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クルマと情報をつなげるV2Xのビッグデータ化

2014.06.19

Updated by Yuko Nonoshita on June 19, 2014, 13:49 pm UTC

5月28日~30日に開催された「ワイヤレスジャパン2014」の期間中、会場内では、モバイルテクノロジーやM2M、モバイルデバイスやO2Oなどをテーマにした各種セミナーが開催された。ここでは、M2Mジャパン 3Daysと題されたコースの中から、新世代M2Mコンソーシアムによる『ワイヤレスM2Mと自動車市場への適用』を紹介する。講師を務めた日立製作所の木下泰三氏は、新世代M2Mコンソーシアム理事という立場から、自動車業界におけるワイヤレス規格の変遷や技術展開、それらの応用事例と今後の可能性について解説を行った。

ワイヤレスM2M(Machine to Machine)は今年のイベントの中でも注目を集めていたキーワードの一つであり、会場内ではさまざまなセンシング技術とワイヤレスネットワークを使い、ヒトとモノ(H2M)やモノとモノをつなぐさまざまなソリューションが紹介されていた。これらの技術はエネルギー、医療、流通、家電などの分野でそれぞれ開発や研究が進んでいるが、自動車市場ではV2X(Vehicle to X)というキーワードで捉えられている。

自動車業界では1980年のハイウェイラジオを利用した道路交通情報の配信からネットワークを活用してきたが、VICSやETCによる道路交通システムが始まり、2011年頃から、カーナビの高速通信対応と大容量化に伴いリアルタイムで道路情報を送信するDSRC(Dedicated Short Range Communication)が登場。さらに、路側センサや光ビーコンによる事故防止情報の提供を狙ったDSSS(Driving Safety Support Systems)に加え、車載ネットワークのCAN(Controller Area Network)、ドライバーや乗客の情報というように扱うデータが増え、ビッグデータ化が進んでいる。

▼V2Xで総称される自動車市場で扱われるネットワークやセンサーの種類は増える一方で、ビッグデータ化が進んでいる
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V2Xは道路情報の提供や安全運転のためだけではなく、防災や工場でも利用され、自動車業界全体の業務効率化にも応用することが目的とされている。自動車が完成した時点でセンサーは使用できることから、出荷前に自動車製造工場でのモノやヒトの位置情報の管理に使おうというものだ。ずらりと同じ顔をした車両が並ぶ中で、タグを使って目的の車両がどこにあるかを把握できるのはもちろん、セキュリティにも使える。こうした機能は、工場からの搬出や納品、そしてオークションでも応用できるという。また、車両の状況も把握でき、日立製作所では世界28カ国に約17万台に発売されている建機について個別にM2Mによるリモート監視を行っている。

▼V2Xの応用範囲は自動車の運転以外の防災や製造管理などにも広がっている
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ミリ波帯の電波を送受信して障害物の認識を行うミリメーターウェーブレーダーセンサは、TVCMでおなじみの衝突防止や障害物検知、駐車サポートといったドライビングアシスト機能で利用されているが、今後はさらに多くのセンシングデータを組み合わせた自動運転システムの開発が見込まれている。車載センサーを通じて自動車の状態をリアルタイムに検知、共有し、速度や温度などを監視。加えて、ドライバーにリストバンド型センサーなどの着用で、居眠りや発作などが起きた場合に、すみやかに自動車を安全に停止させることまでできるようになるという。こうしたBAN(Body Area Network)で収集される生体データはウェアラブルの普及と合わせて浸透しそうだが、そこで、ポイントになるのは複数の周波数帯域やセンサーの組み合わせをどうしていくかだと木下氏は指摘する。

たとえば通信周波数については、広い地域を高速で移動する自動車ではWANが必要だが、安全性のためには干渉の少ないWPANを組み合わせも考慮しなければならない。具体的には、移動中の通信には有料のキャリアサービスを利用し、WPANではZigBeeやWi-Fi、UWBのように透過性の高い通信を使うというように、目的と車内外の環境に合わせて適切な通信規格を選ぶことが重要となる。UWBに関してはドライブレコーダーへの応用をはじめ、測位技術を使った衝突防止も可能になるという。こうしてセンサーが増えていくと、サイズや仕様、省電力性も大事で、基本的にはプラグ&プレイが標準になっていくが、そうしたコントロールも含めたミドルウェアの開発が重要になることも合わせて指摘された。

▼自動車市場をとりまくワイヤレスM2M
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自動車の場合は安全性が重要視されるため、どうしても開発は慎重にならざるをえない。そうした中、欧米では自動車業界を活性化するための起爆剤として自動運転システムの開発に積極的に乗り出しており、5.8GHz帯を使った自動運転システムのトライアルがはじまっているという。特にアメリカでは、公共のWi-Fiを組み合わせた自動車間でのアドホック通信を行って渋滞や事故を防ぐV2Vシステムの実用化を2017年までに目指すと発表している。日本でも、いち早く実装に向けた試験が進めることが期待されている。

また、こうした自動車市場で開発が進められている先進技術は、完全自動運転のロボットカーやロボット単体でも応用が可能である。実は日立製作所では、原子力発電所内や公共プラントの監視ロボットに実装しており、すでに実用化もはじまっているという。そうした先進技術が市場にどのように活かされるのか、業界全体の動きに注目したいところである。

▼自動車市場で開発が進められている技術はロボットの操作などにもすでに応用されている
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【関連URL】
ワイヤレスジャパン2014
新世代M2Mコンソーシアム公開シンポジウム 本記事で紹介した講演も含む新世代M2Mコンソーシアムによる講演資料がダウンロードできる。

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。