[2012年第45週]BYODへの潮流、10月はドコモ一人負け、来日旅行者に空港でSIM受け取り
2012.11.12
Updated by Naohisa Iwamoto on November 12, 2012, 13:00 pm JST
2012.11.12
Updated by Naohisa Iwamoto on November 12, 2012, 13:00 pm JST
第45週は、スマートデバイスの企業利用に関するニュースが複数飛び込んできた。スマートデバイスの業務利用に関して、企業は端末の支給よりも個人所有端末の業務活用(BYOD)に注目していることを示す調査結果や、安全にBYODを活用できるソリューションの発表が相次いだ。10月の事業者別契約数では、ドコモが辛うじて純増を保つという低迷。iPhone 5の影響をまともに受けた状況だ。
まず、個人所有端末の業務利用(BYOD)など、法人でのスマートデバイス利用実態を調べたデータが発表されたニュースからチェックしていこう。MMD研究所は「ビジネスパーソンにおけるモバイルの業務利用動向調査」の調査結果で、法人のスマートフォン端末の支給率は6.8%と低い率にとどまっていることを明らかにした。モバイル端末の会社からの支給率は、スマートフォンが前述のように6.8%、フィーチャーフォンが16.9%で、残りの76.3%は支給されていないとの結果だ。フィーチャーフォンを支給している企業にスマートフォンへの切り替えの予定を尋ねたところ、「早い段階で切り替える」としたのはわずか4.3%、「切り替えるが時期未定」との回答の28.3%を合わせても、3分の1に満たない。
一方、個人端末の業務利用については、35.4%が「会社公認で利用している」、13.8%が「会社非公認だが利用している」と答え、スマートフォン利用者のほぼ半数が個人所有の端末を何らかの形で業務に活用している結果が得られた。こうした数字からは、コストのかかるスマートフォンを会社から支給するのではなく、個人が運用・端末購入費用を負担する端末を活用して業務改善に繋げられないかと考える企業の姿が浮かび上がってくる(報道発表資料:法人スマートフォン端末の支給率は6.8%)
BYODに関する企業の注目が高まる中で、ソリューションの提供も相次いでいる。ソフトバンクテレコムとソフトバンクモバイル、ヴイエムウェアは、共同でスマートフォン向けのセキュリティーソリューションで提携してトライアルサービスを実施すると発表した。個人の端末を業務利用する「BYOD」を安全に実施できるようにするソリューションである。ヴイエムウェアの仮想化ソフトウエア「VMware Horizon Mobile」をベースにして、1台のスマートフォンの中に通常のスマートフォンの物理環境とは別に仮想的な環境を作る。その上で、物理環境をインターネットアクセス用(私用)に、VMwareによる仮想環境を企業内システムアクセス用(業務用)に使い分けるように設定する(関連記事:ソフトバンク、安全な「BYOD」利用に向けてVMwareとソリューション提供へ)。
NECも、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスを安全にBYODで業務利用できるようにするソリューションを提供する。「NEC Cloud Smartphone」と呼ぶサービスで、クラウド上に仮想化したスマートデバイスを仮想化して、個人所有のスマートフォンからは仮想化したスマートデバイスにアクセスし、画面情報だけを転送する。そのため、端末となるスマートフォンやタブレットにはデータが残らず、紛失や盗難時の対策となる。まずAndroidを搭載したスマートデバイスを対象にサービスを開始し、iOSやWindowsにも対象範囲を拡大していく計画だ(報道発表資料:スマートフォンをクラウド上に仮想化できるサービス「NEC Cloud Smartphone」を販売開始)。
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毎月恒例の事業者別契約数の発表が電気通信事業者協会(TCA)からあった。2012年10月末の携帯電話事業者の純増数は、ソフトバンクモバイルが28万超、KDDIが23万超とそれぞれ好調だったのに対して、NTTドコモは7200と辛うじて純増を維持する数値となった。両社が9月21日から販売を開始したiPhone 5の効果が、10月に顕著に現れた格好だ。報道によれば、10月の番号ポータビリティ(MNP)利用実績でも、NTTドコモからの転出超過は19万件近く過去最多を記録したという。iPhone効果をまともに受けた結果となったNTTドコモでは、冬モデルの投入やXiの基本料金を2年間にわたって割り引く「Xiスマホ割」の提供などでテコ入れを進める(関連記事:ドコモの10月純増が7200件に低迷、iPhone販売の有無が明暗を分ける)。
