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[Deloitte Mobile Survey 2012 #1]新興国モバイル市場を理解するための基礎データ

2012.09.11

Updated by WirelessWire News編集部 on September 11, 2012, 17:19 pm JST

1.はじめに

デロイトが独自に行った、モバイルコミュニケーションについての5大陸15ヶ国に渡るオンライン調査「2012年グローバルモバイル消費者調査」の結果について、特に新興国と日本について焦点をあてて報告する。
本調査は、成長途上にある新興国の中でも、特に注目すべき国に対してフォーカスをあてており、今後のコンシューマー利用によるモバイルコミュニケーションの変貌を予測する上での参考としていただければ幸いである。

2.調査概要

2.1調査手法

本報告におけるデータは世界15カ国でモバイルユーザーを対象に実施したオンラインアンケートに基づいている。調査実施期間は2012年5〜6月。2012年8月末時点において、クロアチアを除いた25,960人から得た回答を分析済みである。(クロアチア分は今後追加予定)
具体的には多言語オンラインアンケートプログラムを活用し、原則各国共通の質問を当該国の公用語にて行っている。

2.2調査対象

2.2.1調査対象国 (15カ国)
アメリカ、アルゼンチン、イギリス、カナダ、クロアチア、ドイツ、トルコ、日本、フィンランド、ブラジル、フランス、ベルギー、南アフリカ、メキシコ、ロシア

2.2.2回答者の構成
アメリカ、イギリス、ドイツ、日本など先進国8カ国からはほぼ全国レベルからの回答を得ており、回答者とその国の消費者全体の属性を比較して、あまり偏りがないといえる。
これに対し、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカなど新興国7カ国においては都市部における専門職者(比較的高所得者層)からの回答が多かった。

3.報告の構成

本調査内容を、6回に分けて報告する。各回のテーマは以下の通りであり、デバイスの普及状況や指向性だけでなく、利用形態についてのデータ分析結果となる。

第1回:調査概要と外部環境
第2回:デバイス普及状況と機種についての指向
第3回:オフロードの活用状況
第4回:料金感度
第5回:チャーン分析
第6回:アプリケーション活用の状況

4.調査対象となった新興国の回答者特性

今回の調査の特徴は、新興国の中でも、特に今注目すべき地域(南米、アフリカ、東欧、ロシア)を含んでいるということである。これら地域は、相対的に他国(先進国や、中国、インド等)と比べるとなじみが薄く、その意味で、モバコンシューマーのモバイルコミュニケーションのスタイルを理解するうえでは国や地域としての背景事情を理解しておくことが重要であり、まずはそれを紹介したい。

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4.1指標からの理解

表1は今回の調査対象となった国のうち、特に新興国に分類される国の一部について主要な指標をとりまとめた。

【表1】各国主要指標(※画像をクリックして拡大)
201209111700-1.jpg出典:総務省・外務省・IMF公表のデータを基にデロイトトーマツコンサルティング(以下、DTC)作成。データはすべて2010年時点のものである。

まず、理解しておく必要があるのは、これら新興国のモバイル通信サービスはプリペイド方式がほとんどであるということだ。したがって、携帯電話普及率は非常に高く、国によっては100%超となっている。ポストペイド主体の日本とは、根本的に大きく異なるため、これら新興国を市場として考えている日本企業にとっては、プリペイド型のモバイルコミュニケーションにおいて、どのような利用形態が形成されているかという視点での理解が重要である。

2点目は政策金利。一様に10%前後であり、超低金利が続く日本とは大きく異なる。次回以降で述べることになるが、新興国の中には、それでも割賦販売が多い場合がある。つまり、実質的にはそれなりに高額な消費だということがうかがえる。

3点目はインフレ率。一般的に新興国の市場を考える上で、インフレ率を考慮していくことは重要である。ただし、今回の調査対象国においては、大きくても10%以内に留まっていることから、大きな変動は当面はないものと思われる。

4.2新興国大都市圏の個別事情

前述のように新興国の調査対象は都市部の専門職層に偏っている。特にこれら国々の都市生活者の生活様式における特徴について少し触れておく。

特に交通事情はコミュニケーション、特にモバイルコミュニケーション様式に影響を与える。南米3カ国のうち、ブラジルの大都市(サンパウロ、リオデジャネイロ)の交通渋滞はひどく、アジアにおけるバンコク、ジャカルタのそれに匹敵する。またサンパウロの地下鉄のエリアカバー率は低い。インターネット利用に占めるソーシャルコミュニケーションの比率が高い(86% 2009年 JETRO調べ)といった特徴がある。

