東京オリンピックの話題で日本が盛り上がっているのを、欧州の流刑地と呼ばれていたマルタ島のケーブルテレビでこっそりと眺めておりました。
ワタクシはそもそも運動が大嫌いな肥満児で、運動会の前には一ヶ月前から雨が降る様に、お天道様に祈祷の舞を捧げていたのです。野球もサッカーも全くみませんし、高校野球は一度も見たことがないという信じられない非国民です。(なぜならワタクシの性的嗜好は脂ぎって疲れ果てた中年であり、坊主頭の高校生なんて青臭いので興味がないからです)
あんた二週間ばかりの祭りに大金をかけるなら、せめて例の場所の作業員に毎日焼き肉をおごってあげなさい、と思っているわけですが、やることになってしまった以上、仕方がありません。失敗するより成功した方が良いと考えています。ただし、今後7年間も祭り騒ぎになるのかと思うと、バキュームカーに頭を突っ込みたい気分です。
さて、ワタクシは各方面より非国民と呼ばれていますが、日本のある保守系雑誌が発表した「ネット談論マトリックス」なるものにおいて、「スーパー保守現実主義愛国ネット芸人」と認定されております。一応愛国者です。
一応愛国者ですから、東京オリンピックの成功に向けて、通信サービスの点でアドバイスを差し上げたいと思います。
まず、このブログの第一回で書いた「サービス説明は無人野菜販売所並みにしろ!」を、復活させる時が来ました。
オリンピックが始まると、世界各国から様々な人がやってくるわけですが、通信サービスの点で恐らく世界各国の人々が腰を抜かす点は「日本ではプリペイドのSIMカードを簡単に入手することができない」という点でしょう。
こういうことを書くと、「日本通信のb-mobileがあるじゃないか」「ソフトバンクのプリペイド携帯があるじゃないか」と書いてくるタワケ者がおります。
ワタクシはどちらももっています。ソフトバンクのプリペイド携帯はバックップ用も含めて3台も持っています。そして、日本のプリペイドに関しては他社のサービスも殆ど全部試しています。そして、何度も酷い目にあっています。はっきり言って呆れを通り越して、怒りを感じています。10年以上酷い目にあっているからです。
日本でプリペイドSIMをゲットするには、ネットから申し込んで日本のホテルなり固定住所に郵送してもらったり、成田で受け取ったり、店舗に出向いて英語が全く通じない店員とやり合って入手しなければならない、という様々な障害が存在しています。
ワタクシは短い滞在中に、実家の用事やら打ち合わせの間をぬってこれらをゲットしていますが、ゲットするのも使用開始するのも凄まじく面倒くさいのです。例えば、N社のサービスはなぜか途中で使えなくなってしまったり、コールセンターが全く繋がらなかったり、携帯をもっていないのに初期設定を携帯からやれとなっていたりです。
「何がお•も•て•な•し」だ、クソ!」と障子に穴をあけて怒りを鎮めています。
日本語がわかるワタクシでこの有様ですから、短期滞在の外国人がそれらをクリアしてプリケイド携帯なり、プリペイドSIMをゲットするのは殆ど不可能です。
これを体験し「ああ、日本はさすがタケシキャッスル(「風雲!たけし城」は世界各国で放送されており、いまだに大人気なのです)を作った国だよなあ、と言うのです。ワタクシが付き合いのある様々な国の皆さんや、うちの家人は「ドモ アリガト ミスター・ロボットの国がこんなにしょぼいのかよ」と海に向かって叫んでいます。
そもそも、日本は自販機も券売機も道路標識も日本語ばかりで、道の作りは滅茶苦茶で、日本語のわからない外国人は町をウロウロするのはかなり難しいのです。そもそも町の作りがそんな風にガラパゴスなんだから、「サービス説明は無人野菜販売所並みにしろ!」で指摘した様に、プリペイドSIMは空港の自販機でバンバン売るべきなのです。そして、コールセンターから申し込みページからちゃんとした英語対応にしろ、でございます。ローマ字で「KEITAI」と書いても宇宙人の暗号にしか見えません。
繰り返しますが日本は世界有数の金持ちの国で、自称技術立国です。ですから、そんなものは簡単にできるはずなのです。
次に、町中のWi-Fiです。日本には無料Wi-FIが殆どありません。ワタクシは帰国の度に都内やその近郊を動き回りますが、喫茶店や飲食店、市役所、駅などではなかなか見当たりません。あっても、例えばウェブから日本語での登録が必要だったり、有償だったりします。
ウェブにアクセスがない外国人がどうやってユーザ登録しろというんでしょうか?日本語がわからないから、ネットカフェがどこにあるかもわからないし、使い方もわからないのです。道はぐちゃぐちゃだから、探している間に道に迷ってしまいます。都内ならタクシーが捕まりますが、タクシーの運転手さんは英語がわかりません。
日本人は欧州を遅れている、何でも古いとバカにしますが、観光客を歓待したい都市や、外国人に自国の良い印象を売り込みたい国は、町中で無償Wi-Fiをバンバン飛ばしています。
例えばワタクシはマルタ島に滞在していますが、この共和国は観光で食べている国なので、公園から飲食店の8割ぐらい、カフェ、タクシー、空港、船など、ありとあらゆる所でWi-Fiは無償です。使用に登録も何も必要ありません。観光と投資家誘致で食べている国なので、ネットが使いにくいとなったらお客さんは戻ってきません。今やネットは水洗便所の様なものです。汲取便所ばかりの国に誰が滞在したいと思うでしょう?ですから、この島ではホテルでもWi-Fi無償がほぼデフォルトです。
ダメ国家イギリスでもオリンピック期間中は地下鉄で無償Wi-Fiが提供されました。そもそもイギリスではその辺の売店やスーパーで安価なSIMを販売しているのでWi-Fiがなくても困らないのですが。
ハンガリーなどの東欧でも無償Wi-Fiがバンバン飛んでいます。英語で登録できるサイトがあったり、そもそも登録が必要ありません。ちなみに、ハンガリーの会計士の月収は6万円ぐらいです。技術立国でも先進国でもありませんが、そのぐらいのサービスは提供できるのです。
これは技術の問題ではなく、サービスの問題です。そんな簡単なサービスすら提供できない国が何が技術立国で、何が先進国でしょうか。世界からやって来る人々が、プリペイドSIM さえ手に入らない国であることを知って「ああ、やっぱり汚染水漏らして当たり前のマヌケな国だね」と笑い者にするのが目に見えています。
日本の皆さん、必要なのはコンクリ打ちっぱなしでおしゃれなつもりのビルや、見た目は立派だけどスカスカの橋や、ロココ風のださいショッピングセンターじゃないんです。英語で道案内できるかどうかじゃないんです。何がどうなっていたら便利なのか、相手は困らないのか、という想像力なんです。
58万円のストラトキャスターと、20万円するエフェクターをもっているのに、アナーキインザUKすら演奏できないバンド、というのが、今の日本の姿です。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。