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AT&T、ボーダフォンの買収を当面見送り - それでも可能性は消えず

2014.01.28

Updated by WirelessWire News編集部 on January 28, 2014, 14:27 pm JST

欧州の携帯通信事業者の買収を検討しているとされる米携帯通信市場第2位のAT&Tが現地時間27日、買収ターゲットの有力候補と見られている英ボーダフォン(Vodafone)に冠して、現段階で買収オファーを出すつもりはないとする立場を明らかにした。

これはAT&Tが英国の規制当局に提出した回答から明らかになったもの。AT&Tに対しては、英規制当局から何らかの買収を行う考えがあるかどうかなどを明確にするよう求める要請が出されていたという。この回答を受けて、AT&Tは今後6か月以内にボーダフォンに買収オファーを出すことや、同社株式の30%以上を取得することができなくなった(ただし、ボーダフォン側からの要請があった場合や、他社がボーダフォン買収に乗り出した場合などは、このルールは適応されないという)。

AT&Tが主な市場とする米国の携帯通信市場では、通信事業者間の競争が激化しており、またスマートフォンの普及に伴って市場の成長ペースも鈍化しつつあるとされる。そうしたなかで、AT&Tがオランダやドイツ、英国などの事業者買収を検討していることが昨年から報じられてきていた。

なかでも、ボーダフォンはAT&Tの買収ターゲットの筆頭に挙げられており、昨年11月にはAT&Tがボーダフォンの買収後に保有し続ける資産の洗い出しや、処分する資産の引受先候補の検討など、買収に向けた具体的な準備作業を進めているという話もBloombergで報じられていた。また、他の買収候補としては、スペインのテレフォニカ(Telefonica)やオランダのKPN、英国のEEなどの名前もこれまでに挙がっているという。

いっぽう、AT&Tの買収に関連しては、先週スイスのダボスで行なわれた世界経済フォーラムで、同社のランドール・スティーブンスン(Randall Stephenson)CEOと欧州連合の通信分野責任者であるネリー・クルース(Nelly Kroes)氏が意見を交わしたとする関係者の話も報じられている。この話し合いのなかでは、AT&Tによるボーダフォンやその他の携帯通信事業者の買収の可能性に加えて、米国家安全保障局(National Security Agency:以下、NSA)によるデータ収集・諜報活動の問題なども話し合われたという。

今回の話題に触れたReutersでは、AT&Tが現段階ではボーダフォン買収を見送ったものの、欧州での事業者買収を諦めたわけではないだろうとするアナリストの意見が紹介されている。また、ある金融業界関係者は、AT&Tによるボーダフォン買収について、「まだ準備ができていないだけ」としており、NSAによるスキャンダルも買収の障害になっている、と語っている。

なお、ボーダフォンは昨年、同社が保有するベライゾン・ワイアレス(Verizon Wireless)株式の45%をベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications)に売却することを決めていたが、この取引が来月中にも完了する見通し。取引完了後のボーダフォンの時価総額は約1300億ドルになる可能性があるとBloombergでは記している。またReutersではこの金額を約1150億ドルと推定している。


[Why 4G Is Luring AT&T to Europe - Bloomberg TV]

【参照情報】
AT&T Gives Up Right to Bid for Vodafone Within Six Months - Bloomberg
AT&T rules out Vodafone bid for now - Reuters
AT&T dismisses talk of a Vodafone takeover bid - The Verge

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