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[Deloitte Mobile Survey #4(最終回)]海外旅行中の携帯電話の利用状況〜「旅行者」をターゲットにした新ビジネスの可能性

2012.02.16

Updated by WirelessWire News編集部 on February 16, 2012, 16:30 pm JST

前回は、15ヶ国の携帯電話広告に関する受け入れ傾向について、全体傾向と広告の内容や手法の面から報告をしたが、多くの設問で中国、インド、南アフリカといった新興国の代表国が上位を占める結果となった。

最終回となる今回は、海外旅行中における携帯電話の利用状況に関し、15ヶ国のユーザー動向を追ってみたい。

1. 海外旅行に出かけた人の現状

海外旅行中における携帯電話の利用状況を明らかにするに際し、過去1年以内に、海外旅行に出かけた人の割合を確認したい。15ヶ国を比較すると、ヨーロッパの国々が上位6ヶ国を占めた(図1参照)。次いで、ブラジル、インド、中国といった新興国の代表国が続く。ヨーロッパ各国は、地理的に隣接し、鉄道での行き来も容易ということを考えると、海外旅行に出かけた人の割合が高くなることは理解が出来る一方で、ブラジル、インド、中国の3ヶ国の回答者が、韓国、米国、日本といった先進国の回答者を越える割合を示していることに注目したい。

▼図1:過去1年以内に海外旅行に行きましたか? ※画像をクリックして拡大
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2. 海外旅行中の携帯電話の持参状況、通話使用状況

次いで、海外旅行中の携帯電話の持参状況、および通話での使用状況について確認したところ、中国、南アフリカ、インドの3ヶ国の回答者の90%以上が海外旅行中に携帯電話を持参し、かつ海外旅行中の通話利用が他国と比較し、相対的に多いことが分かった(図2参照)。日本は、海外旅行時に携帯電話を持参する割合、海外旅行時の通話の利用割合ともに、相対的に低い値を示している。

無論、その背景には、ローミング可能な範囲/設定、通話料金の高さ、海外旅行時の通話使用に関する認知度の低さといった理由があることが考えられるのではないか。とは言え、見方を変えると、他国と比較し、相対的に低い値を示しているということは、潜在的な通信/サービスに関し、機会ロスが生じていると考えることもできる。

▼図2:海外旅行に携帯電話を持参しますか? 旅行時に通話利用しますか? ※画像をクリックして拡大
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3. 海外旅行中におけるSMS利用状況

次に、海外旅行中、1日に1回以上のSMSを利用するかという質問を行ったところ、中国(1位)、南アフリカ(2位)の2ヶ国の回答者の80%以上が「利用する」と回答した(図3参照)。SMSは音声通話と比べ料金が安いことから、新興国を中心に利用がされているが、海外旅行中においても積極的に使われていることが明らかになった。

▼図3:海外旅行中、1日に1回以上SMSを利用しますか? ※画像をクリックして拡大
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4. 海外旅行中におけるフォト・ビデオメッセージ利用状況

次に、海外旅行中、1日に1回以上のフォト・ビデオメッセージを利用するかという質問を行ったところ、1位の中国では50%超の回答者が利用するとの回答を行い、2位の米国の30%超と比べ相対的に大きな差をつけた。
海外旅行中におけるフォト・ビデオメッセージの利用動向は、自国内におけるフォト・ビデオメッセージの利用動向と同様に、中国が週1回以上の利用割合が最も高く、他国を引き離し1位であった([Deloitte Mobile Survey #2]関連記事:携帯電話インターネット利用動向〜モバイルインターネットでも新興国の「アーリーアダプター」の動向を追え!)。これは、国内、国外での利用に関わらず、従来、慣れ親しんだ方法でのコミュニケーションが好まれることを示すと考えられる。

▼図4:海外旅行中、1日に1回以上フォト・ビデオメッセージを利用しますか? ※画像をクリックして拡大
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5. 海外旅行中におけるモバイルインターネット利用状況

次に、海外旅行中、1日に1回以上モバイルインターネットを利用するかという質問を行ったところ、中国(1位)、南アフリカ(2位)、インド(3位)、ブラジル(4位)の新興国が上位となった(図5参照)。この4ヶ国は、先進国を上回っており、回答者がインターネットアクセス可能な一定以上の所得階層が中心と想定されるとは言え、海外であっても、活発にモバイルインターネットを活用する旅行者の姿が想像される。ビジネス機会を捉えるという目線では、こうした積極的な回答者の多い国の人々をターゲットに考えられるのではないだろうか。

海外旅行中を想定したサービスを考える際には、地図情報との連携が重要と考えられる。筆者も、海外出張時には、頻繁に地図を用い、居場所や道順、店舗の確認を行う。こうした不慣れな土地でのナビゲーション、店舗やロケーションの検索、地域の口コミ情報などが信頼できる情報として、母国語で提供されることが有用なのではないだろうか。

