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ベンダーから見たモバイルネットワークの課題とソリューション(前編)

2013.05.30

Updated by Asako Itagaki on May 30, 2013, 15:44 pm UTC

5月29日から31日まで、東京・国際展示場でWireless Japan 2013が開催されている。基調講演には大手ベンダーのエリクソン・ファーウェイ・ノキアシーメンスネットワークス・ZTEが登壇し、モバイルネットワークの課題と自社の取り組みを紹介した。2回にわけてレポートする。

「安定性」を強調したエリクソン

20130530-er.jpgエリクソン・ジャパン CTOの藤岡雅宣氏は、豊富な人材と経験にもとづく「エリクソンのネットワークの安定性」を随所で強調しつつ、同社の設計思想について語った。

現状のトラフィックの増大には、制御信号の増加とデータそのものの増加という2つの側面がある。データ処理と信号処理の割合をトラフィックパターンの変化にあわせて柔軟に変えることが鍵となる。また、パケットを処理するノードの冗長化による信頼性向上や、LTEの周波数間負荷分散による特定周波数の不可集中回避など、負荷が大きい時によりよいユーザーエクスペリエンスを提供する考え方を紹介した。

Hetnet(参考情報)への取り組みとしては、大都市中心部へのマクロセルと同一周波数を利用した小セル導入による周波数利用の効率化と、Wi-Fiを含めてユーザーに最適なネットワークサービスを提供する「One Network」の考え方を紹介。

▼ネットワークレベルでセルラーネットワークとWI-Fiの両方からアクセス回線を選択する。
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SDNの進化系として、データセンター内だけでなく無線アクセスからバックホールまでのネットワークを一体として管理し提供する「サービスプロバイダSDN」の概念を紹介した。ユースケースとして、オーストラリアのTelstraと実験中のVNS(Virtual Network System)の例をあげ、2013年中の実用化を目指すとした。また、ネットワーク上に分散して存在するクラウドをネットワーク化するエリクソンクラウドシステムについても紹介した。(サービスプロバイダーSDNとエリクソンクラウドシステムについてはこちらを参照

OSSについては、カスタマーエクスペリエンス、コネクテッドデバイス、クラウドを重点領域と考え、フルラインナップを提供している。ビッグデータについては、ネットワーク装置の上を流れたりネットワーク装置がもっているデータを対象にして、リアルタイムで分析してサービス品質に生かすための開発をすすめている。

▼ビッグデータ分析の応用例
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M2M(参考情報)については、2020年には500億と予想されている接続量に対応するために、SaaS型で提供するEricsson Device Connection Platformを紹介。また、eSIMによる柔軟な事業者選択の可能性も提示した。

無線ネットワークの将来については、キャパシティ・データ速度拡張、省電力、M2M対応を主要課題として、5Gに関する技術検討が進んでいることを紹介した。

▼キャパシティ増強にはスモールセル(参考情報)の活用が鍵となる。上り方向にはスモールセル、下り方向にはマクロセルの非対称な運用についても視野に入れた検討が進められている。
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ネットワークの複雑化に対応するファーウェイ

20130530-hu.jpgファーウェイ・ジャパン 副社長兼ソリューション&マーケティング本部長の周 明成氏は、モバイルブロードバンドの現状認識として、加入者数の急速な増加、端末のパワーアップ、クラウドによるサービス同期やオンデマンドサービスの増加、データトラフィックの増大により、急速な規模の拡大に直面しているという認識を示した。

こうした状況下で直面している課題として、複数の周波数帯域と通信方式が混在することによるネットワークの複雑化、多様化する端末が存在するネットワーク環境下での継続的かつ一貫したカスタマーエクスペリエンスの提供、OTT(参考情報)の役割の増大によるネットワーク負荷への対応を挙げた。

▼2020年の接続数、シグナリング、データトラフィック予測
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▼継続的かつ一貫したカスタマーエクスペリエンスの提供には、ネットワーク側にも課題がある。
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これらに対するソリューションとして、「ノーエッジ」「ネットワーク簡素化」「オンデマンド」を提案した。「ノーエッジ」はマクロセルからスモールセル、屋内局、Wi-Fiまで含めたHetNetと、セル間・周波数間の協調技術で実現する。

▼HetNetを実現する技術
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ネットワーク簡素化は、ベースバンドユニットやラジオユニットを共通化して複数の周波数帯に対応するOne Radio、複数のベースバンドユニットを束ねてクラウド的にコントロールするOne Controlにより実現することで、シンプルな構成と高いスループットを両立する。One Controlの導入で、スループットが平均50%、セルエッジユーザーについては200%向上した。また、複数の通信方式を集約してコントロールすることでさらにネットワークはシンプルにできる。

オンデマンドは、言い換えると、ネットワークの仮想化とオープン化により、モバイルネットワークのビジネスモデルを垂直統合から、ネットワークリソース・コントロールレイヤ・アプリケーションレイヤの相互間を接続するモデルに変える。

▼オープン化されたネットワーク
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上のレイヤーはOTTの領域だが、それ以外のレイヤーで通信事業者は収益性の高いネットワークサービスを提供できる。

後編に続く

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。