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HetNetにおけるアウトドアの小セル設置の効果は限定的--エリクソン藤岡CTO

2013.06.04

Updated by Naohisa Iwamoto on June 4, 2013, 18:07 pm JST

20130604_ericsson000.jpgエリクソン・ジャパンは2013年6月4日、報道関係者向けの技術説明会を開催し、「ヘテロジニアスネットワーク(HetNet)に対するエリクソンの取組み」について解説した。エリクソン・ジャパンでチーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)を務める藤岡 雅宣氏は、トラフィック急増への対策としてHetNet(参考情報)による容量増大は有効な手段としながら、「単に小セルを配置すればいいというものではない」との見方を示した。

藤岡氏は、今後のモバイルネットワークの展開で、キーとなる技術の1つとしてヘテロジニアスネットワーク(HetNet)を掲げた。HetNetは、マクロセルやスモールセル(参考情報)、ピコセルなど基地局がカバーするエリアの広さが異なるセルや、異なる通信方式を1つのエリアで混在して利用する技術。HetNetの導入によって、ネットワーク容量を増やしてトラフィック増大に対処することが求められる。

HetNetで容量増加に寄与する3つの方法

藤岡氏は、HetNetによるネットワーク容量の増加には、3つの方法があると指摘する。1つは、現状のマクロセルの基地局の性能を強化すること。もう1つは、マクロ基地局の増設や高密度化を実現すること。そして最後にマクロセルより小さな「小セル」を追加する方法を挙げる。「HetNetでは、単に小さなセルを置くのではなく、マクロセルの基地局の強化、増設をしてもトラフィック増加に対処できないときにはじめて、小セルを追加するというのがエリクソンの考え方」(藤岡氏)と説明する。

▼HetNetでネットワーク容量を増やすための3つの方法20130604_ericsson001.jpg

1番目のマクロセルの基地局強化では、信号トラフィックの効率化、マルチキャリアの採用、2014年ころに日本にも導入されるキャリアアグリゲーション(参考情報)、周波数の追加やLTEなどの新方式の採用、MIMO(参考情報)など、さまざまな手段を使えば、HSPAの容量を10倍程度まで拡張することが可能だという。基地局強化では対策が間に合わないときは、2番目のマクロセル基地局の増設、高密度化を検討することを提案する。例えばエリクソンが提供するAntenna-integrated radio(AIR)と呼ぶ無線ユニットとアンテナを一体型にしたソリューションや、小型ベースバンドユニットを使うことで、機器の設置面積を大幅に削減できる。空いたスペースにさらにアンテを設置できれば、新しくサイトを設置するコストをかけずにネットワークの高密度化を推進できる。

こうした機能強化や増設・高密度化で間に合わないときに3番目の「小セルの追加」を検討するというのがエリクソンの考え方だ。まず、HetNetに導入する小セルは、マクロセルとシームレスに使えることが一番重要であり、基地局間の協調が必要になる。そのためのエリクソンのソリューションが「One Network」で、HetNetの要素となるさまざまなサイズのセルや通信方式に対応する基地局の制御を一体化してネットワークの協調を実現する。藤岡氏は、「異種の基地局が協調することで、セルエッジで2~10倍のデータレートを得られようなパフォーマンス向上が可能になる。マクロセルと小セルで同じ周波数を使うソリューションならば、協調しない場合に比べて、3割から7割の基地局を減らせて、5割以上のトータルコスト削減につながる」と協調動作を前提にしたHetNetの導入効果を説明する。

アウトドアでは小セルはあまり使える場所がない

ただし、HetNetを構築するときに単に小セルを採用すれば問題が解決するとはいかないようだ。藤岡氏は、小セルの導入で起こる問題を指摘する。

▼ダウンリンクはマクロセルで、アップリンクはマクロセルと小セルの双方を使う「マルチポイント受信」の考え方20130604_ericsson002.jpg

「例えばマクロセルの出力が10W、小セルが1Wとすると、マクロセルと小セルのセルエッジにおいて、ダウンリンクではマクロセルの電波が強い。一方でアップリンクは、端末の出力が同じならば近くにある小セルの方が強い電波でやり取りできる。ダウンリンクとアップリンクで同じ基地局に接続すると、効率が悪くなる。その解決策として、アップリンクのマルチポイント受信という技術がある。セルエッジでは、ダウンリンクはマクロセルを使い、アップリンクは小セルとマクロセルの両方を使って合成する。これにより、ダウンリンク、アップリンクとも最良の環境で通信できる」(藤岡氏)。HetNetでは、通信の効率を最も高めるためにこうした技術の導入が必要になってくる。

また、ネットワーク設計でも小セルの導入に制限が加わる。「マクロセルの電波が強いところに小セルを置いても、トラフィックはオフロード(参考情報)されず、大きな容量増加の効果は得られない。一方で、マクロセルの基地局から離れたセルエッジに小セルを設置すると、小セルで大きなカバレッジが得られ、ビットレートの改善も大きい。小セルはどこに設置しても効果があるとはいえず、適切な位置を決める必要がある」(藤岡氏)。

▼小セルが大きな効果をもたらすのはマクロセルの電波が弱い適切な位置に設置された場合に限られる20130604_ericsson003.jpg

藤岡氏によれば、「結論から言うとあまり小セルが使えるところは多くない」とのこと。アウトドアでは、都心部のビル影などでマクロセルの電波が弱いセルエッジ部分では小セルは効果的だが、それ以外の場所では小セルの設置効果は高くないと指摘する。「HetNetを導入しても、アウトドアの多くの場所では、マクロセルの強化や増設でトラフィック対策を推進するほうが効果的」(藤岡氏)という。

▼小セルを「追加」するのは都市部の一部エリアだけで、その他はマクロセルの強化や増設が適することを示す20130604_ericsson004.jpg

逆に、ビルや建物内のインドアのソリューションとしては、小セルやWi-Fiなどを組み合わせたHetNetが効果を発揮する。インドアは、「マクロセルの電波が強くないセルエッジ」という小セル設置の条件に合致するだけでなく、「実は、8割ぐらいのトラフィックはインドアで使われている」(藤岡氏)からだ。HetNetがカバーするエリアにインドアを組み入れることで、より大きなネットワーク容量増加の効果が期待できるとの見方を示した。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。