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金の手錠を外すには

2012.12.24

Updated by Mayumi Tanimoto on December 24, 2012, 08:17 am JST

日本もイギリスでもサラリーマンの暮らしは辛い物です。イギリスの場合、日本より残業は少ない、休みは取りやすいとは言っても、悲惨な生活を送っているサラリーマンの代表の様な人々がいます。それは、ロンドンの金融街シティで働く金融マン、弁護士、保険屋、IT技術者などの専門家であります。

シティの人々の年収は多い人で億単位、事務員であってもイギリスの平均給料に比べたらうんと良い給料を稼ぐことが可能です。多くの人は日本の様なメチャクチャな働き方はしていませんが、週末出勤当たり前、毎日深夜まで残業という人もいないわけではありません。

ただしどの人も、数字で結果がでてしまうという厳しい労働環境だったり、リストラが当たり前だったり(酷い場合は部署毎)、足の引っ張り合いが凄まじかったり、間違えると数億円の損がでるという莫大なストレスの元で仕事していたり、単調な作業の繰り返しでうんざりしていたりと「もうこんな生活辞めたい」と思っている人が少なくありません。

高い給料をもらっていても、ストレスのために散在していて借金だらけだったり、家庭生活がめちゃくちゃ、という人も少なくありません。

そういえばワタクシのシティの知り合いも離婚経験者(それも3回とか)が少なくなかったり、精神が逝ってしまっている方が少なくありません。

しかし、高い給料や豪勢な生活からなかなか逃げられないと言う人もいます。家賃の高いマンションから引っ越せない、安い小型車に乗り換えるのが嫌だ、高いレストランに行くことができなくなる生活が想像できない等々。金の手錠をはめている様な物なのです。

一方、そもそも、金融や法曹以外の業界にどうやって転職すればいいのかわからない、という人も少なくありません。自分の周囲の人々も金融関係なので、外の世界に知り合いがいなかったりするので、転職したり、ライフスタイルを変えるためにアドバイスをもらうネットワークが無いわけです。

ところが、この人々と今の生活を辞めたいと悩んでいたシティの元銀行マンと弁護士は、自分達の悩みを「起業する」ということと、「同じ悩みを持った人を手助けする」ということで解決してしまいました。この三人は、Escape the Cityという「今の生活から逃げたい人々」と、金融界とは関係のない非営利団体や企業などをマッチングするサイトを始めたのです。

なおこの三名、企業の資金はスタートアップ向けのクラウドファンディングで調達しています。シティのベンチャーキャピタルに約6500万円の出資を断られたため、スタートアップ向けのクラウドファンディングであるCrowdcubeから約7800万円を調達します。投資者は約390名でした。

「今の生活から逃げたい人」はこのサイトに登録して自己紹介します。Linkedinでログインすることもできるので、書き込むのが面倒くさい人はLinkedinの自己紹介を活用することが可能です。企業や非営利団体は求人や人が必要なボランティアを掲載するのに費用を払います。求人の場合は£150〜(2万円から)、ボランティア募集の場合は無料です。今の生活から逃げたい人は、掲載されている求人やボランティアに応募してキャリアチェンジするわけです。サイト内ではどうやってキャリアチェンジしたか、どうやってライフスタイルを変えたか、という人の体験談を読むことや他の人と交流することが可能です。

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出典 Escape the City

金融以外の企業や非営利団体は、金融業界でプロとして働いて来た専門家の知識や経験が喉の奥から手が出る程欲しい、という人が少なくないでしょう。「今の生活から逃げたい人」は、全く異なる業界に転職してよりハッピーな生活を送ったり、新たな人間関係を作ることができます。企業や団体と、「今の生活から逃げたい人」どちらもハッピーになる面白いサービスであります。

日本にも、周囲に自分の業界以外の人がいないので異業種に転職できない、IT業界にいるけどカフェ経営者になりたい、田舎暮らしを始めたいけどどうしたら良いかわからない、なんて人がいると思うので、こういうサイトは日本でも需要があるかもしれません。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。