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トランプ氏当選とアメリカのテック業界に立ち込める暗雲

Presidential election and Tough future of US Tech Sector

2016.11.24

Updated by Mayumi Tanimoto on November 24, 2016, 08:00 am UTC

トランプ氏当選で精神的に不安定になっているのはリベラルな大手メディアだけではありません。テック業界にもどん底の様な気分の人が少なくない様です。私の知人にもカナダや欧州への転職を考えている人がいます。

アメリカのテック業界にとっての打撃は、人材獲得です。

まずH1-Bというビザの取得が厳しくなりますが、アメリカのテック業界の外国人の少なからずは元留学生で、学位を取得した後に一年ほどOptional Practical Trainingという研修生の様なビザで働き、その後雇用主がH1-Bをサポートして働き、永住権や国籍を取る、というのが多かったのです。私の知人や同級生で、アメリカで働いている人はほとんどがこのルートです。

またブッシュ政権時代には、 Optional Practical Training (OPT) の延長というのが科学技術系の学生に適用され、オバマ時代に拡大し、H1-Bの代わりにF-1というビザを取ることでアメリカで3年まで働けたのですが、トランプ大統領の当選により廃止される可能性があります。

こういう仕組みを閉ざしてしまうのは、アメリカにとって大打撃です。元留学生の少なからずは母国の優秀な人で、わざわざアメリカに来る様な人々だからです。イギリスやオーストラリアと同じで、テック業界の場合、外国人を雇う理由は、単にスキルのある人が外国人だっただけで、自国内だと人材を探すのが難しいという場合がかなりあります。

これは現場経験者はよくわかりますが、アメリカやイギリス、オーストラリアの学生は、テック系の専攻を嫌がるので(勉強が大変なので)どうしても外国人が多くなってしまいます。オフショアの安い労働力で代替できるポストではないことも多いので、ビザ政策が変更されるとなると現場はかなり困窮するでしょう。

トランプ氏当選後の政治的な環境は、優秀者をアメリカから遠ざけるでしょう。シリコンバレーに代表されるように、アメリカのテック業界は外国人だらけで、有色人種も多いのですが、まともな頭をもった人なら、自分の子供が殴られたり、国に帰れと言われるリスクが高まる国に移民しないでしょう。

多少年収が下がってもカナダやオーストラリアの方がまだましです。かつてのアメリカで、国に帰れと言われるような所は、私が住んでいた南部の貧困地域の様な所でしたが、今は何かがかわってしまいました。

元々本音ではそう思っていたのでしょうが、自分が時給9ドルで働く横で、インドやブルガリアからきたエンジニアが年収2000万円を稼いでいる。高卒の自分は、いくら頑張ってもエンジニアになることは不可能で、外国語もわからないのです。国に帰れといってしまう人の不安や苦悩を無視して来た結果は、イビツな豊かさと、才能やビジネス機会を失うリスクでした。

テック系のメディアやビジネスニュースで伝わってくるアメリカは、あたかもシリコンバレーやニューヨークのシリコンアレーが全米のような印象ですが、アメリカのかなりの部分は、時給9ドルの世界です。

アメリカを諦めた外国人エンジニアや研究者は、比較的穏健なカナダやオーストラリア、アイルランド、イギリス、ドイツに移動するかもしれません。つまりそういう国にとってはチャンスがやって来たいうことです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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