そのNTTドコモは、各種の事務手数料の改定を発表した。「登録等手数料」の新設と、「契約事務手数料」「カード発行手数料」の改定で、12月1日から実施する。例えば登録等手数料の新設により、これまで手数料が不要だった「XiからXi」「FOMAからFOMA」の機種変更時に2100円の手数料が必要になる。確かにスマートフォン時代になって事務手続き量が増えていることは想像に難くないが、「囲い込んだ既存の利用者から少しでも手数料を取ろうと考えているのでは?」と少々意地悪な見方もしたくなる(関連記事:NTTドコモが手数料を改定、機種変更時の事務手数料の新設など)。
一方、ソフトバンクとイー・アクセスは、先月締結した株式交換契約の一部変更を発表した。主な変更点は、(1)日程を早めて株式交換契約の発効日を2013年2月末日から2013年1月1日に繰り上げること、(2)イー・アクセス株に対するソフトバンクの株の株式交換比率を16.74から20.09に変更すること、(3)株式交換の効力が発効した時点でのイー・アクセスの新株予約権に対しては、同等のソフトバンク株の予約権を割り当てるのではなく、その時点での価格で買い取り消却するとしたこと--の3点だ(関連記事:ソフトバンクとイー・アクセス、株式交換契約の変更を発表)。
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このほか、この週の主なトピックを紹介する。日本通信は、来日する外国人旅行者向けに提供しているSIMカード「VISITOR SIM」の空港受け取りサービスを開始した。来日旅行者は空港に到着してすぐに、空港内の郵便局で日本国内用SIMを受け取ってインターネットを活用できる。利用できるのは、新千歳、成田、羽田、通部、関西、広島、福岡、鹿児島、那覇の各空港である。こうした施策が来日する旅行者に的確に伝わって、上手に活用してもらえるようになってほしいと願う(関連記事:日本通信、外国人旅行者向けのSIMを空港で受け取り可能に)。
地下鉄のエリア化で、また進展。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスは、東京メトロの丸ノ内線と日比谷線で携帯電話サービスのエリアを拡大します。丸ノ内線は新中野駅〜荻窪駅で2012年11月12日の正午から(茗荷谷駅〜淡路町駅で提供済み)、日比谷線は築地駅〜日比谷駅で2012年11月15日の正午から(日比谷駅〜中目黒駅で提供済み)。2012年度中の全線エリア化に向けて、着々と整備が進んできた。ただし、連絡線の工事をしている有楽町線と副都心線の小竹向原〜千川駅の間に関しては、2016年度中にエリア化するとしている(報道発表資料:東京メトロ一部路線における携帯電話のサービスエリア拡大について)。
iPhoneやiPad向けのアプリの改善のニュース。Evernoteは、iOS端末向けのアプリの最新バージョン「Evernote 5」を2012年11月9日に公開した。大幅なデザイン変更を含めた数年に一度のメジャーアップデートとのことで、主な機能がすべて2タップ以内で利用できるようにしたという。Evernote 5は発売されたばかりのiPad miniでもスムーズに使えるとしている。また、アプリの動きが快適になったり、安定性が改善したりといった点でも改良されているという(関連記事:主な動作をすべて2タップで--iOS向け「Evernote 5」公開)。
CATV事業者が放送・通信だけでなく電力供給まで乗り出す。ジュピターテレコム(以下J:COM)は、2012年12月をめどにマンション向けに電力一括受電サービスを開始する。住友商事系列の特定規模電気事業者(PPS)であるサミットエナジーから一括して電力を仕入れ、マンションの入居者に提供する。東京都杉並区から先行してサービスを開始し、2013年以降全国のJ:COMサービスエリアでの展開を目指す。このサービスは、J:COMがマンション単位で割安な高圧電力を一括して契約し、マンションの居住者に供給することで、居住者が個別に電力会社と契約するよりも安く電力が利用できるものだ(関連記事:放送・通信に加えて電力もワンストップで J:COMがマンション向けに提供開始)。
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