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アフリカ編2013(2)移り気なユーザとモバイルネットワークの現状

2013.09.19

Updated by Hitoshi Sato on September 19, 2013, 15:00 pm JST

アフリカにおける携帯電話市場の特徴を見ていこう。

(1)圧倒的なプリペイド市場:1人で複数枚のSIMカード保有

日本では馴染みがないかもしれないが、アフリカをはじめとした新興国ではプリペイドのSIMカードを購入して利用することが多い。アフリカにおいてもプリペイドのSIMカードが主流である。日本のような先進国で主流のポストペイド方式と異なり、基本料がかからないことや利用したい時に利用する分の通話料をチャージ(課金)して利用する。基本料金がかからないことから若者や学生などにも人気が高い。

また、通信事業者もプリペイドのSIMカード販売促進のキャンペーンを1年中行ってユーザ獲得に躍起になっている。例えば、「10円分の無料通話料金」がついていたり、「20通までSMS(ショートメッセージ)が無料で送信できる」など時期や国、通信事業者によって異なるが様々なキャンペーンを1年を通して実施している。一方ユーザは、プリペイドのSIMカードの選択肢が多いため、次々とSIMカードを購入することが多い。例えば「10円分の無料通話分がついている」といったキャンペーン時にそのプリペイドSIMカードを購入すると、10円分通話が終わったら、そのSIMカードはもう使わず、次のキャンペーン等を行っているプリペイドのSIMカードを買い求めることが多い。通信事業者はそれらの熾烈なユーザ獲得競争のために多くのキャンペーンを通年で行わなくてはならない。

SIMカードは町のキオスクや露天商などで売られている。最近ではアフリカでもeコマースが浸透してきており、eコマースのサイトで携帯電話とセットでSIMカードを販売していることもある。例えば、ナイジェリアの通信事業者Airtelは2013年7月、同国のオンラインショッピングサイトKongaでスマートフォンや携帯電話を購入した際に、プリペイドSIMカードで20通分の無料SMS(ショートメッセージ)、国内海外割引通話料、200MB以上のデータ通信利用時には30%割引になるなどの5つの料金サービスが受けられる「Airtel Konga」を開始した。

アフリカでは日本のように通信事業者の料金プランに長期利用者向けの割引サービスなどはほとんどない。ユーザも通信事業者に対する愛着心や固執はほとんどない。1人のユーザが複数の通信事業者のプリペイドSIMカードを保有していることが多い。また1つの通信事業者のプリぺイドSIMカードを複数枚、保有していることも多い。このように1人で複数枚のプリペイドSIMカードを保有していることから、人口あたりの携帯電話普及率が100%を超える国も登場している。これはプリペイドのSIMカードの販売枚数がカウントされているからである。

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つまり、「アフリカで携帯電話が急速に発展している」という国内外のメディアによる報道を良く見かけるが、実際にはプリペイドSIMカードの普及であり、1人が複数枚保有することによって、それらが携帯電話加入者数としてカウントされていることから、携帯電話を保有している人は多いが実際にアクティブに利用されているのがどの程度かを把握することは難しい。アクティブな利用率というのは数字として出てこない。例えば「1か月間利用していない」といった、何を基準にしてアクティブであるかという定義がないことも、その一因である。

2013年8月にアフリカで事業展開を行っている南アフリカの通信事業者MTNが合計2億ユーザを突破したと報じられた *1。またアフリカで最大の携帯電話加入者数を誇るナイジェリアで2013年8月に1億2,000万を突破したと報じられた 。しかし実際にアクティブなユーザがどの程度存在するかは明らかにされていない。これらの数字はあくまでもSIMカード販売を元にしているので1人で複数枚のプリペイドSIMカードを所有していることが多いアフリカでの携帯電話加入者数の実態把握は難しいだろう。

そのため、通信事業者にとっても加入者数が多いことは確かに良いことではあるが、その加入者数がどれだけアクティブで、通信費を使ってくれるかが収益の面から重要になっいる。

(図1)アフリカの主要国におけるプリペイドとポストペイドの比率
201309191500-1.jpg
(出典:各国の当局の公表値を元に作成)

*1 IT News Africa(2013)Aug 14, 2013 "Nigeria crosses 120-million mobile subscriber mark"(最終確認日2013年8月15日)

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(2)アフリカにおけるネットワークの特徴

アフリカではまだ多くが2Gである。(表2)で示したように、3Gをまだ導入していない国も多い。アフリカ50カ国での携帯電話加入者数が約7億2,749万に対して、3Gの加入者数は約9,493万(3G普及率13%程度)である。

▼(表2)アフリカ主要国携帯電話契約の3G比率
201309191500-2.jpg

アフリカでは都市部を中心にすでにスマートフォンや3Gに対応した携帯電話、タブレットも普及している。それでも3GのSIMカードを利用している人は少ない。彼らの多くは都市部にあるコーヒーショップやレストラン、学校などでWi-Fi(無線LAN)経由でインターネットにアクセスしている。アフリカのような新興国ではスマートフォンを保有しているが、2GのプリペイドSIMで利用しており、インターネットにアクセスする際はWi-Fiを利用するという人は非常に多い。

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カフェやレストランなど多くの場所で無料または安価でWi-Fiにアクセスできるスポットも増加している。彼らはWi-Fiに接続するために、その「スポット」に行く必要がある。 2013年6月にはケニアの通信事業者Safaricomがケニアの乗り合いバス「Matatu」(マタトゥ)で無線LAN(Wi-Fi)の提供を始めたと報じられた。1台あたり月に1,500ケニアシリング(約18ドル)である。「Matatu」の経営者も差別化に向けて車内でのWi-Fi導入を進めているとのことであり、若者や通勤客に人気があるとのことだ。現地の「Matatu」車内の表示では、乗客は「無料」でWi-Fiが使えるバスもあるようだ。通信事業者は3G網の構築や整備よりもWi-Fiの構築に注力している。

また日本では一般的になっているLTEの導入に向けて通信事業者によるトライアルも実施されているが、まだ商用化をしている事業者は少ない。2012年4月14日にアンゴラの通信事業者MovicelがLTEサービスの提供を開始した。また2012年5月16日には、ナミビアの通信事業者MTCがLTEサービスを開始している。今後は3Gの導入と普及よりも先にLTEの方が先に進むかもしれない。

▼(表3)アフリカにおけるLTE導入に向けた取組み
201309191500-3.jpg
(公開情報を元に筆者作成)

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。