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CTIA2012レポート(1) CTIAを取り巻く状況と今回の見どころ

2012.05.08

Updated by Michi Kaifu on May 8, 2012, 08:58 am UTC

米国時間で明日5月8日から10日にかけ、ニューオーリンズにて米国最大の携帯電話展示会CTIA 2012が開催される。CTIAは米国のキャリアとベンダーを中心とする携帯電話業界団体で、毎年春と秋に展示会を開催しており、データ・ITサービスに限定した秋の展示会に対し、春はより大規模な全般的な展示会となる。まずは、今年のCTIAを取り巻く状況と見どころ予測を簡単にまとめてみよう。

1.展示会の新しいフォーマットと位置づけ

私は1990年代後半からずっとCTIAを見てきている。時代の流れの中で、ここ数年のCTIA展示会の凋落は激しく、寂しい思いをしてきた。

アナログ時代からデジタル移行時にかけて、携帯業界では米国が世界の中心であり、まだキャリアの数も非常に多かった。このため、ベンダーがキャリアにインフラ設備や端末を売り込み、キャリア同士がローミング協定の話し合いをする、実質的な見本市の活気があった。ネットバブルからしばらくの間は、華やかな動画系コンテンツやデジタル・ホームなどの未来コンセプトを提示する「お祭り」の色が濃くなった。

しかし、2000年代の半ばあたりから、世界の潮流の中心が欧州+新興国に移り、米国内ではキャリアの統合が進んでキャリア数が激減。このため、ベンダーが新製品を発表する場としてはバルセロナのMWCにその地位を奪われ、CTIAは「ローカル展示会の一つ」という位置づけに転落した。スマートフォン時代になると、肝心のアップルもグーグルも出てこないCTIAはますます傍流に押しやられ、かつての主役であった大手ベンダーは勢いを失い、多くが統合されて消滅したり展示を取りやめたりして去っていった。10年以上皆勤賞だった私さえ、昨年の春は出席しなかった。

そんな変遷の中で、CTIA展示会はその性格を変化させてきている。2009年頃から、スマートフォン移行に伴ってキャリアの容量不足問題が表面化し始め、それまでは「お客さん」の立場であったキャリアが、ネット中立性や周波数などといった規制のからむ問題に関する「ロビイング」の場としてCTIA展示会を利用するようになってきた。キーノートでのキャリア幹部の登場が増え、それまではなかったブース展示も開発者向けなどの形で行うようになった。展示会場からルーセントが去り、ノキアが去っていく中で、キャリアの存在感が相対的に大きくなっている。

また今回は、展示会の時期を大幅に変更し、フォーマットもかなり変えている。開催者の説明によれば、(1)米国の端末販売ピークである秋の「新学期商戦」から冬の「クリスマス商戦」にかけて出す新製品を発表するには、以前の3月よりも5月のほうが適切である、(2)1月の家電展示会CES(ラスベガス)と2月のMWCにあまりに時期が近すぎるので離してほしい、という参加者からの要望に応えて時期を変更したということだ。フォーマットとしては、従来型の「話題の企業を集めたキーノート」とは別に、初日午後に主要キャリア4社だけのキーノートを独立して設けた。個別セッションでも、ベンチャー動向にフォーカスを当てたり、業界の最新動向に合わせるようにまとめるなど、いろいろ手直しを加えている。

こうした開催者の努力は今のところ成功しており、参加登録者数は昨年をかなり上回っているということだ。ニューオーリンズは、かつてはよくCTIAの会場になっていたが、2005年のハリケーン・カトリーナの年以来、今年は7年ぶりの復活となる(その年の3月にCTIA開催、9月にハリケーンが襲来した。私のブログ(Tech Mom from Silicon Valley)に、ハリケーンのときのことを書いた)。

