予定より早くLTEサービスが始まった台湾 - キャリアブランドの4Gスマートフォンも登場
2014.06.03
Updated by Kazuteru Tamura on June 3, 2014, 15:00 pm JST
2014.06.03
Updated by Kazuteru Tamura on June 3, 2014, 15:00 pm JST
▼台湾初のLTEサービスを開始した中華電信。4G LTEとしてサービスを展開する。
ようやく台湾でLTEサービスが開始した。台湾最大手の移動体通信事業者である中華電信(Chunghwa Telecom)が2014年5月30日より台湾では初となるLTEサービスを提供している。続いて遠傳電信(Far Eastone Telecommunications)も6月3日、台湾大哥大(Taiwan Mobile)も6月4日にLTEサービスを開始。3社ともサービス開始は当初は2014年7月を予定していたが、約1ヶ月も前倒しとなっている。これら台湾の3大移動体通信事業者は早くもLTE対応スマートフォンを投入してLTE時代の競争を繰り広げている。
各移動体通信事業者はこれまでに4G LTEをアピールするマーケティングは展開していたが、2014年第2四半期に入ってからはLTEに対応した端末の投入が活発化している。LTEサービスを提供するにあたり、当然ながらLTEに対応した端末が必要となる。端末戦略はLTEの加入者を呼び寄せるためには重要な要素であり、各社が幸先のよいスタートを切るためにLTEサービスの開始前からラインナップの拡充を図っている。
台湾で最初にLTEを開始した中華電信はLTEの周波数帯が1.8GHz帯(Band 3)と900MHz帯(Band 8)で、これらの周波数帯はすでに市場に出回っている端末でも対応するものが多い。中華電信はそれを強みとして認識しており、対応端末が最多とアピールすることもある。LTE対応スマートフォンのラインナップはLTEサービス開始当初で約30機種を用意しており、2014年第3四半期中には約50機種まで増やす計画と明かしている。中華電信のカタログには4Gスマートフォン専用ページも用意されており、実際にラインナップが充実していることは間違いない。
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中華電信が用意するLTE対応スマートフォンは一部を除いて基本的にグローバルで展開しているスマートフォンをそのまま提供している。ラインアップにはミッドレンジ〜ハイエンドのLTE対応スマートフォンが多いため、価格もグローバルと同じ水準で中価格〜高価格に設定されているものが多い。そんな中、遠傳電信と台湾大哥大は自社ブランドの低価格なLTE対応スマートフォンも相次いで投入して中華電信とは異なった戦略で展開している。
▼中華電信のカタログ。4Gスマートフォンの専用ページが用意されている。LTEサービスの開始前に配布されたカタログであるが、それでもラインナップは充実している。
▼保有するLTE用の帯域幅の広さや、対応する端末が最も多いことをアピールしている。
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台湾では複数の移動体通信事業者が自社ブランドで端末を展開している。移動体通信事業者のブランドが与えられる端末は、スマートフォン、タブレット、フィーチャーフォンなど多岐に渡り、自社のブランドで端末を展開する移動体通信事業者は遠傳電信や台湾大哥大のほかに亞太電信(Asia Pacific Telecom Group)が存在している。
各移動体通信事業者のブランドは馴染みがないかもしれないので主なブランドを紹介しておくと、遠傳電信はFarEastone Smartシリーズ、台湾大哥大はTaiwan Mobile AmazingシリーズとTaiwan Mobile myPadシリーズ、亞太電信はA+ Worldシリーズを展開している。
LTEサービスの開始が迫る遠傳電信と台湾大哥大は、早くも自社ブランドのラインナップにLTE対応スマートフォンを追加したのである。自社ブランドのLTEスマートフォンを一番乗りで投入したのは遠傳電信である。TCL製のFarEastone Smart 405がその第一弾で、2014年4月15日に販売が開始された。価格は契約なしでも6990台湾ドルと低価格に設定されている。
FarEastone Smart 405は、グローバル向けにALCATEL ONETOUCH IDOL 2 MINI Sとして発表されているスマートフォンがベースとなっている。これまでFarEastone Smartシリーズはメーカーブランドを伏せてきたが、FarEastone Smart 405にはALCATEL ONETOUCHロゴも入れられている。名称こそFarEastone Smart 405と移動体通信事業者のブランドであるが、FarEastone SmartとALCATEL ONETOUCHのダブルブランドで展開するという初めての試みも見せている。FarEastone Smart 405の売れ行き次第では今後もダブルブランドのスマートフォンを投入する可能性もある。
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FarEastone Smart 405に続いて、FarEastone Smart 403とFarEastone Smart 503も投入されている。この2機種はFarEastone Smartのブランドのみで展開するLTE対応スマートフォンである。
FarEastone Smart 403は中国を中心にK-Touchブランドを展開する天語(Tianyu)製である。中国移動(China Mobile)向けの天語K-Touch Touch 2をベースとする。天語はこれまでにもFarEastone Smartシリーズでスマートフォンを投入しており、LTE時代に入っても継続して投入することになる。2014年5月1日に販売を開始しており、価格は5990台湾ドルとFarEastone Smart 405よりも更に安く設定されている。
