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生き残る出版社、潰れる出版社

2012.10.24

Updated by Mayumi Tanimoto on October 24, 2012, 05:25 am JST

先日ドイツのフランクフルトで開催されたフランクフルトブックフェアでも、今年最大のヒット作である Fifty Shades of Grey が話題となりました。同作は、現在までに全世界で5千万部を売り上げたわけですが、フェアにおいて、このヒットは生き残っていく出版社のビジネスモデルの例となるのではないか、という指摘がありました。同作、最初はトワイライトの同人として細々と電子書籍を売っていたわけですが、途中からRandom House とBertelsmannという大手出版社が販売に関わり、グローバルなネットワークを使って、同作品のプロモーションを行っています。二社のグローバルなネットワークに編集者や営業担当者の強力なプッシュがなければ、あれだけ短期間の間に世界中で爆発的なヒットになることはなかったとうわけです。同作品のヒットに触発されて、最近では、大手出版社が同人作品を発掘し、営業と配信代行するケースが増えています。

自分で同人誌を発行していたり、電子書籍を売っていれば良くわかるのですが、著者に取っては、営業やプロモーションは、経験がないこともあり、かなり難儀な仕事な上、労力のかかる作業です。対面営業も大変ですが、ソーシャルメディアや検索エンジンを使ったマーケティングも難儀です。異なる電子書籍プラットフォーム向けの配信や、販売管理もかなり面倒です。

編集家・竹熊健太郎さんが、「出版責任の代行者としての出版社は生き残っていくかもしれない。出版社が弁護士の様な役割になり、著者が出版社を雇っていく様になる」とおっしゃっていますが、出版責任や弁護士の様な役割に加え、リアルとデジタルの世界でのプロモーションの企画や代行という役割も加わるでしょう。電子書籍時代に生き残っていく出版社は、出版社というよりも、デジタル媒体に強いメディアレップ(広告代理店)の様な会社なのかもしれません。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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