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[INTEROP TOKYO 2012]IMC2012で見た、通信と放送の融合

2012.06.15

Updated by Asako Itagaki on June 15, 2012, 17:13 pm JST

INTEROPと併催されているIMC Tokyo 2012(Interop Media Convergence)には、Broadcaster's Innovationというコーナーが設置されていた。NHK・民法テレビキー局が中心に、TV局が開発したアプリやIP伝送技術などを紹介していた。厳密にはINTEROPのレポートではないが、興味深かったので紹介したい。

セカンドスクリーンをテレビ局の手に!

視聴者向けのサービスとして数社が紹介していたのが、テレビを見ながらスマートフォン・タブレットで楽しむ「セカンドスクリーン」用のアプリの展示だ。

テレビ番組を見ながらスマートフォンやパソコンの画面で関連情報を検索したり、Twitterのハッシュタグで盛り上がる、といった楽しみ方はかなりポピュラーになっている。視聴者が勝手にセカンドスクリーンのコンテンツとしてインターネット上のコンテンツを利用している状況だと言えるだろう。

この状況はテレビ局から見れば、ネタだけ提供して「セカンドスクリーン」という機会を、みすみすインターネットサービス事業者に取られていることになる。アプリを通して、セカンドスクリーンに対してもテレビ局がコンテンツを提供することで、より番組を深く楽しんでもらったり、番組と双方向の仕掛けを作る仕組みとして活用したいという意向だ。

日本テレビが6月12日にリリースした「wiz tv」[web]は、自局だけでなく全ての局に対応。「盛り上がりグラフ」「タイムライン」「注目コメント」「番組情報」を表示する。グラフ、タイムライン、注目コメントなどはTwitterの情報(ツイート数、お気に入り、リツイートなど)と、アプリ内でのユーザーのアクション(いいね!など)を利用している。各データは過去3日間にわたってさかのぼれる。

▼水曜日の朝7時58分、MOCO'Sキッチンで「速水もこみちがオリーブオイルをかける瞬間」の盛り上がりが可視化されている。
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リリースから1日でApp Storeの無料アプリランキング総合15位にランクインするなど、滑り出しは上々のようだ。今後は、音声認識による自動チャンネル切替えにも対応予定。テレビのチャンネルを切替えると、アプリ側のチャンネルも自動的に追随して切り替わるようになる。

関西民放5局による展示では、「さわるテレビ」として、IPDC(IP Data Cast)を利用したデータ送信で、セカンドスクリーンの画面をコントロールする技術をデモンストレーションしていた。

▼女子アナ座談会。テレビの画面では普通に5人がしゃべっているが、セカンドスクリーンでは字幕や吹き出しなどが放送内容に合わせて表示される。
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こうしたアプリの提供を通じて、ゆくゆくはセカンドスクリーンも自社でコントロールできる広告媒体として活用すること、また従来の視聴率に代わる計測指標を開発することを視野にいれているのであろう。

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地デジ化で顕在化した「送り返し」問題

放送と通信の融合といえば対視聴者のサービスの文脈で語られることが多いが、放送のバックエンド、とりわけロケや中継の現場では、モバイルデバイスを活用したシステム活用が余儀なくされはじめている。特に、従来あまり意識されていなかったが、地デジ化で解決が必要になったのが、国内での中継時の「送り返し」の遅延だ。

スタジオと中継先をつないで会話をする際に、アナログ放送であれば、スタジオの映像や音声は放送波にのってリアルタイムに届くため、中継地側ではテレビの受信機さえあればスタジオの様子はモニターできた。ところが、地デジのテレビやワンセグでは、2~3秒遅延が発生してしまう。衛星中継のコンマ数秒の遅延でさえ、会話がしづらいと感じるのが人間である。3秒も遅れてしまっては、文字通りの意味で、会話が成り立たないのだ。

TBSが出展していたのが、超低遅延送り返しシステム「LiveBack」[PDF]である。スタジオの映像をMacでエンコードして、インターネットを経由して映像を伝送する。遅延は1フレーム(30分の1秒)以下。中継地側では、3G、WiMAX、イーサネットなど、その場で使える回線を使用して、Mac、iPhone、iPadで受信する。回線品質の違いはエンコードのビットレートで調整する。あらかじめパターンを決めておくことで、受信側では状況に合わせて適切なパターンを選択するだけで、低遅延の送り返し映像を受けられる。

▼LiveBackのエンコーダー側画面。
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スマートフォンを活用したロケ支援

フジテレビでは、送り返し映像のサポートだけにとどまらず、位置情報やチャット機能も統合して、スマートフォンを活用した遠隔取材支援システム「ロケサポ」[報道発表資料]を出展していた。

ロケ隊が持っているスマートフォンのGPS機能でリアルタイムに位置を把握。デスクで参照するだけでなく、ロケ隊が相互に参照することもできるため、機動的な応援要請などが可能になる。チャット機能は、個別の端末とテキストをやりとりするだけでなく、デスクからの一斉送信も可能なので、緊急時の呼び出しにも対応可能になる。IPフォンと連携しており、災害時などで携帯網に通信規制がかかるような場合でも、IP網が生きていれば音声通話が可能になる。

▼GPSチャット画面。上部にはスタジオからの送り返し映像、下の地図には自分の位置と一緒に、他のロケ隊の位置が表示されている。
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送り返し映像の遅延は、Wi-Fi接続時で0.1秒、3G接続時で0.5秒程度。回線品質が良くない時は、映像品質を落とすことで音声の遅延を解消できる。音声はマスター音声とインカム音声を切替え可能。

▼デスク端末の画面。各ロケ隊の位置情報が把握でき、メッセージが送れる。
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デスク画面からは、メッセージ送信だけでなく、緊急時に端末の位置情報を送信させたり、端末紛失時のデータやアプリのワイプなどの管理も行える。

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スマートフォンのカメラで中継

TBSでは、スマートフォンのカメラを利用した中継システムを展示していた。現在はまだ放送には利用していないそうだが、テレビでも「中継隊の機材はスマートフォンとノートパソコン」という時代は、それほど遠くないのかもしれない。

▼スマートフォンで撮影された映像を出力。
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▼偶然、TBSの生中継に遭遇。
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従来の大がかりな機材で「スマートフォンでも中継できちゃいまーす!」とやっていたのは、時代の変わり目を感じさせる光景だった。

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。