したがって、ブラジルは、国柄を考慮すると、交通網の整備とともに、周辺部の住民の取りこみも合わせ、モバイルインターネットの膨大な利用量増加が見込まれる。デバイスはこのようなライフスタイルに最も適した機器が選定されることになるはずである。

慢性的交通渋滞はブエノスアイレスやメキシコシティーでも同様である。モスクワやサンクトペテルブルクについても交通渋滞は日常茶飯事であり、地下鉄の整備は遅れている。また、この2都市は不動産価格の大幅な上昇が特徴であり、並行して耐久消費財や高級家電品への出費が多くなっている。

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5.デバイス普及の状況

5.1所有デバイス

表2に所有するデバイスの国別状況をまとめた。

【表2】所有しているモバイルデバイス(※画像をクリックして拡大)
201209111700-2.jpg出典:デロイト グローバルモバイル消費者調査2012

特徴的な点を以下に列挙する。

(1)日本のスマートフォン所有率が予想より高くない。
こちらについては回答者層のバランスが取れていたということと、平均寿命の高さに要因があると想定される。
(2)ブラジルが新興国において最も先進的な傾向を有する。
全体的に所有率が高く、特にタブレットの所有率も高い。ソーシャル大国としての所以といえる。
(3)ロシアの電子書籍所有率が相対的に高い。
(4)南アフリカは回答者が都市部の専門職(比較的高所得者層)に集中していたため、スマートフォンの所有率が78%等かなり極端な結果が出ている。

5.2インターネット利用に際してのデバイス

表3にインターネット利用に際してのモバイルデバイスの使用率をまとめる

【表3】インターネット利用に使用しているデバイス(※画像をクリックして拡大)
201209111700-3.jpg出典:デロイト グローバルモバイル消費者調査2012

こちらについてはデバイス所有とほぼ同様な傾向が出ている。

(1)日本のスマートフォンインターネット利用率は29%。
(2)ブラジルは他の新興国と比べてより多くのデバイスでインターネットを利用している
(3)南アフリカのスマートフォンによるインターネット利用は突出している。

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5.3スマートフォン及びタブレットの国別普及率

図1-1および図1-2に先進国も含んだスマートフォンとタブレットの普及率についてグラフで示す。どちらも新興国が高いのは回答者の属性の偏りによるものであることが想定されるが、とはいえ、日本におけるスマートフォン、タブレットの普及率は先進国の中でも高くないことが注目される。

またブラジルのタブレット普及率の高さについては前述の通りであり、こちらについても注目すべき点といえる。

図1-1スマートフォン普及率
201209111700-4.jpg

図1-2.タブレット普及率
201209111700-5.jpg出典:デロイト グローバルモバイル消費者調査2012

5.4一人当たりの平均デバイス所有台数

図2に国別の一人当たりの平均デバイス所有台数を示す。

デバイスの普及率と同様、日本は先進国の中でも低く、またブラジルは高い。新興国は調査対象が都市部の比較的高所得者層が中心となっているため、所有台数においても全般的に高めになっている。

図2所有するデバイス台数(単位:台)
201209111700-6.jpg出典:デロイト グローバルモバイル消費者調査2012

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6.第1回のまとめ

今回は調査概要とデバイス普及の全体的概要について報告した。主な論点は以下である。

(1)日本は先進国の中でも新しいデバイスの導入についての遅れが散見される。
(2)新興国の中ではブラジルが最も先進的な傾向を有し、デバイスの多様化、タブレットの保有率などに特にその傾向がうかがえる。
(3)以下については、更なる分析が必要である。
  ・ロシアにおいて電子書籍の保有率が高い。
  ・トルコのデバイス保有台数が最も高い。

次回はデバイスの利用状況をさらに掘り下げ、機種別の分析を報告する。

お知らせ

グローバルモバイル消費者調査の結果の紹介と、モバイル業界の今後のあり方についての考察を目的としたセミナー「<世界15カ国 26,000名のグローバルモバイル消費者調査より>新興国と日本の最新モバイル動向 2012」が、以下の通り開催されます。

  • 日時:2012年9月27日(木)13:30-17:00
  • 場所:デロイトトーマツコンサルティング株式会社 セミナールーム「ツインタワー」
    東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル4F
  • 主催:デロイト トーマツ コンサルティング株式会社
    TMT(テクノロジー・メディア・テレコミュニケーションズ)インダストリーグループ
  • 申し込みサイトはこちら

文・大西 俊介(デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 TMTインダストリグループ パートナー)

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