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[Deloitte Mobile Survey 2012 #2]デバイス普及状況と機種 〜新興国スマートデバイス市場の主役は誰か

2012.10.02

Updated by WirelessWire News編集部 on October 2, 2012, 18:00 pm JST

デロイトが独自に行った、モバイルコミュニケーションについての5大陸15ヶ国に渡るオンライン調査「2012年グローバルモバイル消費者調査」の結果について、特に新興国と日本について焦点をあてて報告するこの連載、第2回目になる今回はデバイス面に関係する部分にて得られた調査結果を中心に報告する。

本調査は15カ国26000人を対象とした調査であるが、本報告では成長著しい新興国の中でも アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコの結果を中心に記載している。
なお、本調査はオンライン調査であることもあり、同新興国の結果については比較的富裕層かつアーリーアダプター中心の回答であることを留意したい。

1.前提として〜対象新興国のモバイルキャリアの市場特性(概観)

日本との比較を中心に新興国の調査結果をみていくこととするが、各国の通信キャリア市場は日本と異なる点が多く単純比較では理解しづらい点も多々あるため、以下の点は前提としながら以降調査結果を検証していきたい。

・各国とも固定回線の普及よりもモバイル回線がより普及している市場
新興国市場では、固定回線の成熟スピードよりもモバイル回線の普及のほうが軒並み高い、それは各国とも国土面積に比して人口が偏在しており、固定回線にかかる設備投資については投資の効率性が悪い点が原因といえる。また新興国では都市部への人口集中・過密化傾向等もあり都市部への無線回線設備の投資がモバイル市場の成長との連動性が高い点も同様に理由として挙げられる。よって、これら新興国ではモバイル回線が個人に浸透するスピードが固定回線よりも圧倒的に早くなっていると考えられる。

・プリペイド中心且つデバイスとキャリアに対する顧客の選択動機が非同期な市場
各国とも日本のようなポストペイドによる後払い方式とは異なり、プリペイドによるSIMの購入と利用必要分を随時チャージする前払い方式である点を考慮しておきたい。日本のように回線・端末取得時に契約手続きが必要ということはなく、市場で好きな端末を購入し、自己の利用ニーズにあったプランのSIMを購入して利用する。現在は各キャリアのショップにて最初のプラン通信料込みで端末を販売するケースも見られているようであるが、それは最初の購入時のみであり、以降は顧客にて自由にSIMを交換してキャリアを乗り換えていく。また、日本のように2年縛りのような制約もないため、経済的負担という点はさておき、顧客にとっては、端末やキャリアはスイッチしやすい環境にあると言える。

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2.普及率 〜日本よりも浸透しているスマートデバイス

前述したとおり新興国の市場的環境面からモバイルデバイスが比較的流動しやすい環境下であることも踏まえて、改めて各国のデバイスの普及度合いを考察してみたい。

・新興国のスマートフォンの浸透率が日本よりも軒並み高い
回答者が都市部や比較的富裕層が多くなっている点に留意が必要ではあるが、新興国ではスマートフォンへの移行がかなり進んでおり、日本のスマートフォン普及率を超える結果となっている。特に南アフリカでの保有率の高さが注目される。

・タブレットについても浸透しはじめている
またタブレットについてもかなり新興国では利用されはじめている点に注目されたい。
ここではブラジルでの保有が高く出ている点が注目となる。

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3.メーカー 〜まだまだ存在感のあるノキア

では一体各国でどのような端末が利用されているのかについて言及したい。
現時点保有している端末のうち、最もよく利用する端末のメーカーについて調査した結果が以下の表である。

・携帯電話についてはノキア・ブラックベリー・サムスンが隆盛を誇っている
フィーチャーフォンも含めた携帯電話全体について、日本においては国内メーカーの端末が主力であり、外資メーカーが少ない点は周知の点ではあるがiPhoneの登場によりアップルのシェアが伸びてきている点は注目である。しかし新興国については、逆にアップルのシェアはそれほどではなく、ノキア・ブラックベリーがシェアの多くを占める結果となった。

特に南アメリカにおいてはブラックベリーのシェアが高く、次いでノキアが割合としては多くになっている。またロシアをはじめ他の新興国においてはノキアおよびサムスンが主要メーカーであり、逆にブラックベリーの保有割合は少ないという結果になった。

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・新興国にとってアップルは未だ高値の花
アップルについては、どの国についても10%以下という割合にとどまった。この点については、どの国においても日本と同様もしくはより高い価格である6万円〜9万円以上の価格で販売されており、他のノキア、サムスンが1万円前後のスマートフォンを展開している点から鑑みると、同機はかなりハイエンドに位置付けられる事が主な要因と思われる。

参考までに各メーカーの主なスマートフォンが各国でどのレンジで販売されているかについて以下に整理した。またその価格帯に対して各国の平均月収の約20%がどのレンジになるかについて整理してみると、各国でノキア、サムスンが廉価版スマートフォンとして展開しているデバイスの価格帯が日本で販売されているスマートフォンの端末相当価格と近しいレンジにある点がわかる。その点からみても新興国でアップルがシェアを伸ばしていく時期はまだ先と推察される。

