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[2014年第11週]SDN/NFVでNECが協業、MSのタブレットが伸びる、スマホから環境保護支援

2014.03.18

Updated by Naohisa Iwamoto on March 18, 2014, 12:00 pm JST

今後のネットワークの作り方に影響を与えそうな技術関連の話題が、NECと富士通研究所から相次いで発表された。NECはSDN/NFVで、富士通研究所はクラウドの分散化で、それぞれ発表をしている。統計データの発表では、タブレット端末の動向に注目。iPad一辺倒のように見られがちなタブレット市場で、Androidは言うまでもなく、Windowsタブレットも一定の存在感を示すようになってきた。

NECは米事業者とSDN/NFVで協業、富士通研はクラウドサービスの分散化

まず新技術に関するニュースから見ていこう。NECは、米国のプリペイド式携帯通信事業者クリケット・コミュニケーションズ(以下クリケット)と、ネットワークをソフトウェアで制御するSDN、ネットワークの機能をソフトウェアで実現(仮想化)するNFVの双方の領域で協業に合意したと発表した。SDN/NFVは、通信装置のコスト低減や調達リードタイム短縮が可能として注目されている。NECはクリケットと、LTEのモバイルコアネットワーク装置(EPC)を仮想化するvEPCの実証実験を行い、有効性を確認した。NECはミャンマーの基幹通信網にvEPCを導入するなど、SDN/NFVへの取り組みで実績があり、クリケットとの実証もこの取り組みの一環(報道発表資料:NEC、米国通信事業者とSDN/NFV領域で協業)。

分散システムの考え方
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また、富士通研究所が、クラウド上の処理やデータをネットワーク上のサーバーに分散してシステムの構築・運用を自動化する分散サービス基盤技術を開発したというニュースもあった。同社によれば、業界で初めてという。M2Mやモバイル端末の普及により、デバイスとクラウドサービスとの間でやり取りするデータ量が急増しており、従来型の集中処理システムでは、リアルタイムなサービスの提供に問題が生じてきていた。富士通研究所では、処理やデータをデータ発生源の近くに自動的に分散するサービス基盤を開発し、分散システムの再配備にかかる時間を数日から数分に短縮した。今後、クラウドシステムに複数のサービスを収容するマルチテナント化や、ネットワークの構成を動的に変更可能なSDNなどのオープンな技術と連携させ、2014年度中の実用化を目指すという(報道発表資料:クラウド環境を広域ネットワーク上で最適化する分散サービス基盤技術を開発)。

タブレットは続伸、Windowsタブレット端末が存在感

市場動向の調査データを見てみよう。IDC Japanは、2013年第4四半期(10月〜12月)と2013年通年の国内タブレット端末の出荷台数の調査結果を発表した。2013年通年では、出荷台数は前年比67.2%増の743万台、メーカー別シェアはアップルが43.8%で首位を守った。2013年第4四半期の出荷台数は、前年同期比21.5%増の223万台で、四半期ベースで初めて200万台の大台を超えた。第4四半期のメーカー別シェアはアップルが38.6%で首位、エイスースが15.4%で2位となった。3位は、個人市場、法人市場ともにWindowsタブレットの出荷台数が増加したマイクロソフト。第4四半期にアップルが伸び悩む中で、マイクロソフトシェアは11.0%と伸びを見せている(関連記事:2013年の国内タブレット市場は前年比7割近い増加、首位はアップル、マイクロソフトが3位に--IDC)。

また、矢野経済研究所は、「スマートフォン・タブレットの世界市場に関する調査結果 2014」を発表している。2013年の世界のスマートフォン出荷台数は10億8821万台で、2014年には13億4188万台へと増加すると予測する。従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)に代わり、世界市場全体でスマートフォンへのシフトが進んでいることから、出荷台数が大幅に増加する傾向にある。矢野経済研究所では、先進国市場では需要が一巡してきたため、今後の市場拡大は新興国が中心となると予測する。一方、2013年の世界のタブレットの出荷台数は2億2090万台で、ディスプレイサイズ別に見ると、7インチクラスが8925万台、8インチクラスが7805万台と、これらだけで75%以上を占めた(関連記事:スマートフォンは新興国市場向けローエンド製品が一層拡大し2018年には半数超え--矢野経済研究所)。

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ドコモは遠隔サポート、KDDIはキュレーションサービスで動き

