WirelessWire News Philosophy of Safety and Security

by Category

auとソフトバンクのiPhone 5の支払金額を比較する(追記あり)

2012.09.15

Updated by Asako Itagaki on September 15, 2012, 21:14 pm JST

201209152100-1.jpg
予約開始の9月14日に会わせて発表されたauとソフトバンクモバイル(以下SBM)それぞれのiPhone 5の利用料を比較してみた。一見、どちらも同じような金額に落ち着いているように見えるが、「攻めのau」「守りのSBM」という両社の立場の違いが見えて興味深い。

全く横並びのパケット利用料、「テザリング」vs「7GB縛り無し」で差をつける

14日の午後開催された記者発表会で、auの「4G LTE」のパケットプランは5,985円(請求月内の通信量が7GBを超えると速度制限)と発表された。一方、SBMは、「SoftBank 4G LTE」のパケットプランとして、フラット型で月額5980円の「パケットし放題フラット for 4G LTE」、段階制で月額2100円~6510円の「パケットし放題 for 4G LTE」(どちらも請求月内の通信量が7GBを超えると速度制限)の2種類を発表した。

ところが、ふたをあけてみると両社ともiPhone 5用には特別料金プランが用意されていた。auは「LTEフラットキャンペーン(i)」として月額5,460円(請求月内の通信量が7GBを超えると速度制限・2012年12月末までの申込み)を設定。SBMは「パケット定額 for 4G LTE」として同じく月額5,460円を設定しているが、大きな違いは7GBを超えても速度制限がないことだ。

一方、auは、2012年12月末日までの申込みに対してテザリング利用料525円を2年間「無料」とするキャンペーンを実施。つまり、2012年12月末までに申し込んだ場合は、追加料金無しで2年間テザリングを使えることになる(ただし、テザリングオプションに付加される通信速度制限までのデータ量追加500MB分は、無料期間中には付加されない)

iPhoneのテザリング機能はiOS4.3で既に実装されており、SIMフリー版のiPhoneであれば使うことができた。iPhoneでテザリングを使えれば、別途Wi-Fiルーターを持ち歩かなくてもパソコンやiPadなどのタブレットでモバイル回線を共有できるため、ユーザーからの要望も非常に高かったが、SBMもauも、これまでは使えないように制限をしていた。

テザリングによってデータ通信量が飛躍的に跳ね上がる恐れがあるため、ネットワークに与える負荷を懸念してのことであろう。そうした状況下、auが、LTEのサービス提供開始を機に月間7GB縛り(7GBを超えると速度制限)とはいえ高速ネットワークのテザリング機能を開放したインパクトは大きい。当然、テザリングを望むSBMのユーザーを取り込もうという意図はあるだろう。

一方、ソフトバンクモバイル 取締役専務執行役員CTOの宮川潤一氏は、ケータイWatchのインタビューで「iPhoneユーザーをたくさん抱えた我々だからこそ、今のお客に制限をつけて乗り換えられるのが正直怖い」(ソフトバンク宮川氏がLTEに言及、iPhone 5の販売数がLTEを加速 - ケータイ Watch)と語っている。LTEのデータプランに7GBで速度制限をかけるのはNTTドコモのXiも含めてほぼ日本のキャリアでは横並びの対応となっており、また制限をかけることにより、テザリングが提供可能になっている部分もある。しかし、「一定のデータ量で速度制限をかける」ことそのものに、定額料金で無制限のデータ通信プランに慣れたユーザーからの反発も大きいのが実情だ。

こうした現状を踏まえ、SBMでは、iPhoneに関してはテザリングを開放するよりもユーザーを失わないために「無制限」を続けるという判断のようだ。(ケータイWatchのこちらの記事はSBMのネットワークの現状について詳しく語られており、ぜひ一読をお勧めする)

===

既存iPhoneユーザーに手厚いSBMの料金施策

"※2012/9/20追記: 2012年9月19日、ソフトバンクモバイルから新しい料金施策が発表されました。本記事は執筆時(9月15日)に発表されていた情報にもとづいており、金額の一部が現状と異なっております。なお、9月19日に発表された施策を反映した比較はこちらの記事をご参照ください。(編集部)

攻めのau対守りのSBMの姿勢は、月額料金に対する施策にもあらわれている。ここで両社の月額料金(分割払い機種代金含む)を比べてみよう。なお、両社とも、2012年9月21日から11月末まで、MNP転入者向けに24ヵ月間月額基本料無料のキャンペーンを実施しているため、表中の数字は11月末までに申し込んだ場合となる。(※9/16 13:15 下線部追記)

※9/17 17:20追記 SBMの孫正義社長は9月17日夕方、ツイッターで「下取りプログラム」の下取り価格を変更する意向を示した。この後の表中にあるSBMの「機種変更(下取り)」の月額料金および2年間支払い額は9月14日に発表された両社の料金プランおよびキャンペーン・プログラム情報に基づき計算したものであるため、9月21日時点で決定する金額とは異なる見込みである。

iPhone 5 月額料金(au)

