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M2Mの普及、IoT時代の到来を展示から実感──ワイヤレスジャパン2014

2014.06.04

Updated by Naohisa Iwamoto on June 4, 2014, 11:02 am UTC

5月28日〜30日に開催された「ワイヤレスジャパン2014」「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2014」では、例年にも増して機器同士の通信の「M2M」(Machine to Machine)やモノのインターネットの「IoT」(Internet of Things)の展示が多く見られた。ソリューション側、ソリューションを支えるネットワーク側の両面からの展示があり、M2MやIoTが地に足が着いた存在になりつつあることを示した。

KDDI研究所のブースには、M2M時代のネットワークのデータ収容能力を高める通信方式の展示があった。M2M時代になると、データ量の少ないパケットが非常に多くネットワーク上を飛び交うことになり、ネットワークのビットレートだけでなくパケットレートがある時点で飽和してしまう危険性がある。このため、KDDI研究所では、複数のM2Mのパケットを集約してパケット数を減らし、ネットワークへのM2Mデータの収容力を向上させる技術を開発した。具体的には、パケットの内容をテキスト解析してパケットの「待機可能時間」を識別する処理により、M2Mパケットなどの遅延が問題となりにくいパケットを識別し、集約して送出する。スマートフォンが急速に普及したときに発生した「シグナリング問題」と同様の事態が、M2Mの普及期に発生しないように事前にネットワーク側で対策を研究しているとのこと。

▼シミュレーションの様子を示した展示。中央のグラフではビットレートは高まるが(中央上)、パケット集約によりパケットレートは抑えられている(中央下)
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インターネットイニシアティブ(IIJ)のブースでは、発表したばかりの「IIJ M2Mプラットフォームサービス」などを含む、ワイヤレスM2Mソリューションの展示が行われていた。IIJ M2Mプラットフォームサービスでは、ノンプログラミングでM2Mシステムを構築できる「ThingWorxプラットフォーム」を開発基盤として採用しており、パソコン画面上のドラッグアンドドロップで簡単にM2Mシステムの構築や改良などができることをデモで示した。

▼日照、温度、電力消費量などをモニターするM2Mシステムをノンプログラミングで簡単に作れる例をデモ
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情報通信研究機構(NICT)のブースでは、スマートユーティリティネットワーク(SUN)の国際標準規格である「Wi-SUN」に関する研究開発の成果が展示されていた。SUN無線機の社会展開を目指すWi-SUNアライアンスでは、IEEE802.15.4gをベースとして、認証・相互接続性試験に向けた使用を「Wi-SUNプロファイル」として規定している。

NICTのブースでは、小型、省電力のWi-SUN無線機の開発、プロファイル実証などの成果が展示された。Wi-SUN無線機は、20mm×40mmと小型化に成功した無線モジュールを展示したほか、920MHz帯のアンテナやバッテリーなどを装備した国内向けの実装例も展示した。さらに、USB端子付き無線機により、パソコンのCPU利用率などをモニターするデモも行い、Wi-SUNの利用範囲がスマートメーターなどにとどまらず、広く可能性があることを示していた。

▼左にWi-SUNの無線モジュールなどを展示、右ではUSB端子付き無線機でデモを行っていた
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また、Wi-SUNプロファイルの1つであるECHONET Lite用Wi-SUNプロファイルの実証の様子も展示した。ECHONET Lite用Wi-SUNプロファイル実装したWi-SUN無線機、パソコンと照明機器を接続し、照明の色をパソコン側の操作で変化させていた。「ECHONET Lite用Wi-SUNプロファイルは、東京電力がスマートメーターとHEMS間無線方式(Bルート)として採用を決定し、2020年までに2700万戸の導入を見込んでいる。Wi-SUNプロファイルは各種のアプリごとに必要な機能を盛り込んで作ることが可能」(NICTの説明員)で、利用法に応じたプロファイルの作成により普及が進むことを示唆した。

▼Wi-SUNを使って家電の制御ができることをデモ。ここでは照明の制御を行った
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NICTブースでは、実際のWi-SUNの利用状況の展示も行っていた。防災用の通信システムとしての実験で、鉄道会社と行っているもの。Wi-SUN無線機を搭載した店頭センサーを線路の盛り土や切り通しなどに設置し、万が一の崩落などの際にWi-SUNのマルチホップでコグニティブWi-SUNルーターに情報を集め、センターに通報するというもの。実用化への進展が期待される展示だった。

▼左の黒い円筒が転倒センサー、右奥で開いている白いボックスがコグニティブWi-SUNルーターで、災害時の情報をセンターに通報する
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920MHz帯を使った広域無線センサーシステムの技術を展示していたのがNTT。2012年に開放された自営無線用の920MHz帯を活用し、独自の技術によるM2Mの広域通信システムを開発した。9.6kbpsと通信速度を抑え、一方で3.5kmといった広い半径でM2M通信が行える。太陽光発電システムのモニタリングや農業など、多方面での利用を見込んでいる。NTTエレクトロニクスが2014年度内に事業化する計画だという。

▼NTTの広域無線センサーシステム。左端が端末、中央が基地局
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富士通のブースでは、農業などの一次産業で活用できるようなマルチセンシングネットワークの展示を行った。牛に端末を取り付け、放牧地から牛の健康状態と位置を監視するシステムの実例をデモしていた。牛の放牧システムでは、特定小電力無線を利用して牛に取り付けた端末とセンサーノードで通信を行い、牛の現在位置などの情報を得る。すでに九州大学と大分の牧場で実験を行っており、会場では実際の「牛の位置」をモニターすることができた。「日本の第一次産業の変革にICTで協力したい」(富士通の説明員)という壮大な構想の一歩が踏み出されているようだった。

▼牛に取り付ける端末と、牛の現在位置のモニタリングの様子
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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。