キャリアの動向から3つのニュースを紹介する。1つはNTTドコモのニュースで、海外の携帯電話事業者や端末メーカーを対象として「遠隔サポートソリューション」を売り込むための合弁会社「モビドアーズ」を設立するというもの。NTTドコモ、RSUPPORT(アールサポート)、OrangeOne(オレンジワン)の3社が出資する。NTTドコモは、ユーザーのスマートフォン画面を確認しながら遠隔で操作をサポートするサービス「スマートフォンあんしん遠隔サポート」を提供している。新会社のモビドアーズは、このソリューションを海外の事業者や端末メーカーに売り込み、海外の遠隔ソリューション市場を開拓することを目指す(関連記事:ドコモ、海外の遠隔サポート市場開拓に向けた新会社「モビドアーズ」設立)。

Gunosy
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残る2つはKDDIのトピック。そのうちの1つが、ニュースや記事を推薦するキュレーションサービス「Gunosy」を提供するGunosyへ資本参加し、業務提携を行ったというもの。Gunosyは、膨大なインターネットの情報の中から、ユーザーの欲しい情報を探して朝夕に提供するニュースサービス。TwitterやFacebookアカウントなどとの連携も可能で、ユーザーが欲しい最新のニュースや記事を得られるようにする新しい情報形態を提案する。KDDIは、同社への資本参加と業務提携で、サービスの普及のためのサポートを行っていく(報道発表資料:情報キュレーションサービス「Gunosy (グノシー)」への資本参加および業務提携について)。

KDDIのもう1つは、陸上自衛隊中部方面隊とKDDIが、災害時の通信確保に向けた広範な相互協力を行う「災害協定」を締結したというものだ。陸上自衛隊中部方面隊の管轄地域である中部、北陸、関西、中国、四国が対象となる。情報の相互提供に加え、KDDIから陸上自衛隊中部方面隊への衛星携帯電話、au携帯電話の貸し出し、陸上自衛隊中部方面隊の車両やヘリコプターによるKDDIの人員や物資の輸送などが行われる。連携のための会議と、協同訓練を年1回以上実施する(関連記事:KDDIと陸上自衛隊中部方面隊、災害時の通信確保で相互に協力)。

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Xperiaで環境貢献、モバイル向け不正サイト急増、iOS向け無償オフィスアプリ

この週のこのほかのトピックをおさらいしておこう。1つはスマートフォンから環境貢献活動するコミュニティを支援できるキャンペーンが始まったこと。ソニーモバイルコミュニケーションズは、経済産業省が実施する二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減を目指す「カーボンオフセット」の普及・促進活動である「どんぐりポイント」キャンペーンに協賛。「Xperia Z1」から専用サイトにアクセスし、どんぐりポイントを自分が応援したい環境貢献活動を行うコミュニティに登録(寄付)できるキャンペーンを開始した。対象はXperia Z1 SO-01F(NTTドコモ)とXperia Z1 SOL23(KDDI)。キャンペーンサイトにアクセスし、アンケートに応えて付与された400ポイントを、好きなコミュニティに寄付できる(報道発表資料:〜Xperia Z1 「どんぐりポイント」 キャンペーン〜Xperia Z1 で、カーボンオフセットを普及・促進するキャンペーンに参加しよう!)。

モバイル向け不正サイトの画面例
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セキュリティのニュース。トレンドマイクロは、モバイル向け不正サイトが過去2年間で約14倍と急増していることを公表した。モバイル向け不正サイトは、2012年1月には5300件、2013年1月でも2万件だったのに対して、2014年1月には7万3000件にも急増した。内容は、フィッシング詐欺、ワンクリック詐欺(架空請求)、出会い系詐欺(サクラサイトなど)などの「オンライン詐欺」。これらの不正サイトへアクセスしてしまう日本のユーザーも増加しており、トレンドマイクロのモバイル向けセキュリティソフトでこれらのサイトへのアクセスを防止した件数は、2013年12月〜2014年2月の3カ月間で、およそ2500万回にも上るという(報道発表資料:モバイル向け不正サイトが 2年間で 14倍に急増、73,000件に)。

スマートフォンをより便利に使いこなせるようになりそう。キングソフトは、iOS向けのオフィスアプリ「KINGSOFT Office for iOS」の提供を開始した。無償でApp Storeからダウンロードして利用できる。これまで先行提供していたプレゼンテーションアプリの「Presentation」を機能強化したほか、表計算の「Spreadsheets」とワープロの「Writer」を追加した。今回のiOS対応で、KINGSOFT Officeはパソコン向け、Android向けに加えて、iPhoneやiPadにも利用範囲を拡大した(関連記事:キングソフト、iOS向けオフィスアプリ「KINGSOFT Office for iOS」を無償提供)。

昨年の第11週のできごと

・新ジャンルでのサービスや製品が登場
・首都圏の地下のエリア化がさらに進展
・通信事業者向けの施策なども発表

[2013年第11週]丸の内のポストでNFC実験、東横線渋谷駅など地下エリア化、ドコモメール延期

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。