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Kindleで本を売ってみて気がついたこと(2)

2013.02.04

Updated by Mayumi Tanimoto on February 4, 2013, 10:15 am JST

さて、Kindleで本を売ってみて気がついたことシリーズの第二回目であります。

電子出版エージェントという商売は成り立つ

私の場合は、実は企画、校正、レイアウト、カバーデザイン、ファイル作成&アップ、販売管理、プロモの企画および実行を出版者さんやって頂いているわけですが、これらの作業を、出版社や独立エージェントが請負い著者は執筆のみに集中、というのは十分ありだと思います。

著者が自分でやることも不可能ではないですが、プロの仕事は確実で質が違います。特に企画の段階で、第三者のレビューは必須です。その上早い。自分でやると時間がかかります。本業を持ちつつ電子書籍を出している他の著者の方ともお話ししましたが同意見。特にプロの目で企画や構成をレビューしてくれる人、校正のプロに入ってもらうのは必須です。

しかし、これから何か書きたいと言う方で、プロの方にツテがある方ばかりではありませんので、まずは誰かを探すのが悩みの種です。どこでどうやって編集者さんやデザイナーさんと知り合ってよいかわからない、という人大勢います。SNSや掲示板で探す方法もありますが、仕事してもらわないと質はわかりません。それに、すでにどこかの出版社に勤めている方にフリーでお願いするのはちょっと難しいです。

電子書籍で先行している英語圏ででは、そういう著者の悩みを解決するエージェントがあります。例えば、Archway Publishing は、著者向けに様々なサービスをパッケージ販売していますが、ビジネス本著者向けだと2199ドルからです。広報から販売管理まで請け負うパックもあります。ネットでさくっと注文できるのも気楽でいいですね。昔からある自費出版の支援サービスが、電子書籍版になったわけですが、SEOなどのネットプロも作業が入っていたり、値段が手頃なのが魅力です。こういうのが日本でも出てこないなかあと思う次第です。

インディーズ電子書籍の目利きサイトが必要

私もKindle本を出させて頂くにあたり、他の著者の方のKindle本を色々買ってみたわけですが、書き手としては一般的な知名度はないけども、かなり面白い電子書籍を出している方、面白い漫画を書いている方がかなおられます。日本ではまだまだ数が少ないですが、インディーズ作家オンリーのレビューサイトの需要が出てくるでしょう。Amazonのレビューは質がばらばらで、わかりにくいので、ある程度の文才があり、本が好きな方が書いたら面白いと思います。

英語圏だとindie e-book reviewとか、Self-Publishing Reviewがありまして、人気になっています。

ベストセラーを目指す必要はない

電子書籍は紙の本に比べると制作コストがかかりませんし、保存も流通も手間とコストがかかりません。少部数を「どうしても欲しい」という「ニッチ」なお客さんに売ることができればいいわけです。ベストセラーを目指す必要はなく、ニッチなお客さんに受ければ良いんです。自分が知ってるニッチなネタ、特殊な妄想を「いい」という人がどこかにいるんです。さらに、保存も増刷も関係ないので「細く長く」売ることが可能です。

面白ければ知名度は関係ありません。これって、村のチーズ職人が少数生産する癖の強いチーズみたいなものです。癖があるから好きな人は好き、職人の名前は知られてなくても買いに来ます。その商品しかないからです。好き者は口コミで「あれはいいよ」と同好の人に伝えます。本も同じです。ただし電子書籍が違う所は、買うのが簡単だという点、口コミは凄まじい早さで広まるという点です。

日本では電子書籍はこれから

日本ではガラゲーでヤオイやら18禁漫画を読んでいた層がいるから、電子書籍市場はすでに一周した、成熟した、と言っている方もおられます。

私は違うと思います。

Kindleやタブレットで電子書籍を読むという体験は、ガラゲーやPCとは全く異なる体験です。まず操作も読書も楽なこと。Kindle Paper Whiteの画面の見やすさはガラゲーやPCとは比べ物になりません。タブレットでも操作は楽々。

購入も簡単です。Kindleの場合はAmazonで他の物を買う感覚でワンタッチで買うことができるのが大きいです。ほんの数秒の操作です。なれてしまうと辞められません。買うこと自体も楽しいのです。ガラゲーでヤオイを買うのと大違いです。

この操作性と購入の簡単さは、これまでガラゲーやPCで電子書籍を読んでこなかった層や、そもそも本をあまり読まない層の需要も掘り起こすと思います。

皆さん覚えてますか?iPhoneが出た頃に「こんな物は日本では普及しない。日本の文化には合わない。日本人はガラゲーが好きだしあれに慣れているからね」とテレコム業界のアナリスト達や記者が言っていたことを。

ちなみに、「Kindle本はKindleがないと読めないんでしょ?」と思っている方も少なくない様です。iPadやiPhone、Androidでもアプリ入れれば読めるという件に関して、Amazon Japanさんには頑張って啓蒙活動して頂きたいです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。