都営地下鉄では、2012年末までに全路線の列車内で携帯電話の利用を可能にする。この際に、アンテナを設置したエリア構築と組み合わせて、漏洩同軸ケーブルを利用する。

携帯電話の電波は、トンネルや地下道などには届きにくい。ライフラインの重要な一角を担うようになった携帯電話のエリアを拡大するために、漏洩同軸ケーブルの果たす役割は今後さらに拡大すると考えられる。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。