▼図5:海外旅行中、1日に1回以上モバイルインターネットを利用しますか? ※画像をクリックして拡大
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6. 海外旅行中におけるEメール利用状況

次に、海外旅行中、Eメールを利用するかという質問を行ったところ、中国(1位)、日本(2位)の2ヶ国の回答者がおおよそ50%以上利用するとの回答をした(図6参照)。図2で明らかのように、日本は他の国との比較においては相対的に海外旅行時における持参率が低いものの、そうした中でEメールを利用すると回答したユーザーの割合が高いことは興味深い。

これは、図4にて、中国がフォト・ビデオメッセージを利用すると回答したユーザーの割合が他国と比較し相対的に高いことと同様にユーザーの利用習慣によるものではないだろうか。日本では、テキストメッセージではSMSと比べEメールが一般的なことが理由と考えられる。新たなサービスの開発においてはユーザーの利用習慣を切り口とすることが重要なのかもしれない。

▼図6:海外旅行中、Eメールを利用しますか? ※画像をクリックして拡大
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7. 第四回の結論〜「日本に来る」新興国ユーザーが生む新たなビジネスチャンス

海外旅行中の携帯電話の利用について調査を行ったが、今回もまた多くの領域で中国、南アフリカ、インドといった新興国の代表国が上位を占める結果となった。これまでの調査結果の中で、積極的に携帯電話を活用するこれらの国の回答者の姿が明らかになっていたが、それらの国々では、国外にあっても、国内での利用と同様に積極的に携帯電話を活用するのである。

従来、旅行者を捉えるというビジネス機会は、国や言語の違いが壁になり、なかなか実現されないことが多かったのではないだろうか。実際に日本の通信キャリアや端末ベンダーがビジネス機会を検討する場合、日本から出て行く旅行者をターゲットにすると同様に、、日本に来る旅行者をターゲットにする発想があってもいいのではないだろうか。。

海外旅行を機軸としたビジネス機会という観点で従来抜け落ちがちな「日本に来る旅行者」をターゲットにした取り組みとしては、たとえば、九州といった地域の単位で、中国、台湾、韓国のような比較的近距離からの海外旅行者を、地域内で連携し呼び込み、地域内で回遊し、リピーターとなってもらうような、民間と自治体が連携する取り組みが望まれるのではないだろうか。

そうした発想で考えると、例えば、メディカルツアーの延長として、定期健康診断のない国をターゲットとして、地域内での定期健康診断と温泉などの地域観光と組み合わせることでリピーターを作るような取り組みなどが考えられる。そのインフラとして、旅行者の検診データや行動データの蓄積・分析、旅行者との接点/ウィンドウとなる端末機器やサービスインフラとしてのリアルとバーチャルの双方でのナビゲーションや言語への対応も求められる。

こうした発想による、旅行者をターゲットとするビジネスでは、従来の通話やインターネットといったもので対応可能なサービス以外からの収益の取り込みが必要となってくる。そのためには、海外事業者や異業種との連携が重要になってくるのではないだろうか。

8. Deloitte Mobile Surveyについて

Deloitteでは2011年に、世界中で急速な普及を見せるモバイルブロードバンド、スマートフォンの最新状況を把握すべく15ヶ国比較という他に類例のない調査を行った。そこで明らかになったことは、新興国といわれる国々の回答者が各種の利用シーンにおいて、先進国のユーザーと同等以上に積極的に活用する実態であった。

無論、今回の調査結果は一時点でのものにすぎないが、日本の携帯電話端末メーカ、サービス/コンテンツプロバイダ、モバイルキャリアなどによる新たな海外進出に際して、今回の調査結果が、何らかの示唆になれば幸いである。

デロイト「世界15カ国の携帯電話利用状況」調査について

○調査の目的
世界15カ国の携帯電話利用状況を国際比較に基づいて把握するとともに、今後の利用状況予測に関する情報を提供する。

○調査概要

  • 対象国(15カ国):UK、フランス、ドイツ、スペイン、オランダ、ノルウェー、ポーランド、トルコ、日本、韓国、中国、インド、US、ブラジル、南アフリカ
  • 調査方法:各国公用語によるオンラインアンケート(※)
  • 調査期間:2011年1月〜2月
  • 回答者数:30,454人

※オンライン調査であるため、トルコ、中国、インド、ブラジル、南アフリカについては、サンプルが都市部居住の富裕層に偏っていることに留意する必要がある。その他10カ国については、代表性があるサンプルであると考えられる。

 
文・清水 剛志(デロイトトーマツコンサルティング株式会社)

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