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【これは】世界のメイカーズが注目するM5Stack本社に行ってきた!【勝てない】

2019.08.19

Updated by Ryo Shimizu on August 19, 2019, 07:00 am UTC

ブログを書いている役得というのがあればまさにこのことだろうか。

スイッチサイエンス高須さんの紹介で、今世界で最も注目を集めているIoTプロトタイピング端末、M5Stack社の本社を訪問する僥倖に浴した。

とはいえ、IoT界隈に疎い方々には「M5Stack」と聞いてもなんのことだかわからないかもしれない。「M5Stack」は「エムファイブ・スタック」と読み、中国製の、CPUとWi-FiとBluetoothを内蔵した安価なワンチップSoC(System on Chip)である「ESP32(イーエスピーさんじゅうに)」をコアとした5cm×5cmの正方形のマイコンで、タッチスクリーンとハードウェアボタン、Grooveコネクタを搭載し、さらにいろいろなモジュールを積み重ね(スタック)して使うことができるという世界で最もイカしたハードウェアプラットフォームなのである。

会社のエントランスには、歴代のM5Stackシリーズがずらりと並べられている。
最初はレーザーカッターや3Dプリンターを使ったプロトタイプの開発から始まり、2017年に法人化してからは破竹の快進撃を遂げている。たった一人でスタートしてから、わずか2年で従業員50人以上の大所帯となっている。

右がCEOのJimmy。国営の電力会社に勤務するエンジニアだったが、第二子が生まれたことで「一人っ子政策」に対応するために国営企業を退社し起業したというユニークな経歴を持つ。

左の女性はM5Stackと同時期にスタートアップ・アクセラレータで他の企業に参加していたが、そちらをクローズしてM5Stackに合流した。マーケティングの専門家である。

もともとM5Stackは、Jimmyが自分専用のWi-Fi付き電力計を作りたいという気持ちからスタートした。
「メイカーズ(MAKERS)」の定義が「自分の欲しいものを自分で作る」ことだとすれば、M5Stackは紛れもなく本物のメイカーズ企業である。

わずか2年でこれだけのラインナップが登場。最近はさらに小型になったM5Stickシリーズにも力を入れているそうだ。

M5Stickは、スタックできないかわりに、HATと呼ばれるモジュールを接続することでさまざまなセンサーを活用するIoTデバイスを瞬間的に作り上げることができる。

HATには、FLIRのサーマルカメラから、サーボモーターまであり、これだけで思いつくようなたいていの機能が一通り揃う勘定だ。

さらに日本でも発売直後から売り切れ状態が続いているM5StickVは、CPUにRISC-VベースのK210(Kendryte製AIチップ)を搭載し、手軽に高速な推論を実現している。

これほどのものがわずか3000円足らずで入手できる意味は非常に大きい。

今後、小学校や中学校などの初等教育段階でもAIを教育していく必要性が高まっている中で、手軽に入手できるAIエッジデバイスの需要は計り知れない。

なぜこれほど短期間に、少人数で、これほど多種多様な製品群のリリースができるのか。その秘密は、まさしく「メイカーズ」的な発想にあった。

「3日前に思いついたんだ」

と屈託ない顔で語るJimmyによる最新のプロトタイプ。わずか数千円で販売可能なM5Stick用移動プラットフォームである。

M5Stickと同時に購入しても1万円を切るため、RoboCupのようなロボット競技会に新しいカテゴリーが誕生する可能性すらある。

DonkeyCar的な使い方もできるだろう。

アイデアがわずか3日で形を得る秘密の1つ目は、社内に工房があること。

この工房には掘削マシン、3Dプリンタなどなど、メイカーズに必須の設備が全て揃っており、アイデアを思いついたそばからガンガンプロトタイピングできるようになっている。

ここで製造されたプロトタイプを、マーケティングチームや、高須さんのスイッチサイエンスなど親しいビジネスパートナーに見せて、好感触だったものは、すぐに「社内にある工場」に回す。

扉をひとつあけるだけで、そこは小規模なアッセンブリ工場になっている。

実際に訪問した時は大人気のM5Stickの量産に取り掛かっていた。

これは修理を待つ不良品の山。
歩留まりはそれほど高くないが、検品をしっかり行っているため、最終出荷製品の品質はかなり高い。

買う側も基本的にはメイカーズのため、あまり細かいことにはこだわらないか、仮に不良品だったとしてもTwitterやブログなどで教えてくれることが多い。

M5Stack社では常に世界中のユーザーの声をサーベイしており、不具合報告は印刷して貼り出される。

こうして第一ロットで見つかった不具合を全て直し、製造プロセスを洗練させたあとで、本格的な大量注文が入ってきたら、Foxconnなどの大手EMS工場に依頼して大量生産ラインに乗せる。

企画、プロトタイプ、マーケティング、量産試作、テストマーケティング、大量生産のプロセスがほとんど一箇所にまとまっているのでこのスピードで少量多品種の展開が可能になっているのだ。

これには正直舌を巻く他なかった。

深センのエコシステムは、想像以上に先鋭化し、「ものづくり」の考え方では日本より一歩も二歩も先に進んでいるという印象だった。
もはやこうした分野での後追いは不可能に近く、日本のメーカーもメイカーズたちも、全く異なる戦略を構築しないと、IoT競争の中で生き残っていくのは難しいだろう。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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