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タブレットパソコンを操作する女性の手

データから導き出す地域課題―和歌山県が目指す「個人の経験や勘」に頼らない活性化

2018.06.25

Updated by 創生する未来 on June 25, 2018, 17:32 pm JST

タブレットPCを眺める女性の手

個人の経験や勘に頼らない、データに基づいた施策を

「和歌山から日本全国へ。」をスローガンに、地域活性化に貢献を――。

和歌山県は2018年4月、和歌山市に「統計データ利活用センター」を開設したことを発表した。総務省と独立行政法人統計センターと共同で進めた取り組みだ。

同県では、総務省の統計局・独立行施法人統計センターと連携して、データの活用や統計的思考の重要性を全国に発信してきた。今回の拠点設置により、行政課題に関する研究やデータサイエンス人材の育成、民間企業に対するデータ活用を推進するという。

データの活用には、RESAS(地域経済分析システム)を用いる。RESASでは地方自治体の産業構造や人口動態、人の流れなどの情報が得ることができる。同県では、RESASから企業の取引情報などのデータを分析することにより、それぞれの企業に対して販路開拓や新商品開発、新技術開発などの効果的な支援の提案を進めていく。

このようにデータを有効的に活用できれば、企業の販路開拓や行政の政策立案の面で「個人の経験や勘」に頼らない、データに基づいた施策が行われるメリットがある。

▼オンサイト施設でのデモンストレーションの様子 出典:統計データ利活用センター
オンサイト施設でのデモンストレーションを行う男性と液晶画面

RESASの活用事例の一つとして、岩手県花巻市を取り上げる。

経済産業省と内閣官房が発表した「RESAS利活用事例集2017年」によると、花巻温泉郷で有名な花巻市には、年間200万人の観光客が訪れている。しかし、RESASを用いてデータ分析を行ったところ、花巻市内において観光客の滞在時間が短いことが浮き彫りになった。温泉だけを目的とし、同市内にある他の観光地には足を運んでいなかったのだ。

そこで、花巻市は日中は市内観光地を巡り、温泉に宿泊してもらう観光ルートの提案が効果的と考えた。さらに、滞在時間を長くする施策として農業体験やラフティング、遊園プールといったアクティビティ事業の創出や強化に取り組もうとしている。

日本のデータ利活用拠点に向けた先進的な取り組み

和歌山県は2016年9月、同県が日本のデータ利活用の拠点になることを目指して、取り組み方針や施策をまとめた「和歌山県データ利活用推進プラン」を策定している。

このプランには今回の拠点構築を含めて、さまざまな取り組みを実施していくことが記されている。たとえばデータ利活用の重要性を啓発するため、県職員を対象にデータサイエンス人材の育成に向けたセミナーの開催をすることだ。ICTを活用したWEB型研修にも力を入れる。こうしたセミナーや研修を通じて、正しいデータの利活用方法、分析などエビデンスにもとづいた問題解決プロセスを習得することを目的にしているという。

他にも、同県のデータ活用の成果を広く全国に発信し、推進していくため、「データ利活用アドバイザリーボード」を設置する。アドバイザリーボードとは、外部の有識者や専門家から意見をもらう委員会のことである。データ利活用アドバイザリーボードでは専門家や研究者の方から助言や協力をいただき、データの活用を促進していく。

また、同県はNECとAI(人工知能)を活用し、SNS上にある観光産業にまつわる発言を分析し、観光産業に活かせるかの研究を進めている。NECが2018年2月に発表したプレスリリースによると、SNSからの情報と統計データを組み合わせることで、高度なデータ分析が可能とのこと。新たな観光ルートの提案など観光産業の強化につなげるのが狙いだ。

▼和歌山県とNECは2018年4月、包括連携協定を結んだ 出典:NEC
包括連携協定を結ぶ和歌山県とNEC

このように同県は「和歌山から日本全国へ。」を実現するため、データの活用を積極的に推進していくことで、データを根拠にした地域課題解決に取り組んでいく。

(執筆:高木健太)

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