荒廃したコンベンションセンターは今やすっかり元どおりになり、市街中心部も綺麗になった。私は昨年秋に別件でここを訪れたが、ホテルに「私達は復活する」と書かれたバナーが掲げてあり、ふと日本の東北のことを思い出して感慨ひとしおだったが、さて、ニューオーリンズに負けないほど、CTIAが復活するかどうか、明日からが楽しみだ。

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2.見どころ予測

(1)キャリア決起集会
今回、規制面については、引き続き、周波数問題に関する「キャリア決起集会」の色が強くなると思われる。この分野では、携帯キャリアと地上波放送事業者の間での無線周波数取り合いが基本構図で、綱引きの情勢はじりじりと携帯キャリアに有利になってきている。

初日朝の初っ端にFCCのジェナコウスキ委員長が講演、同日午後にキャリア4社が登場するので、ここでどのような攻防となるかが初日キーノートの見どころだ。

(2)音楽コンテンツへの注目
キーノートの中では、米国のストリーミング音楽サービスの2大勢力であるPandora(パンドラ)とSpotify(スポティファイ)が両方とも登壇することに私は興味を持っている。

モバイルの上位レイヤー・コンテンツとしては、全体的に「有料コンテンツ販売」へのシフトが徐々に進んでいると感じている。特にキャリアから見ると、トラフィックが増えるばかりでお金にならないソーシャル・ネットワークなどの無料サービスは扱いが難しい。一方、有料コンテンツとして華やかな動画は容量不足の昨今とても無理、百花繚乱のゲーム業界はマス層への浸透がまだ不十分。そんな中、やや地味ながらモバイルとの整合性が高く、幅広いユーザー層が見込め、「フリーミアム」モデルの有料ユーザーも見込める音楽コンテンツへの注目が戻ってきているのかな、と感じている。
 
(3)ペイメント、M2Mと中国
FierceWirelessによると、展示やワークショップで注目が集まるのは、この3つのキーワードとなる。

ペイメントは、今年のバルセロナでも注目されていたと言われる。スマートフォン・アプリが広く普及し、単純なダウンロード課金だけでなく、日本で行われているようなアイテム課金や、mコマース支払いなど、「ペイメント」のニーズが広まり、サービスが多く出現し、ユーザーも以前と比べればだいぶ慣れてきた。米国のモバイル業界悲願のビジネスモデルがようやく現実となってきた体感があるのだが、ペイメント周りが実際のところどの程度の普及に至っているかが私の興味ある点だ。

「M2M(Machine to Machine)」、または「モノのインターネット(IoT : Internet of Things)」などとも呼ばれる、無線による自動データ送信の仕組みも、ここ数年徐々に需要度を増している。年々、M2Mパビリオンの面積が増えつつあり、キャリア各社も、ユーザーの数が飽和するにつれ、この分野に期待をかける。

今年はノキアだけでなく、RIM(Blackberryのメーカー)もブースを出さないそうで、端末メーカーの展示は年々寂しくなるが、メーカー系でこれを埋めているのが今年は中国勢ということだ。ただし、消費者向けの端末ではなく、M2M向けの計測機器や部品のメーカーが多い、との報道だ。

(4)インフラ
インフラ機器は、CTIAの伝統的な分野とも言える。こちらも、ルーセント、ノーテルなどが次々と吸収合併されて会社ごと消滅し、展示ベンダーは以前と比べて少ないが、ここ数年の容量不足状況を受けて、そのための対策についてのワークショップがいくつか開かれる。これもバルセロナと同様だが、この分野で何か新しい提案や技術動向があるのか、ちょっと覗いてみたいと思っている。

一応、私が気がついているところはこんなところだ。これらを中心に、気がついたことを明日からレポートしていきたい。

【CTIA2012 公式サイト】
International CTIA WIRELESS® 2012

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海部美知(かいふ・みち)

ENOTECH Consulting代表。NTT米国法人、および米国通信事業者にて事業開発担当の後、経営コンサルタントとして独立。著書に『パラダイス鎖国』がある。現在、シリコン・バレー在住。
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