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台湾で始まったLTEサービス - 台湾之星は旗艦店を設けて新規参入を果たす

2014.09.19

Updated by Kazuteru Tamura on September 19, 2014, 11:00 am UTC

台湾では2014年5月下旬以降に移動体通信事業者各社が相次いでLTEサービスを開始した。台湾最大の移動体通信事業者である中華電信(Chunghwa Telecom)が2014年5月29日、遠傳電信(FarEasTone Telecommunications)が2014年6月3日、台湾大哥大(Taiwan Mobile)が2014年6月4日よりLTEサービスを提供している。

台湾では中華電信、遠傳電信、台湾大哥大のほかに亞太電信(Asia Pacific Telecom Group)、そして新規参入となる台湾之星電信(Taiwan Star Telecom)や通称Foxconnで知られる鴻海科技集団(Hon Hai Technology Group)の國碁電子(Ambit Microsystems)もLTE用の周波数を保有している。6社がLTE用の周波数を保有する中で、台湾の3大移動体通信事業者に続いて4番目にLTEサービスを開始することになったのは台湾之星電信である。

台湾之星電信はブランド名を台湾之星(T STAR)とし、トライアルを経て2014年8月25日にLTEサービスを正式に開始した。今回は新規参入を果たした台湾之星電信にフォーカスを当てることにする。以後、本記事では台湾之星電信を台湾之星と呼称する。

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新規参入を果たした台湾之星

台湾之星は主要株主の一つである頂新国際集団(Ting Hsin International Group)が主導する企業で、周波数オークションを経てLTE用として900MHz帯(Band 8)に該当する周波数を獲得したものの、3G用の周波数は保有していない。VoLTEに対応した端末は決して多くなく、またLTEサービスの開始当初からVoLTEも提供するとは考えにくく、音声通話を提供するのであれば基本的に3Gネットワークが必要となる。そこで、台湾之星はLTEのみでブロードバンド専用として提供するか、それとも既存の移動体通信事業者のネットワークを何らかの形で利用して音声通話も提供するか、そのどちらかが選択肢として考えられた。

最終的に台湾之星は既存の移動体通信事業者である威寶電信(VIBO Telecom)を完全子会社化することを選んだ。威寶電信はLTE用の周波数オークションに参加しておらず、台湾之星による買収をシナリオとして描いていた可能性も指摘されている。威寶電信を傘下とした台湾之星は威寶電信が提供する2.1GHz帯(Band I)のW-CDMA方式を3Gネットワークとして利用する。こうして、周波数オークションにてLTE用の周波数を獲得、威寶電信の買収を経て、台湾之星として新規参入を果たしたのである。

台湾之星のLTEネットワークはPLMN番号が466-89となっており、威寶電信と同じである。試験運用時は466-90で運用していたが、威寶電信の3Gネットワークも利用することを考慮し、466-89に統一して運用することに決めたものと考えられる。

▼台湾之星のNano SIMカード。コーポレートカラーと同じカラーリングである。
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旗艦店を設置して大々的にアピール

台湾之星は世界的にも有名な台北101の地下1階に旗艦店を構える。台北101に入居するには相当な費用が掛かかると予想できるが、台北101の主要株主の一つが頂新国際集団であるため、多少はリーズナブルに入居できるのかもしれない。

そんなことはさておき、公式に旗艦店と指定する店舗を設けるのは台湾の移動体通信事業者としては珍しく、広告などの展開もほかの移動体通信事業者より積極的だ。中古携帯電話の販売店には台湾之星の広告を貼ったり、台湾之星のLTEデモ用としてモバイル無線LANルータを配布したり、大型ビジョンにコマーシャルを流したりと、台湾之星ブランドを大々的に宣伝している。新規参入の移動体通信事業者ということで知名度は他社よりも劣るが、このように大々的なプロモーションを展開することで、知名度の向上やブランディングを狙う。

旗艦店以外の販売店は新設するのではなく、基本的に威寶電信の販売店を台湾之星の販売店に変更している。ただ、台湾之星として開始したばかりということもあり、取り扱い内容は台湾之星であるものの看板は威寶電信のままという状況も見られた。

▼台北101に入居する旗艦店。台北101をモチーフとしたアクセサリなども販売する。
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▼旗艦店に展示されているFIH Mobile製のInFocus M510。一部のスマートフォンには台湾之星の壁紙を入れて展示していた。
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▼威寶電信の看板もまだ残っている。威寶電信の看板が見られる日はもう長くないかもしれない。
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▼台北西駅の大型ビジョンに流れる台湾之星のコマーシャル。
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周波数の利用制限で厳しい現状

台湾では台湾之星と亞太電信以外はLTE用の周波数としては2バンドを獲得しており、帯域幅も20MHz幅以上を保有している。ところが、台湾之星と亞太電信は1バンドで10MHz幅のみである。

台湾之星は保有する帯域幅が少ない上に、屋内の一部を除いて利用可能な帯域幅が制限されており、一部を除いて5MHz幅でLTEサービスを提供している。900MHz帯の一部は亞太電信が保有しており、現在もCDMA2000方式で利用しているのだ。亞太電信のライセンスが期限を迎えるか亞太電信が自主的に手放すまで、台湾之星は基本的に5MHz幅でLTEサービスを提供しなければならない(一部の亞太電信が該当周波数を使用していないエリアでは、屋内に限り10MHz幅でのLTEサービス提供も可能)。しかも、亞太電信のライセンスの期限は2018年12月末とまだまだ先である。

ただ、このことは周波数オークションの段階で把握していないはずがない。LTE用の周波数を獲得した6社の中で、台湾之星は周波数獲得に費やした額が最も少なく、この周波数のみ獲得できたということからも台湾之星の懐事情を察することができる。なお、旗艦店では10MHz幅の利用が可能な状況であるようで、屋内基地局を設置して10MHz幅でLTEサービスを提供している。帯域的には大きなビハインドを負うが、利用者数が少ないことが不幸中の幸いと言えるかもしれない。

▼Samsung GALAXY Note3を使用して台湾之星のLTEネットワークの通信速度を測定した。
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強みだった「LTEの使えるiPhone」が新機種登場で横並びに

台湾之星は900MHz帯でLTEサービスを提供するため、Apple製のiPhone 5sやiPhone 5cで使えることも武器としている。台湾之星のLTEサービス開始時点では、iPhone 5sとiPhone 5cでLTEサービスを利用できる台湾の移動体通信事業者は中華電信と台湾之星のみであった。

台湾之星によるとAppleはiPhoneでLTEサービスを利用可能とするために移動体通信事業者のネットワークを試験しているとのことで、台湾之星はその厳しい試験に合格してAppleから認可されたとわざわざプレスリリースを出したほどである。台湾ではiPhoneのシェアは低くなく、台湾之星が他社とLTEサービスを比較する際はiPhoneで使えることを強みとアピールしていた。

ところが、新たに発表されたiPhone 6とiPhone 6 Plusは遠傳電信や台湾大哥大がメインとして使用する700MHz帯(Band 28)のLTEにも対応した。また、遠傳電信と台湾大哥大は揃って2014年8月29日よりLTEサービスで1.8GHz帯も利用可能としている。ネットワーク面を考えると、台湾でiPhone 6やiPhone 6 Plusを使うとなると、台湾之星は一転して劣勢となる。中華電信、遠傳電信、台湾大哥大、そして台湾之星はiPhone 6とiPhone 6 Plusを正規に取り扱うことが決まっており、台湾之星は厳しい状況に直面することは必至と考えられる。

▼旗艦店に展示されているiPhone 5s。ステータスバーには台湾之星 4Gと表示されている。
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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。