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「次世代放送」をキーワードにいよいよ放送と通信は融合するか(Interop Tokyo 2014 カンファレンスより)

2014.06.23

Updated by Rie Asaji on June 23, 2014, 11:00 am JST

日本最大級のネットワーク技術のイベント「Interop Tokyo 2014」が6月9日から開催された。

カンファレンス「成長戦略の柱となる通信政策の本質」では、内閣官房IT総合戦略室が現在パブリックコメントを募集している「世界最先端IT国家創造宣言」の改定(案)を題材に、自民党・情報通信戦略調査会の事務局長も務める、橋本岳衆議院議員と、株式会社 企のクロサカタツヤ氏が、この一年のIT政策の進捗と展望を議論した。

今回の改定は、「世界最先端IT国家創造宣言」が閣議決定された昨年6月より1年が経過し、その間、東京オリンピック招致の決定や総務省による4K・8K等の次世代放送の具体化など、政策に関わる決定事項や具体化が進んだ部分に対応するもの。改定(案)の改定箇所からさまざまな事業機会を見通すことができる。

中でも目次のレベルで新たに追加された用語はカッコ内下線部の「起業家精神の創発とオープンイノベーションの推進」「次世代放送・通信サービスの実現」「東京オリンピック・パラリンピック等の機会を捉えた最先端のIT利活用による「おもてなし」の発信」「国際貢献及び国際競争力の強化に向けた国際展開」であった。

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(カンファレンス資料より抜粋)

「オリンピック」は右肩上がりが困難な日本の構造転換の鍵を握る

今回の改定(案)では、全般に「起業家精神の創発」という言葉が頻出している。その背景として、従来どおりのあり方で社会を維持することへの「危機感」が挙げられた。

高齢化と人口減少トレンドが続く中、政府の予算の使い道は選択と集中を進めざるを得ない。そうした中で、経済社会が継続的にイノベーションを起こすためのテコとしてベンチャービジネスを支援することが、産業活性化の一つの方策だと安倍政権は考えている。

今回の改定(案)でこうした意識が強調されているのも、ベンチャービジネスが誕生しやすいICT分野への期待のあらわれとして、こうした取り組みが今後も進むのだろう。

2020年の東京オリンピックで、ベンチャービジネスを含め、ICT分野が何を実現するか──これが、今後の日本の構造転換するための重要な「装置」となる可能性を、橋本議員は指摘した。

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次世代放送に「・通信」が追加されたことは通信ネットワーク業界に大きな意味をもたらす

また、「次世代放送」の横に「・通信」が追加され、「次世代放送・通信サービスの実現」と改められたことについて、橋本議員は「この一年間に、次世代放送サービスは、従来の放送技術のみならず、通信をも利活用する必要がある、というコンセンサスが内部で取れてきたということ」と説明した。

クロサカ氏も、「・通信」が加わったことの重要性を指摘し、事業環境の側面から見ても、4K・8K放送の実現には通信業界の技術支援が不可欠であると触れた。

その他に改定(案)に追加された点として、以下に関する議論が行われた。
・昨年のG8で合意されたオープンデータへの取組みの具体化
・インフラ老朽化対策や運用コスト低減のためのセンサー埋め込み等を表す「情報化施工」への着目
・電気事業法の改正とエネルギー問題の具体的な施策としてのHEMS
・マイナンバー
・電子政府(マイガバメント)
・自動運転等
・個人情報・プライバシー法制の改正

また、インターネットインフラの中核を担うInteropコミュニティへのメッセージとして、インターネットがもともと備えている「ローコストオペレーション」と「ロバストネス」が、今後難しいチャレンジの続く日本社会には、従来以上に必要なものとなるはずであり、Interopコミュニティもそこに事業機会や社会貢献の機会を見出せるのではないか、との見解が両氏から示された。

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【参考】
内閣官房IT総合戦略室世界最先端IT国家創造宣言 改定(案)に対する意見募集について
Interop Tokyo 2014

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麻地 理恵(あさじ・りえ)

日用品メーカー勤務を経て、2012年株式会社 企(くわだて)入社。情報通信、メディア産業を中心として企業の経営支援、財務支援、事業開発支援を行う。