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アフリカ篇2013(11) 中国と日本の情報通信関連企業のアフリカでの取組み

2013.11.29

Updated by Hitoshi Sato on November 29, 2013, 14:50 pm JST

アフリカではHuaweiやZTEのようなグローバル企業に代表される中国企業の活躍が著しいことは周知の事実である。両社はアフリカの多くの地域で基地局から端末まで多くの事業を展開している。中国を代表するこの2企業はアメリカ市場では安全保障上の理由からビジネスが見込み難い状況であることから、今後もますますアフリカ(その他の新興国も含む)で積極的にビジネス展開を行っていくことだろう。また両社はアフリカ市場で赤十字や地元の大学と協力するなどCSR活動にも積極的である。

Huawei

Huaweiは1997年にアフリカ市場に参入し、20以上のオフィスと2つの研究開発センター、6つの研修センター(毎年12,000人の学生を受け入れている)がアフリカにあり、ここ10年で約150億ドルの投資をアフリカ市場にしてきた。2009年1月時点で4,000人以上の従業員が働いており、そのうち約60%(約2,400人)がローカルスタッフである。もう4年前のデータなので最新データは不明だが、ローカルスタッフが60%ということは残りの40%(約1,600人)は中国人スタッフということになる。今までに約1,000社のローカルの会社と協力し、現地で10,000人以上の雇用を創出してきた。マイクロソフトと提携してスマートフォンも提供したことがある(参考記事)。また同社が提供するAndroidスマートフォン「Ascendシリーズ」はハイエンド端末としてアフリカ市場での人気は高い。

▼Huaweiのオフィスのある国(Huaweiのサイトを元に筆者作成)
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▼Huaweiのアフリカにおける事業展開(出典:Huawei)
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【参考動画】
▼OrangeウガンダでのHuawei Ascend P6のローンチセレモニー(2013年)

▼Huaweiのアフリカでの戦略について紹介するニュース(2013年)

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ZTE

Huaweiと同様にアフリカで基地局や端末の提供で目立っているのがZTEである。同社は世界での売上高が約500億ドル(約4兆8,700億円)のうちアフリカでの売り上げは9.3
%である。ZTE全体で見るとアフリカは10%未満であるが、アフリカ市場における同社のプレゼンスはHuawei同様に大きくなってきており、アフリカ28カ国に事務所を構えている。
例えば2002年に参入したナイジェリアのZTEには従業員が1,000人以上いて、そのうち70%がナイジェリア人である。現地の通信事業者だけでなく、教育省や航空当局とも協力関係を築いている。例えば2010年に国家公共安全通信システムの構築で4億1,700万ドルのプロジェクトを契約し2012年に完成した。また同社は2013年10月にはエチオピア、ジンバブエ、モザンビーク、ニジェールなど、アフリカ15カ国の政府および企業と協力して再生可能な太陽エネルギーの利用を普及させていくことを発表した。アフリカでは絶えず電力不足に悩まされており、5億8,000万人以上の人々が健康にも環境にも有害な灯油ランプを住宅用照明に用いている。一方でアフリカには太陽光という優れた再生可能エネルギー源は豊富にあり、ZTEの再生可能エネルギー分野への投資には大きな期待がかかっている。このように情報通信分野以外にも多くの分野での活躍が目立っている。

▼ZTEのオフィスのある国(ZTEのサイトを元に筆者作成)
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【参考動画】
▼HuaweiとZTEのエチオピアでの通信インフラのアップグレードを提供することを伝えるニュース(2013年)

▼ナイジェリアでZTEが国家公共安全通信システムの構築を伝えるニュース(2013年)

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日本の情報通信業界のアフリカでの活動

一方で、日本の情報通信業界のアフリカ進出状況はどうだろうか。基本的には民間企業の直接投資である。ODA(政府開発援助)による情報通信分野でのアフリカへの投資や進出はほとんどない。ODAは基本的に被援助国から日本政府への要請に基づいて援助を行う。そのため情報通信分野のように急速に成長している分野では援助よりも民間企業による直接投資の方が効率的であろう。

それでは最近の日本の情報通信業界でのアフリカへの進出状況について見ていきたい。通信業界ではKDDIが南アフリカにデータセンターを開設したり、NTTが南アフリカのIT企業を買収するなどの動きがある。それ以外は基本的に製造業での進出である。携帯電話分野ではネットワーク基地局、端末などでは中国企業のプレゼンスが目立っており日本企業のプレゼンスはない。しかし情報通信分野全体で見ると、規模こそ大きくないものの、アフリカ市場に進出し現地で活躍している企業もある。

▼最近の日本の情報通信分野に関するアフリカへの進出状況(公開情報を元に筆者作成)
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アフリカにおける情報通信市場について携帯電話を中心に見てきた。現在、欧米や中国の情報通信関連企業のアフリカ市場への進出は著しい。一方で情報通信分野において日本企業の進出はまだ限定的である。アフリカでは中間層も急拡大してきたとはいえ1日2ドル以下の貧困層も多い。アフリカに進出しても情報通信分野ではすぐに収益を上げることは容易ではない。それでもアフリカは10億人の人口を抱えており、2050年には20億になると予測されている。長期的な世界戦略を持てる企業がアフリカ市場でも勝てることができるだろう。アフリカに進出している世界各国の企業の思惑はそれぞれだろう。

そしてアフリカにはまだ政治的、経済的リスクも存在している。治安の問題も考慮しなくてはならない。2013年に入ってから1月にはアルジェリアで日本人の人質拘束事件や7月にはケニアで日本人が強盗に襲われて射殺されるという事件が起きた。このような報道を目にするたびに日本人にとってアフリカはまだ「遠い暗黒大陸」のイメージがつきまとってしまう。一方で同じ東アジアにある中国がアフリカ最大の貿易相手国であることから、日本にとってもアフリカはいつまでも「遠い存在」ではいられない。

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。