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メッセンジャーアプリ「Viber」:固定・携帯電話と通話できる「Viber Out」の前途

2013.12.19

Updated by Hitoshi Sato on December 19, 2013, 16:06 pm UTC

以前のレポートではフィンランドの携帯電話メーカーNokiaとの提携について執筆したメッセンジャーアプリ「Viber」が2013年12月、固定電話や携帯電話の番号に安価な料金で電話をかける「Viber Out」の提供を開始した。

ライバルの「Skype」は以前から固定電話や携帯電話の番号に電話をかける「Skype Out」を提供しており、1つの収益の柱にしていた。「Viber」のビジネスモデルそれに続く形となる。「LINE」が大人気の日本ではあまり馴染みがないメッセンジャーアプリであるが、「Viber」は全世界で既に2億人のユーザが利用していることからユーザ基盤は既に出来ている。

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(出典:Viber)

「Viber Out」は1分1.9セント(約2円)から利用できる。メキシコまで「Skype Out」なら3分1.15ドルだが「Viber Out」なら29.7セントと安価をアピールしている。

スマートフォンが登場してから多くのメッセンジャーアプリが登場した。「LINE」や「Viber」、「WhatsApp」、「WeChat」、「Kakao」などが代表的である。

一方で、スマートフォンが登場する以前からPCで提供されていたSkypeなどに代表される一般的に「VoIP(Voice over Internet Protocol)」と言われるサービスの多くは固定電話や携帯電話の番号に安価な料金で電話をかけることができる接続料によるビジネスモデルを構築していた。「Skype」のようにPCで利用できるアプリの多くは先進国を中心に存在していた。市場での競争が激しくカナダの「Link2VoIP」のようにサービス提供を中止し倒産してしまった会社もある。

いわゆる「VoIP」プロバイダーの儲けは非常に少ない。「VoIP」プロバイダーの2012年に年間1人あたりの平均利用料金は7.13ドル(約700円)である。1年間で700円、つまり1か月にすると60円弱しか利用されていない。彼らは固定電話にも電話がかけられるということから法人市場にも進出している。法人市場ではある程度の通話料収入があるはずだ。しかし多くの一般消費者はVoIPで接続料が必要な固定電話や携帯電話への通話はほとんど行っていないのだろう。このような状況では設備を維持する方が費用がかかってしまい、「Link2VoIP」のように事業から撤退せざるを得ないプロバイダーが登場するのも仕方がない。

このように「Viber」が進出したVoIP市場は決して大きな収益が期待できる市場ではない。特に「Viber」には2億のユーザ基盤がいて、彼らはアプリ同士で無料通話が可能である。さらに決済(支払い)も海外では日本と違ってユーザにとってハードルが高い。

「Skype」が登場した時、VoIPはPC同士での利用が主流だった。PCに「Skype」のソフトをインストールしてPC画面の前で話しをしていた。今でももちろん存在している。その後、世界中でスマートフォンが急速に普及したことによって、「Viber」や「WhatsApp」、「LINE」に代表される多くのメッセンジャーアプリが登場してきた。

現在、多くのメッセンジャーアプリは無料でサービスを提供しており、ゲームやスタンプの販売、広告などを収入源としている。「Viber」は今回、「Viber Out」という従来のVoIP型の接続料ビジネスモデルを収益の1つとして打ち出してきた。他のメッセンジャーアプリも「Viber Out」の行方に注目しているだろう。

【参照情報】
Viber Launches 'Viber Out' Worldwide, Allowing More Than 200 Million Users to Make Low-Cost Calls to Any Phone Number
Infonetics Raises VoLTE Forecast

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。