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本稿は、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)のインターネットの最新の技術動向・セキュリティ情報を紹介する技術レポート「Internet Infrastructure Review vol.15(2012年5月22日)」に掲載された「インターネット計測とビッグデータ」の一部を抜粋・編集して掲載したものです。脚注などを含む全文はこちらでお読み下さい。なお、図版番号については原文に準拠しています。(編集部)

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(cc) Image by Marc Smith

インターネット計測

インターネットは常に変化を続けるオープンシステムです。自律分散型のインターネットには、中心もなければ代表点もなく、測る場所や時間によって違う姿が観測されます。

このようにインターネットを把握することは難しいのですが、だからこそその実態を把握しようと、インターネット計測と呼ばれる様々な取り組みがされてきています。インターネット計測としては、トラフィックの量やその内訳の計測、ネットワークの繋がり方を探るトポロジ計測などが代表的です。これには、このレポートで毎回報告している電子メールのSPAMの割合やウィルス感染、セキュリティ攻撃の観測なども含まれます。最近では、ピアツーピア型のシステムの観測やソーシャルネットワークの使われ方、そこでの人と人の繋がり方の観測など、幅広いオンラインサービスの計測があります。

ここでは、インターネットとインターネット上のサービス、あるいはその利用に関する計測とその応用を広くインターネット計測と呼びます。利用者に身近なSPAM判定、検索ランキング、オンラインお勧めシステムなども、インターネット計測技術の応用だと言えます。

これらのインターネット計測に共通するのは、大量かつ不完全なデータから有用な情報を見つけ出そうというアプローチです。これは、従来の工学的な計測とは対照的です。従来型の計測では、計測の精度を向上して正確なデータを得ようとしますが、インターネット計測では、正確なデータがないことを前提に、曖昧な情報を突き合わせることで実態を推測せざるを得ません。

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ビッグデータ

最近「ビッグデータ」という言葉をいろいろなところで見かけるようになりました。ビッグデータは、大量の非定型データから隠れた価値のある情報を引き出す技術の総称として使われています。膨大なデータを収集し分析することで、新たなビジネスモデルの構築や経営革新などのイノベーションに繋げるという考えです。

その背景には、この数年、特にクラウドサービスの登場で、ビッグデータを導入するために必要な環境が整い、誰でも使える環境ができてきたことが挙げられます。現状ビッグデータビジネスとして、利用者のオンライン行動履歴のマーケティング利用が注目されていますが、今後は様々な展開が期待されています。

ビッグデータを技術的に見れば、まさにインターネット計測が取り組んできた技術です。オンラインデータ収集システムやデータの保存や共有のためのシステムの構築、膨大で断片的なデータから情報を抽出するための統計処理技術の工学応用などは、インターネットができた時から行われています。

インターネット自体は工学的に設計されたコンポーネントから構成されますが、その挙動は無数の要素の相互作用の結果、全体としてみれば個別要素の総和以上の独立な振舞いをみせる複雑系の典型と言えます。また、利用者の行動を反映するので、社会的、経済的、政策的な影響も受けます。インターネットの計測は工学的であると同時に、自然科学や社会科学的な側面も持っています。

ビッグデータの収集・保存を取り巻く状況の変化と、情報技術の進化による思考プロセスの本質的な変化については、本編をご覧下さい。 全文:Internet Infrastructure Review vol.15「インターネット計測とビッグデータ」

 
文・長 健二朗(株式会社IIJイノベーションインスティテュート 技術研究所 所長)

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