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携帯でギャンブル

2012.09.05

Updated by Mayumi Tanimoto on September 5, 2012, 07:08 am JST

イギリス人はギャンブルが大好きです。女王様の趣味は競馬であり、ギャンブルは合法です。ありとあらゆることがギャンブルの対象になり、町中にはパチンコ屋の代わりに「ブッキー」(ブックメーカー)と呼ばれる賭け事屋が立ち並びます。イギリスのギャンブルは「2005賭博法」で規制され、政府の賭博委員会(U.K. Gambling Commission)が規制監督官庁です。

ありとあらゆるギャンブルが合法なので、携帯電話経由のギャンブルも合法であります。賭博委員会調査によると(しかし賭博委員会とは日本語に訳すと凄い名前ですね)2010年の時点で13%のイギリス国民がオンラインギャンブルの経験があります。イギリスでは2007年に「2005賭博法」の大幅な改正があり、オンラインギャンブル業者がテレビなどのメディアで大々的に宣伝ができるようになったため、ユーザー数の激増に拍車をかけたと言われています。

携帯ギャンブルの有名どころは1886年創業で1万4千人の従業員を抱える老舗ブッキーのLadbrokesが提供するLadbrokes Mobileです。アプリとブラウザ両方からのアクセスが可能で、iPhone、アンドロイド、ブラックベリー、ノキアと異なるプラットフォームに対応している上、なんと23カ国語対応です。中国語やロシア語にも対応しています。使い方はかなり簡単で、携帯からSMSを送ると使い方を書いたメッセージが返送されるので、それにそって登録すればすぐにギャンブル開始です。

Ladbrokesだけではなく他の大手ブッキーも携帯ギャンブルに参入しておりますが、運営拠点はジブラルタル(スペインとモロッコの間にある英国領)であります。税制優遇がある上、ギャンブルへの規制が緩いため、同地に世界各国からスタッフを呼び寄せてせっせと運営しているんであります。運営担当や経営者はドイツ人やフランス人も少なくなく、世界各国のお客様に対応するために国連も真っ青な多国籍体制で運営しています。イギリスの運営拠点はカムデンタウン(ロンドンの原宿)の外れにあるかなり裏ぶれた雑居ビルに入っていたりしております。

携帯ギャンブルはキャリアにとってもブッキーにとっても最も有望なビジネスであり大きな注目を集めています。大手ブッキーのBlue Squareの2010年度の収益の20%はオンラインギャンブルであり、2009年と比べ三倍に増加しています。携帯キャリアにとってもオンラインギャンブルは救世主様であります。携帯ギャンブルは、プレーだけではなく、プレー中のライブ映像配信の視聴なども考慮すると、ARPUを10−20%増加させるという予測が出ています。

日本でも携帯のソーシャルゲームなどの「賭場に近いような」サービスが注目を集めておりますが、欧州やイギリスと違い、日本では規制や定義が曖昧であります。イギリスの賭博委員会のサイトを見ると、事業者の定義や携帯ギャンブルとは何であるかなどが、あまりにもわかりやすく明記してあるのでビックリします。

イギリスだけではなく大陸欧州にも「ちょっとヤバいことも認めましょう。でもなるべく透明化して、管理した上で認めましょう。でもルール違反は許しませんよ」という考え方があるのですが(例:麻薬)、携帯ギャンブルにもそのような考え方の違いが現れているような気がします。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。