FarEastone Smart 503はFoxconn Technologyグループの企業であるFIH Mobile製である。FIH Mobileも過去にFarEastone Smartシリーズでスマートフォンを投入している。2014年6月1日発売で、価格はFarEastone Smart 403と同じく5990台湾ドルである。遠傳電信は中価格〜高価格のLTE対応スマートフォンも用意するが、FarEastone Smartシリーズのように低価格なLTE対応スマートフォンも充実させることで、幅広い層にLTEサービスへの加入を促進している。
▼FarEastone Smart 405を購入した高雄市内にある遠傳電信の直営店。契約なしでも購入することができる。
▼化粧箱はALCATEL ONETOUCHのデザインではなく、遠傳電信のデザインを採用する。このことからも遠傳電信をメインブランドとして展開していることが分かる。
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▼台湾初となるキャリアブランドの4Gスマートフォン、FarEastone Smart 405。遠傳電信のLTEネットワークでは下り最大150Mbps/上り最大50Mbpsを実現する。
▼スペックや質感からはとても低価格のスマートフォンとは思えない。遠傳電信とALCATEL ONETOUCHのロゴが入る。
▼中華電信は広いエリアを構築できる700MHz帯(Band 28)と、1.8GHz帯で連続した20MHz幅の帯域幅で高速な下り最大150Mbpsでサービスを提供し、エリアと速さの二刀流で攻めることを示した。ただ、サービス開始当初はエリアを優先するために700MHzがメインとなる。ユーザが増加した際に20MHz幅の1.8GHz帯を使えば混雑緩和にも効果的と考えられる。
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遠傳電信から遅れて台湾大哥大も自社ブランドのLTE対応端末を投入する。3機種を同時に発表しており、2機種のスマートフォンに加えて1機種のタブレットも用意している。いずれも中国のZTE製となる。
スマートフォンはTaiwan Mobile Amazing X1とTaiwan Mobile Amazing X2を2014年6月1日に同時発売する。価格は契約なしでTaiwan Mobile Amazing X1が4990台湾ドル、Taiwan Mobile Amazing X2が5990台湾ドルとなる。Taiwan Mobile Amazing X1にいたっては、台湾の移動体通信事業者が自社ブランドで展開するスマートフォンとしては最安となる。
タブレットはTaiwan Mobile Amazing P6を用意しており、約8.0インチのディスプレイを搭載する。タブレットながら音声通話にも対応するが、価格は7990台湾ドルと比較的低価格に設定されている。
Taiwan Mobile Amazingシリーズではこれまで通り価格を抑えたスマートフォンとタブレットを展開するが、その中にLTE対応端末も追加していく。低価格なLTE端末を投入することで、LTE端末を購入するハードルを下げて加入者の増大を狙う。なお、台湾大哥大は自社ブランドではないもののLTE対応のデータ通信専用端末としてモバイルWi-FiルータのZTE MF910も用意しており、バリエーションのあるラインナップを提供している。
▼700MHz帯では15MHz幅の帯域幅を保有し、この周波数帯では最も広い帯域を保有していることになる。700MHz帯は広いエリアをカバーするのに適しており、また帯域幅が広いほど混雑緩和などにも効果的で、台湾大哥大はその2点を強調している。
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台湾は日本や韓国のようなハイエンド中心の市場ではなく、ミッドレンジ未満の低価格なスマートフォンも多い。そのような台湾市場でLTEの加入を促進するために低価格帯のLTE対応スマートフォンを投入して、シェアの拡大を狙う意図があると考えられる。
台湾の移動体通信業界でシェアが首位の中華電信を追う遠傳電信と台湾大哥大は、中華電信にはない自社ブランドの低価格スマートフォンで攻めようとする姿勢が見て取れる。特に遠傳電信は自社ブランドのスマートフォンの販売比率を上げようと取り組んでおり、今後はFarEastone Smartシリーズのスマートフォンが増えることは想像に難くない。台湾大哥大についても自社ブランドのTaiwan Mobile Amazingシリーズを積極的に展開しており、機種数を増やしていく見通しである。
ただ、中華電信のラインナップが現状のままというわけではなく、2014年第3四半期中には50機種まで増やすと明言している。当然ながらその中には低価格帯のLTEスマートフォンも含まれるだろう。また、インドネシアに自社工場を設立する計画もあるとされているだけに、中華電信が自社ブランドの端末を投入する可能性も否定はできない。
このように台湾ではLTE時代を迎えて各社の端末戦略は動きが活発化している。端末戦略だけではなくLTEの導入が絡んだ移動体通信事業者の再編も見られ、台湾の移動体通信業界が激動の時代を迎えていることが示唆される。これから台湾の移動体通信業界が大きな変化を見せることは間違いなく、今後も注視しておきたいところである。
【修正履歴】
(6/4 9:00) 遠傳電信(Far Eastone Telecommunications)と台湾大哥大(Taiwan Mobile)のサービス開始時期につきまして、当初は取材時点での情報にもとづき「予定通り2014年7月にLTEサービスを開始する見通しであり」としておりましたが、記事公開後、6月3日に遠傳電信がLTEサービスを開始、台湾大哥大も6月4日からLTEサービスを開始するとの情報を得たため、両社のサービス開始時期についても「前倒しとなり」と修正いたしました(本文修正済み)。
(6/5 9:30) 台湾大哥大(Taiwan Mobile)のサービス開始日についても確認がとれましたので、再度本文を修正いたしました。
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登録はこちら滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。