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中南米編(2)国際キャリア・テレフォニカの中南米戦略

2010.07.08

Updated by Michi Kaifu on July 8, 2010, 15:30 pm JST

前回紹介したアメリカ・モビルは、携帯に集中したベンチャーであり、北米とのつながりが強い。これに対し、もう一方の中南米の雄であるテレフォニカは、欧州を本拠に世界に広がる国際キャリアであり、携帯・固定・国際回線などを総合的に展開する。両社は、いろいろな面で対照的である。

Telefónica
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1. テレフォニカの運営規模

スペインのテレフォニカは、中南米12ヶ国で携帯電話サービス事業を展開しており、加入者数は1億2200万(2008年)を数える。展開国全体におけるシェア(12ヶ国の同社持株加重済み加入者数をこれらの国の携帯加入者全体数で割ったシェア)は29%(2008年末)となっている。

201007081530-2.jpg前回紹介したアメリカ・モビルと対照的に、「南部中南米」に強い傾向があり、ブラジル・チリ・ベネズエラ・ペルーでトップシェアを持つ。加入者数ではポルトガル・テレコムと合弁で運営するブラジルが圧倒的に大きい。(ただし、ウルグアイの数字は詳細不明のためグラフに含めていない。)

また、投資効率のよい携帯電話事業だけに集中しているアメリカモビルと異なり、固定電話やブロードバンドも中南米で展開していることも特徴である。

テレフォニカ・グループは、本国スペインのテレフォニカ・エスパーニャ、中南米のテレフォニカ・ラティノアメリカ、スペイン以外欧州のテレフォニカO2(オーツー)の3つの部門に分かれている。中南米での携帯電話事業は、テレフォニカ・ラティノアメリカの一部である。この部門では、携帯以外では固定電話200万、ネットアクセス135万、有料テレビ12万のユーザーを持つ。

テレフォニカの携帯サービスは、本国の「Movistar」ブランドを中南米でも使用している国が多い。

201007081530-3.jpg出典:Telefonicaウェブサイト、ITUのデータをもとにENOTECH作成
中米:グアテマラ、エルサルバドル、ニカラグア、パナマ

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2. テレフォニカの国際化軌跡

テレフォニカは、スペインの国営電話会社として1924年に創業された老舗キャリアである。国営会社として、時の政治の動向と深く結びついた発展をしてきている。このことも、移民の子がゼロから立ち上げたベンチャーであるアメリカ・モビルと対照的である。

テレフォニカの国際化の歴史は1980年代から始まる。当時、スペインは欧州平均と比べ、積滞(ユーザーが電話を申し込んでから設置されるまでに長く待たされる状態)がひどく、一方国内では、社会主義政権の要請で必要以上の従業員を抱え込まされていた。こんな中、政府に送り込まれたCEOが「国際化戦略」を打ち出し、米国や欧州のキャリアとの各種の提携を展開した。

カルロス・スリムがメキシコの民営化でテルメックスのオーナーとなったのと同じ1990年に、アルゼンチンとチリでも電話会社の民営化が実施され、テレフォニカが株を取得して、中南米進出が始動した。国際化戦略としては、旧宗主国として、同一言語圏である中南米に進出することは自然な成り行きである。

1998年に、世界的な通信自由化に合わせて(世界編第三回参照)テレフォニカも民営化され、スペイン国内で競争が導入された。これに合わせ、同社の国際化と多角化も加速した。同年、ブラジルの長距離電話会社テレブラスの株を取得してブラジルに参入。その後、ポルトガル・テレコムと共に国内の複数の携帯電話キャリアを統合し、2006年に「Vivo」ブランドに統一した。2000年、インターネット・バブルの最高潮の時期に、米国の検索エンジン、ライコスを買収したが、この年メキシコではモトローラの保有していた同国第二位の携帯電話サービスを買収した。2005年には、欧州では英国を本拠とする携帯キャリアO2を買収して、スペイン語圏以外への本格進出を果たすと同時に、米国のベルサウス が保有していた中南米の持分の多くを買収している。

アルゼンチン・チリ・ペルーなどでは、すでに傘下にはいっていた旧国営キャリアの携帯電話サービスを「Movistar」ブランドで統一。このあたりは、テルメックスの携帯部門として出発し、メキシコで圧倒的トップシェアを持つアメリカ・モビルと同じパターンである。

こうした経緯を経て、テレフォニカ・グループの携帯電話事業は、世界全体で加入者1億9500万人・売り上げ567億ユーロまで成長した。うち、中南米は加入者の63%、売上の40%を占めている(以上、いずれも2008年)。これに加えて欧州や中国(チャイナ・ユニコムの株8%を保有)を含め、スペイン以外の売上が全体の65%(2009年)を占めており、テレフォニカは世界で最も「国際化」の進んだキャリアの一つとなっている。

▼テレフォニカグループの事業展開。濃い青色が自社グループ企業を展開している国、薄い青色は現地キャリアに出資している国。(地図出典:Wikipedia)
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(cc) Image by Scott Bywater

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3. テレフォニカの戦略展望

テレフォニカは、今後の戦略として、さらなるオペレーションの効率化を進めると表明している。中南米では、過去に多くのキャリアを買収した経緯から、採用方式がGSM系とCDMA系とが混じっているおり、徐々にGSMへの統一を進めて3Gの展開を促進していくことになる。

買収戦略では、チリなどですでに傘下にはいっているキャリアの持分を増やす動きが中心となっており、ブラジルではポルトガル・テレコムの持分を狙っていると言われる。既存キャリアの3G移行やカバレッジ投資も含め、引き続き中南米に積極的に投資している。

同社は携帯だけでなく、固定ブロードバンドや有料テレビも運営しており、また旧国営キャリアとして国際海底ケーブルも保有している。これらの総合的な資産を活かして、中南米向けのトラフィックを多く持つ北米(企業ユーザーおよびキャリア)への卸売も行っており、こうした動きの一環として、2009年12月には、米国の国際VoIPサービス企業Jajahを買収している。中南米のネット・トラフィックの増大により、北米と中南米を結ぶ国際回線の需要が急増する中、携帯だけでなく、ブロードバンドや企業向け卸売などを含めた、総合戦略で一層の成長を目指している。

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海部美知(かいふ・みち)

ENOTECH Consulting代表。NTT米国法人、および米国通信事業者にて事業開発担当の後、経営コンサルタントとして独立。著書に『パラダイス鎖国』がある。現在、シリコン・バレー在住。
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