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[2013年第3週]2013年は本格ARアプリ元年? LINEはTwitterやFacebookよりすごい!

2013.01.21

Updated by Naohisa Iwamoto on January 21, 2013, 12:00 pm JST

広範囲に渡る大雪で明けた2013年第3週。晴れ着姿で雪の中を成人式に向かう若者の姿が印象的だった。この週にはKDDIがAR(拡張現実)の活用に本腰を入れることを示す複数の発表があった。ソフトバンクはイー・アクセスの一部株式譲渡を正式にアナウンスした。また、NHN Japanの無料コミュニケーションアプリ「LINE」が全世界で1億ユーザーを突破したというニュースもあった。

KDDIがARで一気に攻勢

これまでもARを使った実証実験などに積極的だったKDDIが、ARの本格活用期に入ろうとしているようだ。その1つの動きがKDDIとTotal Immersion S.A.(以下TI社)のソリューション。両社は商品パッケージやカタログなどを活用したAR情報表示サービスのトライアル提供を開始する。ARブラウザ「SATCH VIEWER」の「画像検索」機能を使って、対応商品パッケージやカタログなどを認識し、インターネット上にある商品情報や口コミ情報などを表示する。この技術は通信販売大手のニッセンが発表したアプリ「カタログカメラ」で採用されている。ニッセンの2013年春カタログでは、スマートフォンをかざすことで、全ページの商品情報の取得や商品の購入が可能になる。

また、KDDIとTI社は、スマートフォンやタブレットのカメラ越しに家具レイアウトを体感できるARアプリケーション開発をサポートする「TryLive Home」も提供する。自宅やオフィスなど、家具を配置したい空間に、タブレットやスマートフォンのカメラをかざして家具の3Dデータを配置することで、レイアウトを体感できる。第一弾としてBALSが提供するアプリケーションに採用が決定しており、FrancFrancの2013年Spring/Summerモデルを含む商品レイアウトをスマートフォン画面で楽しめる(関連記事:KDDI、商品パッケージやカタログに「かざす」AR情報サービスのトライアル提供を実施)。

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さらに、ナビゲーションアプリでもARを活用する動きがあった。KDDIは、ナビタイムジャパンと共同で提供している「auナビウォーク」と「au助手席ナビ」を、グーグルのコンテンツ配信サービス「Google Play」からダウンロードできるようにする。これにより、KDDI独自の「au Market」だけでなく、幅広い入り口を提供できるようになる。名称は「auナビウォーク for Google Play」と「au助手席ナビ for Google Play」。サービス開始にあわせ、端末のカメラで撮影した実際の風景上に、線や矢印で進む方向を案内する「ARナビゲーション」機能を新たに追加する(報道発表資料: 「auナビウォーク for Google Play」、「au助手席ナビ for Google Play」の提供開始と機能拡充について)。

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LINE1億ユーザー達成、SBがイー・アクセス株譲渡

登録ユーザー数の推移グラフ
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日本発のアプリで金字塔が打ち立てられた。NHN Japanは2013年1月18日、同社が運営する無料コミュニケーションアプリ「LINE」の登録ユーザーが、全世界で1億人を突破したと発表した。2011年6月23日にサービスを開始してから1年7カ月という短期間に急速に成長した。1億ユーザー達成にかかった期間はLINEが19カ月だったのに対して、Twitterは約49カ月、Facebookは約54カ月という。日本発のアプリが海外の並み居る有名アプリよりも全世界を相手に短期間で成功した例からは、日本の産業の進む1つの可能性が見えてきそうだ(関連記事:LINEユーザーが世界で1億人に、1年7カ月で達成)。

業界の動向をもう1つ。ソフトバンクは2013年1月17日、2013年1月1日に完全子会社としたイー・アクセスの一部株式を、グループ外の他社11社に譲渡することを決定したと発表した。議決権がある「B種種類株式」の一部をグループ外の他社11社に譲渡するというものである。B種種類株式は、全体の発行株式の約0.75%で、そのうち66.71%を他社に譲渡する。これにより、イー・アクセスはソフトバンクの完全子会社から、持分法適用関連会社へと変わる(関連記事:ソフトバンク、イー・アクセスの一部株式を11社に譲渡