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4.選択基準 〜デザインと信頼性、物理キーボードの動向に注目

それでは価格以外の要素については、新興国でどのような基準でデバイスを選んでいるかを検証してみたい。今回の調査結果では以下の点が特徴的であると考察される。

・デザイン性を特に重視する傾向が高い
新興国でもデザインならびにブランド面を意識する傾向がある点が特徴として見受けられた。この点はモバイルデバイス特有の「身につける」ものとしてのファッション的要素が新興国でも重視されている可能性がある。

・新興国では信頼性を注視する声も
信頼性という要素は、新興国で特に特徴として見受けられた点である。この点は端末市場における海賊版流通等の問題も含めて考察する必要があると考えられるが、現在流通している端末の安定性や性能面に関する不安や不満がある事の裏返し的な要素も否定できないため、今後より掘り下げて検証したい。

・物理キーボードも求める声は特異的
新興国ではスマートフォンにタッチスクリーンを希望する声があるのと同時に物理キーボードも求める声がある点については注目したい。この点は現行流通しているノキア・ブラックベリー端末が物理キーボードを有している点もあっての反応と推察されるが、ノキア、サムスンの最新機種は軒並みタッチスクリーンのみの端末が展開されはじめている。

日本国内でも従来のフィーチャーフォンにあったボタンがスマートフォンになっていくに従い、物理キーボードは廃止されていく流れにあることから、段階的にこの声がなくなるか、もしくは再び物理キーボードが復活する流れになるか、今後の各メーカーの端末デザイン面の動向と市場の反応に注目したい。

・アプリケーション数を気にする点はブラックベリー・ノキア端末が主流な点が起因か?
アプリケーションについては、ブラックベリー・ノキアのデバイスが現時点の主な選択肢の対象デバイスであることに起因しているのではないかと思われる。これや機種は各端末によってプリインストールされているアプリが異なり、且つDL機能がないものやDLできるアプリ自体が少ない機種等も存在するため、購入時に利用できるアプリケーションは重要な判断基準になっていると想定される。しかしながら、アンドロイド端末であるサムスンやiPhoneではマーケットに豊富なアプリケーションが無償に存在するため、今後デバイスのシェアにどう影響を与えていくかは注目するべき点と考察される。

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・LTE対応機に関する期待値は高い?
各国とも3G中心であり、一部の国でLTEが開始されはじめているステータスではあるが、LTEに関する認知度や意識は高いと推察される。本データは多少富裕層且つアーリーアダプターの意見が強く出ているデータではあるが、ここ1年内でLTE対応機がリリースされた場合でのスイッチへの感応度は高いと認識される。

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5.第2回のまとめ 〜廉価版より"さらに安い"スマートフォンの登場が鍵を握る新興国市場

日本と違って2年縛りなどのキャリアとの契約などの制約がないプリペイド型による新興国市場では、アーリーアダプター層がいち早く新機種にスイッチし普及デバイスの新陳代謝を促進した結果、今回のような日本を上回るスマートデバイスの普及率の結果が出たのではないかと考察される。新興国においては、iPhoneは未だ高価格帯となっている点を鑑みると、今後はサムスンのような廉価版をリリースするメーカーの端末が豊富なアプリケーションと併せてLTE対応機などをリリースしていく中で今後スマートデバイスのシェアを伸ばすことが予想される。

しかしながら、そうはいってもまだまだ廉価版とはいえ月収の20%に近い価格帯である点も踏まえ、且つ新興国の所得格差の問題など経済的環境から推測すると、一定の浸透度を境に、従来型のフィーチャーフォンを活用しつづける事を検討する層に対してどう訴求していくかが、スマートデバイスの市場浸透のポイントになると考えらえる。

そのような層に対しては、機能を最低限にしつつ、今回の調査で出たような、「デザイン性」「物理キーボード」など、といったファッション面や外形的な要素に訴える部分が鍵となるのかもしれない。いずれにしても今後の新興国の動向には注目したい。

次回は、オフロードにおいての活用を分析・検証することでより新興国での利用シーンを掘り下げていく。

デロイト「グローバルモバイル消費者調査2012」について

【調査目的】
世界15ヶ国のモバイル利用状況を把握するとともに、今後の利用状況予測に関する情報を提供する。

【調査概要】
●対象国:全15ヶ国
アメリカ、アルゼンチン、イギリス、カナダ、クロアチア、ドイツ、トルコ、日本、フィンランド、ブラジル、フランス、ベルギー、南アフリカ、メキシコ、ロシア
●調査方法:各国公用語によるオンラインアンケート
アルゼンチン、ブラジル、クロアチア、メキシコ、南アフリカ、トルコについては、サンプルが都市部在住の専門職(比較的高所所得者層)に集中する結果となっている。その他の国については全国から回答を得ている。
●調査期間:2012年5〜6月
●分析対象回答者数:25,960名

 
文・水上 晃(デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 TMTインダストリグループ シニアマネージャー)

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