最終日の今日は、ワークショップはなく、キーノートは午後のクリントン元大統領だけだった。飛行機の時間の都合で、クリントンのキーノートは出席せず、展示フロアだけを見た。
初日の印象として、私は「前よりも人出が増えたのでは」と書いたが、ブース展示をしていた友人は、例年よりもブース来訪者が少なくてがっかりした、と言っていた。初日午後のキャリア4社のキーノートでは、会場入場を待つ長蛇の列ができて驚いたのだが、もしかしたら多くの人は講演が目当てで、大物ベンダーのブースが消えた展示フロアには足を向けなかったのか、あるいは会場の構造などにより混み具合は違って見えるのでそのための私の錯覚かもしれない。
そんな中でも、独断と偏見に基づき、個人的に面白いと思ったものを少々取り上げてみよう。
スマートフォンでは大幅にサムスンに遅れをとり、最近影の薄くなった韓国LGだが、それでも今回展示している端末メーカーの中では最大のブースを会場中央に構えていた。
そのLGから通路をはさんだ真向かいに、朱色と白のコントラストが鮮やかな、大きなブースがあった。その名は「Plum」。なんだこれ。
▼存在感のあるPlumのブース
話を聞いてみると、中南米向けの端末メーカーだそうで、米国ではまだ販売されていない。中南米といっても、会社は「中南米全体のハブ」である米国のマイアミにあり、中国で生産し、中南米30カ国で販売しているそうだ。
中南米はまだまだフィーチャーフォン+プリペイドが主流であり、展示端末は色鮮やかな小型フィーチャーフォンが多い。米国では大型画面の黒いスマートフォンばかり見慣れているので、南米風のかわいい小型フィーチャーフォンがかえって新鮮に見える。
▼カラフルなフィーチャーフォン
特に人気が高いのは、小型端末と並び、ブラックベリーに似た形のqwertyキーボード付きのメッセージ端末だそうだ。これもキーボードはついているがスマートフォンではない。南米では、スマートフォン以前の欧州と同じで、音声とSMSをヘビーに使う国が多いので、キーボード端末が重宝されるようだ。このほか、Android端末とタブレットも展示されていた。
▼ポップカラーのブラックベリーという雰囲気のメッセージ端末
同社は低価格Android端末を中心に、これから米国のキャリアにも売り込んでいく予定だ。
他にも、中国系と思われる馴染みのない端末メーカーがいくつかあったが、ここが一番目立っていた。展示会主催者として、「国際化」の戦略として中南米の展示や来訪者を増やそうとしている様子が見られるので、その一環といえよう。
端末分野の競争がまた増えるのは歓迎だが、このホットパンツのオネイさんたちはちょっとなんとかしてほしい。この手のコンパニオンは一時影を潜めていたが、今年やけにたくさん見かけたのは、まだ空気を読めないアジアや中南米のプレイヤーへの「国際化」の一面なのだろうか。
▼Plumブースのコンパニオン
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このところ毎回設けられる「M2Mゾーン」。マシン・ツー・マシン(またはモノのインターネット)の関連企業が集まるパビリオンだが、回を追うごとに面積も増え、場所も隅っこから真ん中に進出してきている。
M2Mにキャリアの注目が集まっている今年もまた、M2Mゾーンの赤カーペットの面積はさらに広くなっている。その中で、例年必ずブースを出し、講演にもよく出てくるリーダー格の常連がこのKOREテレマティクス社。名前のとおりテレマティクスが主要事業だが、今年は「テレマティクス」という文字をブースでは使わず、「M2M全般のエキスパート」とのイメージを打ち出している。
▼KOREテレマティクスのブース
同社は「GPS系M2M専門SI屋さん」だ。ハードウェアや回線はパートナーから調達し、顧客の要望を聞いてそれに合わせたM2Mシステムを作る。
ブースで話を聞いたところ、「以前は半分以上がテレマティクスだったが、今は40%ぐらいまで比率が減り、他のシステムが増えた。アセット・トラッキング(車両や積荷の位置確認)や、各種業務用『モノ』のリモート管理システムが多い。」とのことだ。
最近では、例えばジオ・フェンシング(GPSをつけた人や車両が、あらかじめ決めた範囲の場所の外に出るとアラートが出る仕組み)を使った徘徊老人のリモート監視などといった新しい使い方も注目を集めているという。
M2Mは多岐にわたるが、従来から主力の業務用車両テレマティクスが引き続きこの業界の中心的存在である。もう一つの柱が、「コネクテッド・デバイス」で、携帯電話モジュールを内蔵したアマゾン・キンドルが代表例だったが、最新版のキンドルはWiFi専用となり、回線をMVNO提供していたAT&TはM2M回線数がかなり減り、この分野がキャリアとして商売になるのかの疑問が再燃している。
しかし、ブース説明員曰く「そうは言っても『M2Mって何?』と聞いてくる人は、今回の展示会ではついに全期間を通して2人までに減った。徐々にM2Mのコンセプトが浸透しており、キャリアも興味を持ってきてくれている。自分は90年代に車両トラッキングシステムの会社にいたが、その頃は時期尚早で誰も興味を持たなかったが、ようやく熟してきたと思う。」ということだ。
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引き続き容量問題が深刻化する中、アンテナやWiFiなどのソリューションを含め、いろいろなアイディアがワークショップや展示に出ていた。細かく見る時間がなかったが、目先の解決策として有力なスモールセルの一例を写真に撮ってみた。
クアルコム社はスモールセルのリファレンス・デザインを提供しており、それを元に作られたスモールセルがこれ。アンテナが内蔵され、CDMA2000を8回線提供する。これで一つの基地局だ。
単にサイズを小さくするだけでなく、近隣のマクロセルとコーディネートして、一番空いているセルにトラフィックを回すことで、セルと電波を有効利用する、というのがそもそものコンセプトだ。
「ほら、自分の持ってるスマートフォンよりも基地局のほうが小さいでしょ。」とブース担当者が比較して見せてくれた。
現在はCDMA2000とUMTS用が製品化されており、3G/4Gは近い将来リリース予定とのことだ。
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ENOTECH Consulting代表。NTT米国法人、および米国通信事業者にて事業開発担当の後、経営コンサルタントとして独立。著書に『パラダイス鎖国』がある。現在、シリコン・バレー在住。
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