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イギリス政府、コロナ追跡アプリを捨てる

UK government to dump Covit tracing app

2020.06.23

Updated by Mayumi Tanimoto on June 23, 2020, 10:32 am JST

前回の記事では、イギリスのコロナ追跡アプリである「NHS COVID-19 App」の問題点を指摘しました。

中国や韓国のアプリに比べると実用性が低く効果がないのではないか、というのが最大の問題点でしたが、なんとイギリス政府はこのアプリを捨てて、これまで大反対していたAppleとGoogleが開発しているAPIを使用し、中央集権型を諦めて分散型アプリの導入を突然発表しました。

アプリを開発していたNHS(国立病院機構)のソフトウェア部門のNHSXがGithubでコードまで公開していたのに、それを捨ててしまうというのはすごい決断です。

政治的に致命的な判断になりそうなことであっても、アプリの実用性という点から考えて捨てざるを得なかったのではないでしょうか。

そもそも、イギリス政府がAppleとGoogleの分散型のアプリの導入に反対していた理由というのは、NHSが患者のデータを中央データベースで管理し、その他の疾患や健康管理にも使いたいという意図があったからです。

医療業界や研究者側からすると、データのアクセスを考えた場合にはNHSのアプローチの方がありがたいはずです。公衆衛生の観点から考えても、イギリス政府のやり方は悪くはないわけですが、最大の問題点は技術的に無理だったということです。

このアプリは感染者が他の人と接触した際に、Bluetoothで信号をブロードキャストして握手のような形でスマホ間で接触情報を交換するという仕組みになっていました。しかし、現在のiOSとAndroidではBluetoothで常時通信する設定がデフォルトでオンにはなっていないわけで、アプリ自体がきちんと機能しないという問題点がありました。

おそらく、内部の人々はこの問題を認識してはいたのでしょうが、政府の構想と実現性の間で相当揉めたのではないでしょうか。

これは、実務の世界ではよく目にする状況ではありますが、現在は緊急事態ですので、政府は体面を繕うのをあきらめて実現性の方を取ったということですね。

こういう思い切りのよさに関しては、イギリスの人々は合理的で実に現実的です。

コロナ以前でも、政府のIT プロジェクトが壮大に失敗してシステムをまるごと捨ててしまったということがいくつかありました(その代表例がNHSなので「またか!」という感じでしょう)。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。