東京メトロのエリア拡大状況、Android搭載小型STB登場

エンドユーザーに関連があるニュースを3本紹介する。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの4社は、東京メトロ丸ノ内線、銀座線および半蔵門線で携帯電話サービスのエリアを拡充した。新しいエリアは、丸ノ内線の淡路町駅〜東京駅(1月17日に提供済み)、銀座線の銀座駅〜青山一丁目駅と半蔵門線の神保町駅〜三越前駅(1月24日正午から提供)。各線とも、携帯電話サービスを利用できる区間の充足度が高まっており、2012年度中に東京メトロ全線でサービスを両できるようにする計画が、着実に進行している(報道発表資料:東京メトロ一部路線における携帯電話のサービスエリア拡大について)。

スマートフォンやタブレット端末と家庭の大画面テレビの連携を高める製品が登場する。KDDIが2013年2月中旬以降に提供する、小型のスティック型STB「Smart TV Stick」がそれだ。Wi-Fi環境とHDMI端子搭載テレビがあれば、手軽にテレビでAndroidアプリや映像サービスなど多様なコンテンツを楽しめる。Smart TV StickはAndroid 4.0をOSに搭載したSTBで、操作はBluetoothを使った付属の専用リモコンや、リモコンアプリをインストールしたスマートフォン、タブレット端末で行う(関連記事:KDDI、家庭のテレビをスマートテレビに変える「Smart TV Stick」を提供)。

タブレットは2012年にブレイク!? MMD研究所(モバイルマーケティングデータ研究所)は、タブレット端末の利用実態調査の結果を発表した。それによると所有しているタブレット端末の種類では、iPadが群を抜いて多く、62.7%を占めた。2位は低価格な7インチクラスのタブレット端末というトレンドを作り出した「Nexus 7」で、後発ながら5.3%を占めた。3位は「GALAXY Tab」で5.0%だった。タブレット端末の購入時期についての設問では、6割超が2012年に購入したと回答している(関連記事:所有者の6割超がiPad、タブレット購入は2012年が中心--MMD研究所)。

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国の次期Xバンド通信衛星、NHKのIPラジオなどで進展

このほかのトピックを紹介する。防衛省は、「Xバンド衛星通信中継機能等の整備・運営事業に係る事業」について、スカパーJSAT、NEC、NTTコミュニケーションズ(以下NTT Com)の出資により設立されたディ-・エス・エヌの間で事業契約を締結した。この事業は、国の次期Xバンド通信衛星システムを整備・運営するPFI事業。Xバンド通信は、衛星通信で利用されている他の帯域に比べ気象などの影響を受けにくいという特徴がある。防衛省が利用している現用機の設計寿命到来が予定されており、後継衛星の整備が急務となっていた(関連記事:Xバンド衛星通信システム整備・運営事業をスカパーJSAT、NEC、NTT Comが受託)。

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総務省は、NHKのIPサイマルラジオサービスに、一部の地域放送番組を追加して提供する業務を認可した。提供エリア、形態および提供品質については現行のサービスと同様となる。国内での聴取地域制限は行わない。総務省は業務認可の理由として、難聴取対策の補完的な措置としての効果検証のためには、聴取者の要望を踏まえて地域放送番組を加えることでより幅広いデータの収集ができること、また地域放送番組の提供の在り方の検証も必要な課題であることを挙げている(関連記事:総務省、NHKのIPサイマルラジオに地域放送番組の追加を認可)。

昨年の第3週のできごと

・スマホと固定のセット料金などKDDIが踏み込んだ施策
・スマホの実機検証サービス、スタートアップ企業へ出資
・手軽に本格ホームセキュリティ、iPadなどで医療画像を扱う

[2012年第3週]KDDIが新サービスと端末、ドコモがスマホ検証サービス、警備員急行のホームセキュリティ

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。