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ソーシャルメディアは政治を変えているか?(3)

2012.10.04

Updated by Mayumi Tanimoto on October 4, 2012, 07:53 am JST

賢い政治家はTwitterを使いこなしている

イギリスの政治家のTwitter好きを受けて、セッションでも「Twitterは政治に影響を与えているか?」という質問で会場が盛り上がりました。

Antony Carpen氏は、「政治家はTwitterを会話の様に使い始めた。Twitterを使って人々と政治家が会話できる。影響は徐々に見え始めている」と語っています。以前は政治家に対して一般の人が話しかける手段は対面での陳情などしかなかったにも関わらず、今では、自分の投票区の外の地方政治家から中央の政治家まで、様々な政治家に話しかけることができる様になったというわけです。

Guido Fawkes 氏は、「賢い政治家はTwitterを使いこなしている。例えば Tom Watson 議員だ。多くの政治家はTwitterを使い、有権者に自分の存在感をアピールすることが大事だと考えている」と答えています。

Tom Watson議員は現在イギリスの野党である労働党の政治家ですが、2003年からブログで情報を積極的に発信して来たことで知られ、Twitterの使い方も長けています。イギリスでは労働党議員の方がソーシャルメディアの利用に積極的で、使い方も上手なようです。これには、保守党は議員の情報発信に関して、中央集権的な規制があり、労働党の方は比較的自由であるという事情があるようです。また労働党だけではなく、野党はソーシャルメディアを使って積極的に情報を発信しています。

同氏は政治家がTwitterを使いこなす難しさも指摘しています。「普通の人がTwitterで活発に政治家に議論を挑んで、政治家を圧倒することが増えているね。Twitterはどんな問題も解決してくれる魔法の道具じゃないんだよ。使い方が重要であって、政治家はうんとうまく使って他の政治家と競争しなければ行けない。どう競争するかが難しいわけ」

Twitterでの発言や議論でその政治家の専門性や人柄、考え方がぼろっとでてしまうのは、日本もイギリスも同じようです。分野によっては、一般の人の方がその政治家よりも詳しい分野もあるでしょうから、議論に負けてしまうこともあるでしょう。

Matt Freckleton氏も政治家がTwitterを使いこなすことの難しさを指摘しています。「政治家はソーシャルメディアで何か言わないといけないと思っているので、言わなくてもいいことを条件反射的に言ってしまうみたいだ。よく考えずに。何を言うかよりも、自分の価値を強調したいと思っているから、本当にどうでもいいことを言ってしまって失言している。反面、政治家の中にはソーシャルメディアなんて本当にどうでもいいと思っている人もいる。発信しすぎの人と、何も言わない人の両極端なんだ」と語っています。

ソーシャルメディアだとリアルタイムでレスポンスがくるので、ついつい条件反射的に言わなくてもいいことを言ってしまう政治家が少なくないようです。不用意な発言をしない様に、ソーシャルメディアで返答する時間やタイミングを区切って使う、というのは一つの方法かもしれませんね。

政治家は情報をコントロールできなくなっている

Matt Freckleton氏が指摘した点は、以下のBBCのドキュメンタリーで説明されています。総選挙前の党首テレビ討論で、キャメロン氏の失言がソーシャルメディアで爆発的な早さで広がっていきました。政治家の発言は有権者によりソーシャルメディアに投稿され、政治家のコントロールの及ばない状況で拡散していくわけです。

The influence of social media in politics

このドキュメンタリーの中で、広告代理店Epoc PRの社長であるChris Clark氏は「ソーシャルメディア以前は政治家が何か言い、情報を管理し、有権者に『聞かせる』のが当たり前だった、ソーシャルメディアはそれを破壊した。今や政治家は情報をコントロールできなくなっている。そして政治家が情報を管理できなくなった結果、人々と政治家の間には、信頼がなくなった。それにソーシャルメディアは従来の何倍ものスピードで物事を進める様になった。例えば60年代のベトナム反戦運動や女性解放運動は何年もかかったのに、現代ではソーシャルメディアで情報が拡散されるおかげで、何倍もの早さで政治的な事柄が動くようになっている」と語っています。

ソーシャルメディアでの発言は公式発言だ

Matt Freckleton氏の発言を受けて、元地方議員で現在政治家向けのソーシャルメディアコンサルタントである Stuart Bruce氏は、政治家はソーシャルメディアでの発言に注意しなければならない、と警報を鳴らします。「革命的なことは、Twitterでの発言が新聞やテレビで公式発言として使用されるようになったことだ。リアルでの発言とデジタルでの発言が同じ扱いというのは面白い」と答えています。

ソーシャルメディアでの発言は、イギリスでもリアルな空間での発言並に重みを持つ様になっているわけです。日本だと芸能人のゴシップなどはTwitterやブログでの発言が報道されることがありますが、イギリスでは政治家や公人に関しても、発言が報道されます。

一方、元ジャーナリストであるSue Llewelyn氏 は「Twitterでの発言を元に報道する記者は増えているけれども、嘆かわしいことだと思う。皆怠け者になっているだけなのよ!」と憤慨していました。また「 技術に詳しいジャーナリストや政治家はTwitterを使っている。たった140文字だけれども、政治家には、さらに短く書く様にアドバイスしている。文字数が限られているので、少しだけ書いて、ブログのリンクへ誘導して詳しい説明ができる様にとアドバイスしています」

Twitterで議論になることが少なくない日本の政治家の方も、議論はしないでブログで詳しい説明をした方が良いかもしれませんね。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。