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東南アジア編(4)ラオスの通信事情

2013.12.26

Updated by Hitoshi Sato on December 26, 2013, 17:00 pm UTC

日本人にとってラオスは馴染みがない国かもしれない。在留邦人も637人(外務省 2013年10月)と他の東南アジア諸国と比較すると少ない。ラオスは東南アジアの国では唯一海に面していない内陸国である。今回は携帯電話を中心したラオスの通信状況を見ていきたい。

まず簡単にラオスの概要を見ておこう。
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(出典:外務省、CIAファクトブック、ラオス統計局)

▼ラオス(ビエンチャン)の労働者の平均月額賃金(単位ドル、従業員一人あたり)
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(出典:JETRO)

▼ラオスの人口ピラミッド。明らかに若い人が多いことが見て取れる。
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(出典:CIAファクトブック)

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ラオスの携帯電話事情

人口約640万のラオスで携帯電話の加入者数は約670万で人口普及率は104%程度だが、全員が携帯電話を保有している訳ではなく、プリペイドのSIMカードが氾濫しているため、1人で複数枚のSIMカードを保有していることから、携帯電話普及率が高くなっている。ほとんどがプリペイドでの利用で、利用したいときにチャージ(課金)して利用することが一般的である。また3Gは導入されているが、まだ加入者数は32万程度で、携帯電話全体に占める割合は4.8%と低い。固定電話は15万程度で世帯普及率は約14%程度で、電話はほとんどが携帯電話である。

携帯電話の加入の大半が2Gで、その利用も電話(音声通話)とSMS(テキスト)である。最近では中古端末(中国やタイから多くの中古端末が流入している)や新品のスマーフォンも流通してきているが、3G網で利用している人はまだ少ない。2013年1月からLTCが首都ビエンチャンのみで4G(LTE)も提供しているが加入者は3000弱程度。

また固定電話の15万(世帯普及率14%)、ブロードバンド11万(世帯普及率10%)と比すると、携帯電話はその普及のスピードが伺える。都会やオフィス以外で固定電話が今後急速に普及することは考えにくい。今後も携帯電話がラオスのコミュニケーションの中心になるであろう。そして通信事業者もユーザー獲得に躍起になっており、自動車や自転車など様々な景品(商品)を用意しており、それらを目当てにSIMカードを購入するユーザーも増えている。また通信事業者ではVAS(Vale Added Service)も提供しているが、着メロや待受け画像といったフィーチャーフォンでも利用できる非常に安価なものばかりである。

最近では多くの若者がFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアが人気ある。また「punlao.com」といったローカルのソーシャルメディアも登場している。中古や新品のスマートフォン端末でこれらのサービスにアクセスする若者はさらに増加してくることだろう。

▼ラオスでの携帯電話、ブロードバンド、固定電話
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(公開情報を元に筆者作成)

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▼ラオスの携帯電話加入者の推移
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(公開情報を元に筆者作成)

▼ラオスの主要携帯電話事業者
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(公開情報を元に筆者作成)

▼マーケットシェアの推移
Unitelが圧倒的なシェアで1位でETLとLTCが接戦を繰り広げている。
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(各種公開情報を元に作成)

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3Gサービスは300Mで5,000キープ(約50円)程度から利用可能である。
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Unitelが提供するフィーチャーフォン「Sumo U611」は119,000キープ(約1,190円)で購入できる。
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ラオスの通信事業者の概要

(1)Unitel
2008年2月にベトナムの軍事系企業の通信事業者Viettelがベトナム政府から8,377万ドルの投資を受けて国営事業者Lao Asia Telecommunications State Enterprise (LAT)
とジョイントベンチャーStar Telecom Company (STC)を設立した。2009年10月からUnitelというブランドでサービス提供している。資本のうち51%が国営Lao Asia Telecommunications State Enterprise (LAT)で、49%がベトナムのVittel。ADSLなどブロードバンドサービスも提供している。

(2)LTC
1994年にタイでビジネスマンをしていたタクシン・チナワット元首相(Thaksin Shinawatra)がラオス政府と交渉してLao Shinawatra Telecom (LST)を設立した。その後1996年にラオス政府は国営固定電話会社と統合してLao Telecommunications Company (LTC)を設立し、2001年まで独占事業として運営されてきた。資本のうち51%がラオス政府で、49%がShenington Investments。2013年1月からビエンチャンのみで4G(LTE)も提供しているが加入者は3000弱程度。

(3)ETL
2001年ビエンチャンで設立された国営企業である。現在でも100%ラオス政府が保有する企業。携帯電話のほかに固定電話やADSLなどブロードバンドサービスも提供している。

(4)Beeline Lao
2002年1月にMillicom International Cellular (MIC)が20年間の免許を付与されて2003年4月にMillicom Laoが設立された。2008年9月、ロシアの通信事業者VimpelcomがMillicom Laoの株式78%を取得してBeeline Laoになる。資本のうち78%はVimpelcomで、22%がラオス政府。

【参考動画】
ラオスUnitelの町でのキャンペーン

UnitelのテレビCM

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ラオスでIT支援を行う日本のNGO

ここからはラオスの通信事情から離れて、ラオスで活躍する日本のNGO「アジアの障害者活動を支援する会(ADDP)」の取組みを紹介したい。

ADDPは1992年に設立した国際NGOで、障害者自身の自立と社会参加」を促進するために、ラオスの障害者へのクッキー作り支援の他にスポーツ支援や就労支援を行っている(余談だが、ADDPが指導して現地で作ったクッキーは、2013年9月に東京ビッグサイトで「旅博」で購入したがとても美味しかった)。

同時にADDPでは視覚障害者IT支援も2006年から2009年まで行っていた。3名のIT指導者を育成し、彼らが視覚障害者に音声ソフトを使ってPC操作等を指導するという障害当事者同士のサポートという支援プロジェクト。10名の視覚障害者を指導し、現在彼らは盲学校の教師になったり、若手視覚障害者リーダーとして活躍している。一方で、音声ソフト等のコストは大変高く、またラオス語のものはないので英語、タイ語等を使用している。

ADDPのIT支援活動は現在、IT印刷事業に発展し、肢体不自由、聴覚障害者等がより経済的自立を促すようなプロジェクトに進化している。IT印刷事業とはITを駆使し障害者でも起業可能な簡易印刷事業やWeb事業等、障害者の就労支援を行っている。ラオスでは国から一切、障害者への財政的支援がなく、さらにラオスでは視覚障害者が大きく情報社会から疎外されているため、このような支援はラオスの障害者にとって非常に重要である。多くの障害者が身に付けた技術を使い、経済的に自立していくことを希望している。

ADDPでは「ラオス障害当事者がロールモデルとなり後進を自ら育成していく」という観点で事業を進めている。小さなIT印刷等の授産所を設立し、他の競合類似ワークショップとデザイン力、サービス力で付加価値をつけようと今、就労支援事業が立ち上がったばかりである。

情報通信技術の発展は開発途上国の人々の生活を大きく変えるツールとなっており、特にインターネットの普及は人々に大きなインパクトを与えている。彼らの生活は飛躍的に進歩し、改善される機会を与えられている一方、障害者は情報社会に取り残されがちである。情報社会に取り残されがちな障害者、特に視覚障害者への支援は今後も重要になってくるであろう。ラオスがいつの日がITを武器に経済発展することが期待される。その時の担い手は障害者であるかもしれない。

▼ADDPによるラオスでの障害者IT支援
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(参照)ADDP

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。