前回からイギリスの2010年の総選挙におけるネットの影響について書いていますが、総選挙の際に驚かれたことの一つに、選挙とは全く関係のないサイトでの政治関連の書き込みや議論が思った異常に盛り上がった、ということがありました。
例えば、イギリスの子育てコミュニティであるMumsnet や、値段比較サイトであるmoneysavingexpert.com (このサイトはドケチの友と呼ばれております)では、かなり活発な政治議論が展開されていました。選挙用の特設サイトや政治サイトとは異なり、「私はこんな問題があるの」という気軽な書き込みに対して他のユーザーが会話する様に意見を書き込んでいく、というノリです。イギリスの政治シンクタンクであるHansard Societyの報告書でも「選挙に影響を与える重要な議論が飛び交っていた」と指摘されています。これらサイトで議論が活発だった理由は、普段からユーザーがコミュニティに熱心に参加しているため、選挙以前から良質なコミュニティが形成されていたためでしょう。
こっそりとユーザーの振りをして選挙運動をするのは好ましくありませんが(ユーザーは私達が思っている以上に賢いのです)普段から政治家自身がコミュニティに参加したり、ソーシャルメディアを通じてユーザーと交流するなどのマメな活動は、選挙コンサルや広告代理店の口車に乗って選挙のためだけにサイトを特設するよりも、費用対効果が高いのかもしれません。
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