201209152100-2.jpg
※2012年11月末日までに申込みの場合(料金の詳細についてはこちらを参照)

毎月割の金額が新規・MNPでは2570円なのに対し、機種変更では2180円と若干少なくなっているため、機種変更がその分高くなっている。

iPhone 5 月額料金(SBM)

201209152100-3.jpg
※2012年11月末日までに申込みの場合(料金の詳細についてはこちらを参照)
※iPhoneかいかえ割の割引は12ヵ月間のみ
※下取りプログラムの割引は8ヵ月(iPhone 4の場合)もしくは12ヵ月(iPhone 4Sの場合)

一見して、機種変更ユーザー向けの施策がauに比べて手厚いことが分かる。iPhone 5への機種変更は月額基本料の半額を1年間割引(iPhoneかいかえ割)に加え、iPhone 4、iPhone 4Sユーザーに対しては古いiPhoneを下取りする代わりにそれぞれ1000円をそれぞれ8ヶ月間、12ヶ月間割り引くとしている。また、月々割は新規・MNP・機種変更で一律2140円となっている。

なお、SBMの既存ユーザー向け施策については、期間が短いため、参考までに2年間支払総額も計算してみた。

2年間支払総額の比較

201209152100-4.jpg
201209152100-5.jpg
※2012年11月末日までに申込みの場合

こうして並べてみると、SBMの料金設定が「既存のSBMiPhoneユーザーにそのままSBMのiPhone 5を使ってもらう」ために考えられていることがよくわかる。一方で、auのiPhoneユーザーはまだ購入してから2年は経過していないこともあり、機種変更ユーザー向けの特別な優遇プランは考慮されていないようだ。

===

強烈なスマートバリューの価格訴求力

14日のauの記者発表会で、記者からの「この価格設定では競争力に疑問があるのではないか」という質問に対し、取締役執行役員専務 石川 雄三氏は「スマートバリューによる割引がかなり大きいので、十分競争できると考えている」と回答していた。実際にスマートバリューを適用した場合の月額料金と2年間支払い総額を計算してみた。

au(スマートバリュー適用時)の月額料金

201209152100-6.jpg
※2012年11月末日までに申込みの場合

au(スマートバリュー適用時)の2年間支払総額

201209152100-7.jpg
※2012年11月末日までに申込みの場合

「au系指定の固定通信サービスでネットと電話を利用している場合」限定とはいえたしかに相当安くなる。MNPであれば機種代込みで4,295円(16GBの場合)は、SBMで下取りプログラムを利用した場合よりもさらに1000円近く安い。また、auユーザーが機種変更する場合も、スマートバリューを利用できればSBMにMNPするよりも月額利用料は安くなる。守りのSBMに対して、auは「固定もモバイルセットで取りに行く」ことを前提にした価格戦略で、攻勢を仕掛ける意向のようだ。

通信方式の違いはあるとはいえ、同じ「iPhone 5」という端末を売る両社がどこで競争するのか。単なる値下げ競争ではなく、「どこを取りたいか」「どこを守りたいのか」「自社の強みと弱みは何か」「iPhoneだけでなくキャリアとしての全社戦略はどうなのか」に合わせて細かく料金とサービス内容を調整しているのが興味深い。なおここまでの議論は、9月15日夕方現在の両社の発表にもとづくものであり、この後発売日までにさらに両社に何らかの動きがある可能性も考えられ、しばらくは目が離せない。

しかしちょっといただけないのは料金発表のタイミングである。ギリギリまで互いの手の内の読み合いと細かい調整をしていたという事情はあるにせよ、予約開始時刻になっても店頭で端末価格も月額支払額も分からないままユーザーが予約をさせられるような状態は、とても正常とは言えないだろう。

筆者自身も、予約開始日の翌日、とある販売店に予約の説明を受けに行ったところ、キャンペーン価格の詳細が1日経ってもまだ店頭まで伝わっておらず、手持ちのスマートフォンの画面を見せながら逆にスタッフに説明するという経験をした。現状は端末の人気に甘えてあまりにもユーザーと販売店をないがしろにしているのではないか。次の機会には改善を望みたい。

※9/17 17:00追記
ソフトバンクモバイルの孫正義社長は、ツイッター上で「iPhone 4、4Sの下取り価格の見直し(値上げと容量別下取り価格の設定)」「iPhone 3、3GSも下取り対象に追加」について実施する意向を示した。詳細が判明次第おってお知らせする予定。(参照情報:孫社長のツイッターアカウント(@masason)

【参照情報】
iPhone 5 | au
iPhone 5 | ソフトバンクモバイル
「下取りプログラム」を9月21日より開始 | ソフトバンクモバイル
ソフトバンク宮川氏がLTEに言及、iPhone 5の販売数がLTEを加速 - ケータイ Watch

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。